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区議会活動
吉住健一新宿区長がドイツ・ベルリン市ミッテ区長に送った書簡に関する声明
11月17日、日本共産党新宿区議団と日本共産党新宿地区委員会は「吉住健一新宿区長がドイツ・ベルリン市ミッテ区長に送った書簡に関する声明」を吉住区長に届けました。
吉住健一新宿区長がドイツ・ベルリン市ミッテ区長に送った書簡に関する声明
2020年11月17日
日本共産党新宿地区委員会
日本共産党新宿区議会議員団
吉住健一新宿区長は10月21日、ミッテ区の区有地に設置された「平和の少女像」(ドイツでは「平和像」)に関して、「違和感」を表明する書簡をドイツ・ベルリン市ミッテ区長に送付しました。区民を代表する立場の新宿区長が、友好都市の市民の活動や内政に関することで裁判にも発展している問題について書簡を送ることは、内政干渉や他国の司法に対する介入と取られかねない行為と言わざるを得ません。
【問題の経緯】
今年7月6日、ミッテ区の都市空間文化委員会が1年間の期限で区有地に「平和の少女像」を設置することを許可し、9月25日に「コリア協議会」が設置。9月28日の除幕式には現地の日本人も含め多国籍の方が参加しています。
ところが日本政府は、9月29日、加藤官房長官が像撤去要請の意向を表明し、10月1日、茂木外相がドイツ外相とのテレビ会談で像の撤去を要請しました。ミッテ区長は、10月8日(現地時間7日)、像の設置許可を取り消し14日までの撤去を通告しましたが、10月11日、シュレーダー元ドイツ首相をはじめ少女像撤去指示に抗議する声があがり、10月12日には「コリア協議会」が設置許可取り消しの効力停止を求める仮処分申請を裁判所に行いました。
これを受けて10月13日、ミッテ区長が撤去方針を撤回し司法判断に「妥協案を探る」と表明し、加藤官房長官も10月14日、「ドイツ司法の手続きを見守る」としていましたが、ミッテ区と友好都市である新宿区の吉住区長は10月21日、ミッテ区長に対し像の設置に関して「違和感」を表明する書簡を送ったのです。10月28日の自民党の会合で外務省は、像撤去に向けて日本国内の各自治体と連携していることを明らかにしたと報道されています。しかし、吉住区長が書簡を送った後も、ミッテ区の議会では10月27日、戦時中の性暴力を記憶するために少女像の保存をする決議案が提案され、賛成27反対9で可決されています。
【日本政府の対応】
菅政権が、「平和の少女像」の撤去に固執するその根底には、日本軍慰安婦に対する歪んだ歴史認識があるからに他なりません。外務省のホームページには、「これまでに日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」として慰安婦強制連行を事実上否認する内容が盛り込まれ、「『性奴隷』という表現は、事実に反するので使用すべきでない。」などとする主張も掲載されました。しかし、日本政府の正式見解は1993年の河野内閣官房長官談話であり、「慰安婦」が存在した事実を認め、軍の関与と強制性を認めた上で、「我々はこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。このような問題を長く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないというかたい決意を改めて表明する」と述べており、日本政府の対応は、この河野談話の見解からも逸脱するものと言わざるを得ません。
【書簡の内容】
区長の書簡では、「日本国内ではミッテ区の区有地に慰安婦像が設置された報道がなされ、日本国内をはじめ、ドイツ在住の日本人やミッテ区への青少年派遣に参加を希望していた家族からも、日本人であることを理由に差別されることを恐れる投書が相次いでいます。」とありますが、この問題に関して10月20日までに区に寄せられた投書は43件で、うち区民からは2件、ドイツ在住の日本人からは1件、青少年派遣に参加を希望していた家族からは1件で、「日本人であることを理由に差別されることを恐れる」投書の件数は数件であったと聞いています。今年度、青少年交流事業は実施されておらず、この問題に関連して現地で日本人が差別されたという報道も見当たりません。
また、書簡では、「この様な全世界を対象とした普遍的な悪を質すことは当然のことですが、特定国を対象として戦争犯罪を表す像が第三国の公有地に設置される運動には、違和感を持っています。」とありますが、これを見た区民からは、「河野談話を否定するかのような書簡に大きな『違和感』を覚えた。」「区長の考えが新宿区民の総意だと思われては困る。」「このような書簡を送ることはミッテ区との友好関係にマイナスになるのではないか。」という声が私たちにも寄せられています。
また、書簡でも「報道によると、現在は司法機関が判断する段階にあるとお聴きし、その判断に注目しております。」などと言っているように、まさに司法が判断を下さんとする時にこのような書簡を送ることは、内政に干渉するだけでなく外国の司法に対する介入と取られかねない、二重の問題があります。
【結論】
吉住区長は自民党都議時代、日本会議地方議員連盟の役員をしていましたが、その当時、同連盟は米オバマ大統領、ロサンゼルス市長、アメリカ大使館宛に、慰安婦像撤去を求める抗議文を送りつけています。抗議文は、日本軍「慰安婦」は、「単なる売春婦」であり「高額な給与が支払われて」いたとするものでした。慰安婦像設置反対が、吉住区長個人のかねてからの持論だとしても、区長は区民の代表である以上、区民の総意に基づいた行動が求められます。書簡は、吉住区長の個人的な思想にもとづく活動に新宿区政を巻き込むものであり、区長の立場を利用して特定の思想を区政に押しつけるものと言わざるをえません。
そもそも公有地に像を設置するかどうかはその自治体が判断することです。区長の書簡は、内政干渉と他国の司法への介入と取られかねないものであり、看過することはできません。
国際友好は、侵略戦争と植民地支配の反省の上に、各国の主権と互いの国民の人権を尊重することによって成り立ちます。吉住区長の書簡は、友好都市であるミッテ区との関係を損ないかねない重大なものであり、日本共産党新宿地区委員会と日本共産党新宿区議会議員団は、吉住区長のミッテ区長に対する書簡送付に抗議し、書簡の撤回を求めるものです。(以上)
2020.11.17 更新