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区議会活動
2012年第3回定例会 一般質問
いじめ対策と相談体制の充実について
日本共産党区議団の沢田あゆみです。私は、いじめ対策と相談体制の充実について一般質問いたします。
いじめを受けていた大津市の中学2年生の男子生徒が自ら命を絶ちました。どん なにか苦しくて無念だったろうと思うと本当に心が痛みます。大津市の事件は、学校や教育委員会の対応にも問題がありました。大津市が設置した第三者調査委 員会の委員になられた教育評論家の尾木直樹教授は、いじめは絶対に許されないという正しい認識の徹底が必要と言います。そして、学校の断固とした姿勢、加 害者の指導、いじめ防止教育の実施、スクールカウンセラー等の充実を提起され、メディア文化の健全化や、体罰・競争原理教育・管理教育などストレス源の排 除も課題だと言われています。大津市内で行われたシンポジウムで北海道教育大学 教職大学院の福井雅英 教授は、教師が異変に気づくセンサーを共有することが大事で、教師がいきいきと子どもに係わる時間を保障することが大事だと強調されました。また、愛知教 育大学の折出健二 副学長も、「「自己責任」「勝ち組・負け組」の社会では、一緒に高め合うこと自体が壊れていく。その中を生きる子どもたちの間ではいじめは起こりやすく、 教師集団が「教員評価制度」のもとで日常的に緊張を強いられ、ヘルプを出しにくい状況も、いじめが多発・進行する大きな要因で、その状況を変えるために も、教師と保護者との間で子どもについて語り合い、共通理解をもてるようにすることが、「いじめ問題」解決への確かな道」だと言われています。こうした専 門家の指摘について教育委員会はどのような見解をお持ちでしょうか。
区教委は、2006年にいじめ自殺問題が社会問題化した時にも、改めて文科 省の方針を現場に徹底し相談体制の充実などを行って来ました。しかしそれ以降も、不登校の原因がいじめだと周りの子どもが言っているのに学校は把握してい ないとか、「いじめられた」と本人や保護者が訴えても学校が被害者に寄り添ってくれない、などという残念な事例を聞きました。これらのケースは幸い教育委 員会が関与することで善処されましたが、今回のいじめ問題報道後、区教委は児童・生徒へのアンケートを年3回実施し、それを複数の教職員が読むことで SOSを見落とさないようにするなど具体的な対策を示しました。これも、子どものメッセージを的確に読み取り対応するる力がなければ、かえって子どもを失 望させることになりかねません。そこはどのような対策をお考えでしょうか。
実態調査の結果でも、多くの子どもは先生を頼りに相談していることが わかる一方で、いじめの認知件数が多いとされる小学校高学年から中学校の思春期の子どもは、いじめられていること自体を知られたくない傾向もあるので、い じめがエスカレートする前に教職員が気付いて学校全体で対応することが必要です。それは子どもにじっくり係わる時間をどれだけ保障できるかにかかっている と思います。
私は、学級担任をされている現場の教師など何人かの先生方からお話を伺い、実際いじめに対応した経験も聞きました。言われた事は、 教員の多忙状態を解消し子どもと向き合う時間を保障してほしいということ。そして、スクールカウンセラー(以下SC)やスクールソーシャルワーカー(以下 SSW)など専門家の充実と、教師を支える専門家の体制を確立することへの要望です。学級担任の先生方は、いじめが起きないような学級運営に心がけている けれどそれでもいじめが起きた時に、被害者の救済は当然行いつつも重要なのは加害者への指導であり、更に加害者のほとんどが本人や家庭に課題を抱えている のだと聞きました。また、いじめの被害者が不登校になってしまうケースもありますが、本来は家庭訪問をすべきケースであっても電話等で済まされていること も少なくありません。教師と一緒に取り組むべき専門家のSCやSSWは、すべて非常勤職員で基本的に10時~4時45分の勤務のため、放課後の対応や緊急 な対応は困難です。場合によっては勤務時間の調整で対応しているものの、それにも限界があります。現場の先生方からは、複雑な家庭の問題や保護者対応など で一定の社会経験が必要とされるケースも多いけれど、SCはすべて非常勤職員のため勤続年数は短く、社会経験の豊かなSCは少ないため、教師だけで対応す ることも多いと聞きました。教師にとっても学級でいじめや不登校が発生した時の悩みは深く、心理的にも大きな負担を抱えているけれど、都費のSCはそもそ も教師自身の相談を受けることが禁止されているなど、教師が相談できる専門家の体制が実態としてないというのです。1人のSCの派遣日数も1校に週1日 か、多くて2日では、相談を受けても具体的な対応は翌週以降になるというSCの悩みも聞いています。
国の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸 問題に関する調査」でも、国の2010年度調査結果と区の2011年度調査結果を比較すると、いじめる児童生徒への対応で小学校では「SC等の相談員が状 況を聞く」が国1.9%に対し、区は25.6%、いじめられた児童生徒への対応は国3.9%に対し、区は58.9%とSC派遣の効果が圧倒的に出ています が、その子どもに対して「SC等の相談員が継続的にカウンセリングを行う」という点では、いじめた子には2.6%、いじめられた子には12.8%と、その 後の対応が充分にできていないことが明らかになっています。以下質問です。
第1に、教師が子どもに係わる時間を保障するための具体策です。区教 委は2010年と2011年に実態調査を行いその後導入された1人1台のパソコンと校務支援システムも、先生方に聞けば子どもよりパソコンと向き合う時間 が増えたと言われ、研修のレポートをはじめ文書作成にかかる時間があまりに多すぎると言われています。依然として深刻な教師の多忙状態をどのように解消す るのか具体策をお示しください。そして何より、少人数学級の実現で一人ひとりの子どもに目が行き届くようにすることは待ったなしの課題であり、現在は小学 校1,2年生が35人学級ですが、とりわけいじめの出現率が高い小学校高学年と中学こそ少人数学級が必要です。国や都に全学年30人以下学級など少人数学 級の早期実現を強く要求すべきと考えますがいかがでしょうか。
第2に、相談体制の充実・強化です。文科省の来年度予算概算要求でもSC、SSW とも人員増が盛り込まれました。区教委としても増員し、派遣日数を増やすべきと考えますがいかがでしょうか。昨年度から教育センターの臨床心理士の勤務形 態を変更することで相談窓口が午後6時まで延長され、延べ相談件数が増えました。しかし、保護者の勤務形態の多様化に対応するには更なる時間延長や土日も 窓口を開くことが必要と考えますがいかがでしょうか。そして、区として正規職員で臨床心理士等の専門家を複数雇用し、子ども家庭支援センターや教育セン ターに配置をすべきと考えますがいかがでしょうか。
第3は、SCやSSWの処遇改善です。正規職員として専門家としてふさわしい処遇を行うこと がスキルアップにも直結しますが、しかし一気に正規職員化できなくても現状の区費雇用のSC、SSWの待遇は、専門家としての業務に見合ったものとは言え ず改善の必要があります。区費のSC等が新宿区は月給204,300円、時給換算で約2200円、隣接の港区は時給5500円、豊島区は3500円、そし て墨田区は5800円です。都費のSCは時給6000円です。せめて都費と同様の待遇まで引き上げていくべきと考えますがいかがでしょうか。答弁願いま す。(答弁)
「いじめ問題」は、その原因や背景に学校、家庭、地域社会それぞれの要因が複雑に絡み合った根深いものがあると考えられ、専門家の方々の様々な意見は非常に参考になります。
教 育委員会としましては、いじめは「人間として絶対にやってはいけない」という認識に立ち、各学校の教職員が毅然とした態度で対応していくとともに、どんな に小さな児童・生徒のサインも見過ごさないようにしていくことが「いじめ問題」の解決には欠かせないと考えています。そのためにも、各学校が「いじめ問 題」に組織的に取り組み、学校・家庭・地域が手を携え、関係機関とも連携して子どいじめ対策と相談体制の充実についてお答えします。
様々な専門家の指摘に対する教育委員会の見解についてのお尋ねです。
子どもたちを見守ることができる教育環境を整備していくことも大切であると考えています。
次に、教員が子どものメッセージを的確に読み取る力をつけることについてのお尋ねです。
いじめのサインを的確に読み取り、子どもに寄り添った対応を行うことは簡単なことではありませんが、教員に求められる大切な資質能力であると認識しています。
教育委員会では、これまでも「いじめ防止プログラム」を作成し、いじめ発見のポイント等を示してきました。また、教員が子どものメッセージを的確に読み取 る力をつけられるよう、研修会等において具体的な場面を想定しながら児童・生徒を理解する視点や対応の方法を実践的に学ぶことができるよう取り組んでまい りました。
今後も、さらに研修内容を工夫するとともに、校内でも事例検討や教職員同士の情報交換が行われ、教員が子どものメッセージを的確に読み取る力を向上させられるよう各校に指導・助言してまいります。
次に、教師が多忙な状態を解消するための具体策についてのお尋ねです。
教育委員会では、平成20年度から2か年に渡り、学校事務効率化の検討を行い、児童・生徒あてに配布を依頼する際のルールを定めたり、研修報告書の簡素化などの改善を行いました。
検討終了後も、会計処理のQ&Aを作成するなど、引き続き可能な改善を行っています。
さらに、学校ICT化により、教員一人ひとりにパソコンが配備されたことで、教員が必要とする様々なデータや様式等が、直ぐに利用できる状態となっており、情報の共有化と事務の効率化が図られています。
また、副校長の負担軽減については、要望の強かった、事務補佐の配置を、順次拡大しております。
次に、30人以下学級など少人数学級の早期実現を国や都へ要求すべきとのお尋ねです。
少人数学級では、個に応じたきめ細やかな指導により一人ひとりの子どもの変化を把握しやすくなるとともに、教師と児童、児童相互の人間関係が一層深まり、 個別指導が充実することなどが期待されます。しかし、一定規模を下回る少人数学級においては、学級内における固定化された人間関係や集団とのかかわりが限 定されるなどの課題もあると考えています。
現在、小学校1年生及び2年生において35人以下学級を導入していますが、さらに、文部科学省の検討会議では、平成29年度までに全学年で35人以下学級を導入することや来年度は都道府県が小学校3年生以上のどの学年で35人以下学級を導入するかを選択できるとする報告書をまとめました。
一方、東京都では、平成22年度から24年度まで中1ギャップの予防・解決へ向けた教員加配を行い、平成24年度は37人以下で学級を編制しています。また、その効果の検証を行った結果、教員加配は、生徒の学校生活の改善に効果があったとしています。
35人以下学級の実現については、これまでも教育長会や学務課長会を通じて国や東京都へ要望してきましたが、今後も引き続き要望してまいります。
次に、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを増員し、派遣日数を増やすべきとのお尋ねです。
現在、都のスクールカウンセラー16名に加え、新宿区独自に18名を採用し、全小・中学校に週2日派遣するとともに、必要に応じて日数の増などにも対応しています。
さらなる相談体制の充実のためには、学校全体で対応する組織的な取り組みが課題であり、その中で心理や福祉の専門家としてのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが、効果的に機能するよう努めてまいります。
次に、相談窓口の時間延長や土日の開設についてのお尋ねです。
区では「新宿子どもほっとライン」を教育相談室の開設時間外の補完的な役割として位置づけており、平日の夜間や土日における電話相談を臨床心理士が受け付けています。児童・生徒だけでなく保護者や一般の方からも相談が寄せられています。
来所相談の開設時間については、時間を延長したことによる効果、相談者からの要望、「新宿子どもほっとライン」の受付状況などを分析したうえで、考えてまいります。
次に、正規職員で臨床心理士等を複数雇用し、教育センターに配置すべきとのお尋ねです。
現在、教育センターの教育相談室には非常勤の臨床心理士が5名おり、常時3名以上が児童・生徒の学業や心身の健康、進路等の問題について相談にあたってい ます。非常勤職員ではあっても、十分に相談に応じられる体制となっていることから、臨床心理士の増配置は考えておりません。
臨床心理士等の配置についてのお尋ねです。
子ども家庭部では、子ども家庭支援センターの心理指導員として、子ども総合センターに平成23年度より臨床発達心理士を非常勤配置しています。心理指導員は、主に虐待や不適切な養育環境におかれた子ども及び育児不安を抱える保護者の相談支援を行っていますが、いじめに悩む子どもとその家庭の支援にもあたらせています。
現在のところ、十分に相談に応じられる体制となっておりますので、心理指導員の増配置などは考えておりませんが、今後の動向を見ながら、その都度、必要な相談体制を整備してまいります。
次に、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの処遇改善についてのお尋ねです。
都のスクールカウンセラーは日額報酬4万4千円で、時給に換算すると6千円程度になりますが、年間では35日間の勤務となっています。
同じく例に上げられた他区の状況も、社会保険や交通費の支給がない委託や臨時的雇用など処遇に差異があり、時給のみで一概に比較できるものではないと考えます。
新宿区ではスクールカウンセラー等を、社会保険の加入や交通費の支給対象となる月額報酬の非常勤職員として雇用しており、一定の待遇は図られていると考えております。
以上で、答弁を終わります。
2012.09.20 更新