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区議会活動
2013年第2回定例会 一般質問
2013年第2回定例会 佐藤佳一議員の一般質問
学校給食におけるアレルギー対策について
(質問)日本共産党の佐藤佳一です。学校給食におけるアレルギー対策について一般質問いたします。
文部科学省が2005年度に行った調査では、食物アレルギーを持つ小学生は2.8%、中学生2.6%、アナフィラキシーの既往を有するのは小中学生とも 0.15%でした。区立小中学校の食物アレルギー対応をしている児童・生徒は、昨年5月1日現在、小学生251人、中学生54人で、この4年間で小学生 49人、中学生23人も増加し、安全な学校給食を提供する上で重要な課題として取り組まれてきました。
ところが、4月25日、区立中学校の給食でエビに食物アレルギーのある生徒に誤ってエビ入りのおかずを提供しアレルギー症状を起こす事故が起こり、幸い大 事には至りませんでしたが、昨年12月調布市の学校給食で乳製品にアレルギーのある児童に粉チーズ入りチヂミを提供したためアナフィラキシーショックを起 こし死亡するという事故が起きたばかりなのに、今回の事故にはたいへん驚きました。
文部科学省は調布市の事故を深刻に受け止め、「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置し、全国的な調査や対応方法の充実 を図るとしています。協力者会議の委員で国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部部長の海老澤元宏医師が、財団法人日本学校保健会 ホームページの特集で、「食物アレルギー・アナフィラキシーに対する学校での留意点」について指摘されています。内容は、2008年に日本学校保健会が作 成した「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(以下ガイドラインと言います)の徹底と、教職員間での共通理解をすすめること。学校医はも ちろん地域の医師会とも連携したシステム化。アレルギーのある子どもの個別のプランニング。教育委員会からの統一した指導と学校医や医師会へ相談できるよ うな仕組みづくり。アドレナリン自己注射いわゆるエピペンの使用について、大事なのは「迷ったら打つ」。その後、専門の医療機関を受診する。などです。こ の指摘も参考に、事故の再発防止策を講じる必要があります。以下質問します。
第一に、ガイドラインの徹底についてです。
現在、学校現場ではガイドラインに基づいて食物アレルギーへの対応が行われています。区教育委員会は、調布市の事故を受けて校長宛の文書や校長会でこのガ イドラインを徹底したとのことですが、ガイドラインの配布は各学校に2冊程度です。ガイドラインは副校長、養護教諭、栄養士、担任教諭にも配布し、全ての 教職員に徹底をはかるべきと考えますがいかがでしょうか。
第二に、ヒューマンエラーを防ぐ対策についてです。
学校給食で食物アレルギーの対応を開始するまでには専門家も含めて様々な検討が行われますが、献立のチェック後は事実上調理現場に任されています。ヒューマンエラーは起こりうるものです。現場任せにせず、2重3重に対策を講じる必要があります。
調布市の事故調査委員会が3月にまとめた検証結果の報告書では、ガイドラインに沿った対応はされていたものの、詳細は学校任せになっていたことが明らかに されました。横浜市では、ガイドラインを受けて詳細な対応マニュアルを作成しています。豆乳と牛乳などの外見で見分けがつかない場合は両方使わない。製造 業者からの納品時にアレルギーの物質が付着してないか複数で検収する。校長が除去食を含め検食をし、調理現場でも除去食を含め味見をするなどの詳細が徹底 されています。また、通常調理現場でも調理した人、現場チーフが必ずできあがった料理すべてを味見します。新宿区にはマニュアルがなく、除去食は目視での 確認で検食はしていません。文教委員会では、「23区では検食はしていない」「食材が溶けてわからない」などと答弁していますが、複数の人間が検食、味見 をすることは有効な対策と考えます。いかがでしょうか。
また、原材料として使用していない場合の混入を防ぐには、横浜市のように詳細な対応マニュアルを作成し、徹底することが必要です。区教育委員会が事故を受けて設置した「学校給食アレルギー対策委員会」でも検討し、早急にマニュアルを作成すべきです。お答えください。
第三に、エピペンの使用方法など研修の充実についてです。
アナフィラキシーを発症した場合、いわゆるエピペンが有効です。海老澤元宏医師は、エピペンの使用はガイドラインでも、緊急の場合に居合わせた教職員が自 己注射ができない状況にある本人に代わって注射することは人道上許されると書かれていても、現場では抵抗が大きくなかなか取り組みが進んでいないと指摘さ れています。現在、新宿区の小・中学校でエピペンを保持しているのは小学校24人、中学校2人ですから、当該の学校ではその情報を全教職員が共有し、使用 に関する事項も全教職員へ徹底することが必要です。
エピペンの使用については文部科学省と都教育委員会それぞれで研修会が行われ、区教育委員会も一度は受けるように推奨しており、いずれかを受講した教職員 は昨年度22人、一昨年度は18人です。調布市の事故検証委員会の報告書では、これまでも行ってきた研修を一層充実する必要性を強調しており、調布市は狛 江市と合同で独自の研修会を東京慈恵医科大学と協力し、ロールプレイなどで実践的に行い、120人の教職員が参加しています。横浜市では、市として年1回 研修を行い、それ以外にも学校ごとに研修が行われています。新宿区でも、1度受講したら終わりではなく、忘れないためにも2度、3度の受講をすすめるべき です。また、教職員の人事異動を考慮し、学校ごとに2~3年に1回研修を行い、エピペンを所持している児童・生徒がいる学校はロールプレイを含む研修を行 うべきと考えますが、いかがでしょうか。また、調布市が実施しているように、区内の大学病院の協力を得て研修会を行ってはいかがでしょうか。
第四に、命を守る観点から食物アレルギーについての理解を深める食育についてです。
ガイドラインでは、「アレルギー疾患の児童生徒への取り組みをすすめるにあたっては、他の児童・生徒からの理解を得ながら進めていくことが重要」で、「学 級において他の生徒が対応を不審に思ったり、いじめのきっかけになったりしないように十分配慮する必要がある」とし、「他の児童・生徒に対してどのような 説明をするかは、子どもの発達段階などを総合的に判断し当事者である児童生徒、保護者の意向を踏まえて決定」をと書かれています。命を守る観点から食物ア レルギーと向き合い、みんなで協力しあうことを教えることによって、互いに助け合う心を培うことにもつながります。日本学校保健会が作成している紙芝居な どの教材や、アレルギー疾患の啓発資料もあります。そうした物も活用し、食育の一環として食物アレルギーについての理解をすすめる取り組みを学校現場で行 うべきと考えますがいかがでしょうか。
以上、答弁願います。
(答弁)佐藤議員のご質問にお答えします。
学校給食におけるアレルギー対策についてのお尋ねです。
まず、ガイドラインの徹底についてです。調布市の事故を受け、この様な事故が新宿区で起こることがないよう12月28日 に各学校長宛てに、改めて全教職員に対しガイドラインを徹底するよう通知しました。さらに、ガイドラインの内容は電子データ化されているため、学校イント ラの公開ホルダーに掲出し、いつでも全教職員が閲覧できる状態にしていましたが、改めてメールで周知徹底しました。また、この度策定した「新宿区学校給食 等アレルギー対策指針」にも、ガイドラインの抜粋を掲載しています。この対策指針とガイドラインを合せ、アレルギー事故防止に活用できると考えています。
次に、ヒューマンエラーを防ぐ対策についてのお尋ねです。誤配食による事故は、ヒューマンエラーによって起こる可能性が最も大きいため、対策指針においては、チェック体制の強化を方針の1つ とし、対応食の作成から給食を終えるまでの間の各工程において、調理責任者、栄養職員、担任教諭等と複数人で複数回の確認をすることにより徹底を図ること としました。さらに食品によっては、味見をすることで混入が発見できる可能性があることから、検食は行いませんが、栄養職員等が味見をする際、味付けの確 認だけでなく、原因食品の混入がないかチェックするよう徹底します。
次に、対応マニュアルについては、各学校で確実に食物アレルギー対応が行われるよう、学校の栄養職員や事業者の協力を得て、調理手順書を作成するよう対策指針に明記しており、今後、早急に取り組んでいきます。
次 に、エピペン使用方法などの研修実施についてのお尋ねです。エピペンの使用方法を含むアレルギー疾患対応研修会については、エピペンを携帯している児童・ 生徒の担任教諭と未受講の養護教諭は、全員受講させるよう、校園長に通知しました。今後予定されている研修会の受講の機会は十分に確保されていますので、 受講済みの教職員についても、アレルギーに関する知識をより深めることができるよう、積極的な受講を促していきます。
学 校単位での研修については、対策指針に基づき、児童・生徒がアナフィラキシーを発症した場合を想定した校内研修を実施し、エピペンの使用を含め緊急時対応 の徹底を図っていきます。今後も、大学病院等の専門機関の協力を得て、区立学校及び幼稚園の全校園長を対象とした研修会を実施するなど、アレルギー疾患に 関する研修体制の充実に努めていきます。
次 に、命を守る観点から食物アレルギーについての理解を深める食育についてのお尋ねです。新宿区では、アレルギー対応食の提供に際しては、原則的にトレーの 色を変え、除去食などの対応を行っていることが分かるようになっています。そのため学校は、アレルギー疾患のある児童・生徒にとって、給食等の時間が重荷 になったり、いじめのきっかけになったりしないよう、学級担任が、対象の児童・生徒やその保護者の意思を尊重しながら、食物アレルギーは好き嫌いでなく、 アレルギーの原因食物を食べると具合が悪くなることを他の児童・生徒に対しても理解させるようにするなどしています。今後も、新宿区学校給食等アレルギー 対策指針に基づき、日本学校保健会が作成した啓発資料等も活用しながら、より一層対象児童・生徒の自己管理能力の向上とともに、他の児童生徒のアレルギー に対する理解が深まるよう学習活動を行ってまいります。
以上で、答弁を終わります。
2013.06.11 更新