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区議会活動
2013年第3回定例会 一般質問
9月20日に行われた雨宮たけひこ議員の一般質問の概要を紹介します。質問・答弁の順番を変えています。
日本共産党区議団の雨宮武彦です。私は、都営霞ヶ丘アパートの立ち退き問題と、違法貸しルーム、いわゆる脱法ハウスについて一般質問いたします。
1.都営霞ヶ丘アパートの立ち退き問題について
2020年オリンピックの東京開催が決定しました。メイン会場となるのは、区内霞ヶ丘の国立競技場を建て替える新国立競技場です。新国立 競技場は、現在地に隣接する明治公園まで敷地が拡大されることから、都営霞ヶ丘アパートを取り壊して代替の都市公園とすることが5月17日、東京都の都市 計画審議会で審査され6月17日に都市計画決定されました。新宿区の都市計画審議会では、東京都に対する区長意見を議論した際、霞ヶ丘アパートの住民に配 慮し、要望を聞くようにとの意見項目を求める発言がありましたが、結果は「今後計画を進める中で、周辺環境との調和や区民の利便性向上等に配慮願いた い。」という意見書が提出されました。
都市計画が決まっても、住民の心は複雑です。9月3日夕方のNHKテレビ「首都圏ネットワーク」では、 霞ヶ丘アパートの住民の声が紹介され、9月12日付け東京新聞1面でも「聖地再生の足元で」という記事で取り上げられました。86歳の一人住まいの女性は 「近所の方と助けあって暮らしてきた、体の具合が悪くなったとき自分一人になったときが不安」と話し、50年以上住んでいる男性は「知らない所には行けな い。離れたくない。最後までいたい。」と受け入れがたい様子でした。年老いてからふるさとを追われるような気持ちでいる方々に、区として出来る限り手を差 し伸べることが求められています。
住民の要望は、高齢化がすすんでおり、家族同然のつきあいをしてきた仲間と同じ団地の同じ建物に集団移転した いということです。新宿区ではコミュニティが壊れ孤立化することが孤独死につながると、孤独死対策に力を入れてきました。そうした点からも集団移転の要望 は大変理解できます。もう一つの要望は、できるだけ早く移転のスケジュールを示してほしいということです。荷物をまとめたり、今よりかなり狭い住宅に移転 するので粗大ゴミも相当数出さざるを得ません。移転にかかるもろもろの手続きも必要です。年老いての引っ越しの苦労は命に直結します。早目に予定を立て少 しでも負担を軽くしたいというのはもっともな要望です。すでに小学生のいる世帯には4月の移転を認め、5月に早期移転の希望をとり、10月には 約30世帯以上が転居する予定となっています。
霞ヶ丘アパートはエレベーターも外廊下もなく、一つの階段の両側に8ないし10の世帯が居住する造りで、こ れが基礎的なコミュニティを形成し、互いに声を掛け合い支え合って高齢化が進む中でも安心安全を守ってきました。それが櫛の歯が抜けるように隣が引っ越し 下の階がいなくなり、中には1階段に1世帯しか残っていないところがでています。見守りや安否確認を強化しないと移転する前に孤独死が多数でかねません。 以下、区としての支援について質問いたします。
質問の第1は、東京都に対して要請することです。コミュニティを維持するため集団移転の要望に応えるよう、また、スケジュールについても早期に示すよう、区長として都に要請していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
質問の第2は、区としてできる支援を行うことについてです。ゴミの個別収集の案内を徹底し、粗大ゴミの出し方も自治会と協議して特別の取り計らいをすべき と思いますが、いかがでしょうか。また、見守りや相談の対応では、高齢者総合相談センターが定期的に声かけをし、ぬくもりだよりの配布頻度を増やすなど、 何らかの手だてを講じるべきと思いますがいかがでしょうか。(都市計画部長)
雨宮議員のご質問にお答えします。都営霞ヶ丘アパートの立ち退き問題についてです。
はじめに、コミュニティを維持するための集団移転やスケジュールの早期提示の要望を都に要請すべきとのお尋ねです。区はこれまで、都営霞ヶ丘アパートの居住者の移転にあたって、居住者の意見を十分聞いて進めてほしいと、都に要望してきました。都は、居住者ができるだけ まとまって移転できるよう、都営百人町アパートをはじめ、新宿区内の移転先などを用意してきていると聞いています。また、今後の移転スケジュールについて も、居住者が円滑に移転できるよう、決まり次第お知らせすると聞いています。区としては今後も引き続き、居住者が安心して移転できるよう、都に要請してい きます。
(環境清掃部長)
次に、ごみの戸別収集のご案内と粗大ごみの出し方についてのお尋ねです。
区では、自ら集積所にごみ を持ち出すことが困難な高齢者・障害者等の世帯を対象に、収集職員が玄関前等から収集する「訪問収集」を行っています。周知については、全戸配布している 「資源・ごみの分け方・出し方」などのチラシでご案内をしていますが、今後とも福祉部との連携を含め、ご案内を丁寧に行ってまいります。また、引越しに伴 う粗大ごみの取扱いについては、現在、東京都と協議を進めており、円滑な収集に努めてまいります。
(福祉部長)
次に、高齢者の見守りや相談の対応についてのお尋ねです。
四谷高齢者総合相談センターでは、平成24年度に、都営霞ヶ丘アパート在住の75歳以上の高齢者を戸別訪問し、生活状況の聞き取り調査を行いました。その 結果、アパート内の高齢者の状況が把握でき、支援を必要とする方への相談に繋がっています。今後も、地域の情報を一番よく知る町会や民生委員と連携し、高 齢者への個別支援の必要性や、安否確認に関する情報提供等の協力をいただきながら、適宜、必要な対応をとっていきます。なお、情報紙「ぬくもりだより」に ついては、毎月2回発行し、民生委員及びボランティア等により、定期的に訪問配布を行っています。従って、配布頻度を増やすことは難しい状況ですが、手渡 しによる安否確認を今後も徹底してまいります。
2.違法貸しルーム、いわゆる「脱法ハウス」問題について
次に、違法貸しルーム、いわゆる「脱法ハウス」問題について質問いたします。
居室が極端に狭く、建築基準法などに違反している危険な「脱法ハウス」の存在が明らかになり、大きな社会問題となっています。所得が低い、雇用が不安定、手持ち金が少ない、保証人がいないという層が増えるなかで、いま「脱法ハウス」が住まいの受け皿になっています。2007年にネットカフェ難民が大きな社会問題となり、8月の厚生労働省調査でネットカフェ等に寝泊まりする住居喪失者は5400人と発表しました。更に リーマンショックを経て、職とともに住宅を失う事態が拡大してきました。国は住宅支援給付事業などを実施しましたが、根本的な受け皿もないままです。わが 党は反対しましたが2010年3月に東京都は「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」、いわゆるネットカフェ規制条例ができ、締め出された人た ちの行き場となったのが、2畳前後の狭い居室ですが、敷金・礼金・保証人無しですぐに入居できる「脱法ハウス」でした。
「住まいの貧困に取り組むネットワーク」が行った都内の居住者からの聞きと取り調査によると、居住者の73%が20~30代で、1年半以上住んでいる人が 2割以上、就業状況はアルバイトなどの不安定就労が55%、入居理由は家賃が安いー64%、保証人がいないー80%、初期費用が払えないー80%、となっ ています。脱法ハウスが、アパートに入居できない人々、住宅困窮者の受皿となっているのです。一方、脱法ハウスに入ると家賃2~3万円の物件であっても、 料理をする場所がないため食事代がかかり、風呂もなく、洗濯もコインランドリーを利用するなど出費があり、結果的に一定の収入があっても次の資金をためる ことができず、一般のアパートにも移れません。こうした方々が「違法なハウスだ」として追い出されたら住む所がなくなってしまいます。国土交通省の通達に よる脱法ハウスの調査と違反物件の是正指導だけでは、根本的な解決にならずネットカフェ難民の人たちと同じような事態になりかねません。「住まいの貧困に 取り組むネットワーク」と「国民の住まいを守る全国連絡会」による脱法ハウスの実態調査によれば、都内23区と10市で401棟、新宿区は43棟で1番多 いとのことですから、この問題に新宿区がどう取り組むかが注目されています。
質問の第1は、厚労省の通達を受けた調査の結果についてです。区内には脱法ハウスが何棟あり、是正指導した物件は何棟あったのか、お答えください。
質問の第2は、区としての対応についてです。事業者に対して必要な是正指導をするとともに、それによって退出を迫られる脱法ハウス入居者の転居先確保など を指導することと。新宿区としても入居の初期費用の貸し出し制度をつくることや、公的保証人制度の創設等により安全・安心の住まいを確保すべきと考えます がいかがでしょうか。
質問の第3は、居住支援協議会の設置についてです。豊島区では昨年7月、NPOなど居住支援団体や不動産業者、自冶体などの関係者が連携し、住宅セーフ ティネット法に基づく居住支援協議会を立ち上げ、「シングルママのための居住支援事業」などに取り組んでいます。前からこのことを要望し、区も検討すると 言ってきましたが、新宿区は多くの脱法ハウスを抱えている問題もあり、また、高齢者からは立ち退きの相談も増えていることを考えるならば、「住まいは福 祉」の視点から、住みやすい地域づくりのためにいよいよ新宿区でも居住支援会議を設置すべきではないでしょうか。以上、答弁願います。(都市計画部長)
違法貸しルーム、いわゆる「脱法ハウス」についてのお尋ねです。
まず、区内の脱法ハウスの調査結果と違反是正指導についてです。
区では、これまで脱法ハウスの疑いのある建築物について、消防や警察と連携して情報収集するとともに、区のホームページで区民に情報提供を求めてきました。
本 年9月12日の時点で、脱法ハウスの疑いがあるとの情報を得た建築物は、64棟あり、そのうち37棟について消防と合同による立入調査を実施しました。調 査の結果、居室ごとの間仕切り壁が必要な耐火性能を備えていないものや、避難などのための窓がないものなど、建築基準法の違反が確認された建築物が12 棟、内部改修がなく、建築物の用途が不明なため、違法性が確認できなかった建築物が23棟ありました。建築基準法の違反が確認された建築物には、 その違反を是正するために必要な改修を行うことや、脱法ハウスとしての使用をやめることなど、強く指導を行っているところです。また、内部改修がなく、建 築物の用途が不明確なため、違法性が確認できなかった建築物については、本年9月6日に国土交通省より脱法ハウスについての判断基準が示されたことから、 今後は、この判断基準に基づき、新たに立入調査で建築基準法の違反が明らかになった物件とともに、早期に違反が是正されるよう強力に指導をしていきます。
次に、脱法ハウス入居者に対する区の対応についてです。
脱法ハウスの違反是正指導にあたっては、事業者に対して、入居者の移転先の確保を要請するとともに、住宅住み替え相談など区が実施している各種支援事業に ついての情報提供を行っていきますが、ご指摘の入居の初期費用の貸し出しや公的保証人制度の創設については考えていません。
次に、居住支援協議会の設置についてです。
脱法ハウス入居者の住まいの問題への対応として、居住支援協議会を設置する考えはありませんが、高齢者等の住宅確保要配慮者への支援のあり方については、 住宅住み替え相談や家賃等債務保証料助成などの居住支援事業で連携している公益社団法人東京都宅地建物取引業協会新宿区支部や一般財団法人高齢者住宅財団 等から意見を聞きながら検討しているところです。
2013.10.04 更新