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区議会活動
2013年第4回定例会
日本共産党区議団の佐藤佳一です。 2013年新宿区議会第4回定例会にあたり、日本共産党区議団を代表して区長並びに教育委員会に質問いたします。
1、最初に、区長の政治姿勢について質問します。
安 倍政権発足から1年、社会保障制度改悪と平和と民主主義を脅かす法案を次々に国会に提案し、数の力でごり押ししようとしています。戦争する国づくりをすす めるために、国民の知る権利を奪い、監視社会をつくる特定秘密保護法案が臨時国会の焦点となっています。防衛・外交など4分野について、国が一方的に秘密 指定し、何が秘密かも秘密にして、これを漏らしたりすれば最長10年の懲役という重い罰を与える、秘密に関わる人や家族・友人まで国や警察に監視・調査さ れ、マスコミも処罰の対象となることから萎縮して取材ができなくなり、国会議員の国政調査権行使も処罰の対象となり国民主権が脅かされます。法曹界・学者 研究者・マスコミなど幅広い層から反対の声が広がるなか、自民・公明の与党は、みんなの党や日本維新の会と修正協議が行われ、26日の衆議院本会議におい て強行採決されました。
新宿区には、防衛省が置かれており軍事機密が集中しています。区民は秘密の巣窟と隣り合わせですから、何が秘密か知らないままに秘密に接し、罪に問 われることもあり得ます。区民の安全をまもるうえでも、特定秘密保護法案は廃案にすべきと考えますが、区長はこの法案についてどのような考えをお持ちかう かがいます。
アベノミクス第3弾「成長戦略」と称して、産業競争力強化法案と国家戦略特区法案を出し、大企業・多国籍企業のリストラを支援したり税の優遇をいっ そうすすめようとしています。国民の反対で解雇特区とホワイトカラーエグゼンプションは見送りましたが、労働者を保護する法制を企業単位で緩和しようとし ています。多国籍企業を手厚く優遇しても国民には恩恵がまわらず、賃金は下がり続け、経済は回復せず、税収は減るばかりです。賃金を引き上げ国民の懐を暖 めることこそ、経済も財政も回復させる道です。
新宿区はすでに、総合特区法の国際戦略総合特区である東京都の「アジアヘッドクウォーター特区」に新宿駅周辺が指定されて、野口副区長が都の協議会 のメンバーとなっています。アジアヘッドクウォーター特区も多国籍企業呼び込みのための規制緩和のオンパレードですが、新宿駅周辺ではこれまでどのような 計画が進められてきたか、今後何をしようとしているのか、財政負担を含めて区はどのように関与していくのかお答え下さい。
【答弁】
佐藤議員の質問にお答えします。
私の政治姿勢についてのお尋ねです。はじめに、特定秘密保護法案についてです。
特定秘密保護法案は、国の安全保障に関して特に重要な情報を特定秘密に指定し、これを保護することにより、国や国民の安全を確保することを目的とし ています。その主な内容は、行政機関における特定秘密の保護措置や安全保障上必要な特定秘密の提供、特定秘密の取扱者の制限、特定秘密を洩らした者の厳罰 化などが規定されています。
国民の安全を確保する制度を構築することは重要ですが、この法案については、特定秘密の範囲や国民の知る権利の保障、秘密指定の解除要件など、様々な議論があることも承知しています。こうした点を十分に考慮した上で、国において慎重な議論がなされるべきものと考えます。
次に、アジアヘッドクォーター特区についてのお尋ねです。アジアヘッドクォーター特区は、規制緩和や税制支援、まちづくりなどを総合的に組み合わせ て、東京に外国企業の業務統括拠点や研究開発拠点を誘致し、より一層の集積を目指す区域です。アジアヘッドクォーター特区の実現に向け、新宿区など関係9 区の副区長及び東京都、民間企業が、「アジアヘッドクォーター特区地域協議会」を組織し、これまで、総合特区計画の作成や、国への対応を協議してきまし た。新宿駅周辺地域のほか、東京都心・臨海地域など5地域で構成されるアジアヘッドクォーター特区は、平成23年12月に国から区域指定を受けています。 新宿駅周辺地域については、東京都が、省エネを目的としたエネルギー事業、災害時にも利用できる無線LANなどの通信事業、公開空地への店舗の設置など賑 わいを誘導するまちづくり事業などについての規制緩和策を、国に提案しています。国はこうした提案を受けて、東京都と協議を進めており、今後は協議結果に 基づき、提案の実現に向けた法改正などを行うことになります新宿区は、アジアヘッドクォーター特区に関連した財政負担は考えていませんが、この規制緩和等 の特例措置を活用し、地域と協働で新宿駅周辺のまちづくりを進めていきます。
2、次に(仮称)新宿区立美術愛住館計画について質問します。
(仮 称)新宿区立美術愛住館計画については、9月11日の総務区民委員会に初めて報告があり、ほとんどの会派から厳しい意見が出され、その後の決算特別委員会 でも議論となりました。今年2月に堺屋太一氏側から話が持ちかけられ、土地建物と絵画は無償貸与、指定管理者は堺屋氏が昨年6月に創設した財団を指定する こととセットで正式に提案されてきたのが今年7月で、区はすべて堺屋氏の意向に沿った形で進めようとしているということがこれまでの議論で明らかになりま した。区は、指定管理者として一般財団法人堺屋記念財団を公募によらず指定し、将来にわたって指定替えもせず、毎年1500万円の指定管理料を支払う予定 としています。堺屋氏側が所有し、区立美術館に展示しようとしている作品は、堺屋氏の配偶者である池口史子氏の絵画を中心としたものであり、その他の絵画 についての詳細も不明です。当初の計画では今定例会に施設の設置条例と、指定管理者選定のための補正予算を提案するとしていましたが、今定例会への提案は 見送られました。
新宿区はこれまで、記念館以外に区立美術館構想が検討されたことはありませんでした。新宿区内には優れた作品を持つ私立美術館があり、ゴッホの「ひ まわり」をはじめ、世界的作品を所蔵する損保ジャパン東郷青児美術館は、教育委員会の事業で中学生の体験学習の場となっていたり、国内外の学生への奨学援 助事業も行っている佐藤美術館は新宿区フィールドミュージアムに参加実績があり、オペラシティアートギャラリーなどもあります。新宿区は、他の自治体と比 べて美術に親しむ環境は恵まれていますが、さらに区立美術館を設置するというなら、公立美術館としての位置付け、役割を明確にしなければなりません。
美術館設置の根拠法令は博物館法ですが、博物館で行う事業は、資料を豊富に収集し、保管し、及び展示すること、など11項にわたって規定され、市区 町村立美術館は床面積2000平米以上などの標準があります。(仮称)新宿区立美術愛住館は、面積基準からも建築関係法令の安全基準からも美術館の基準を 満たしていませんが、区立美術館とするのならば少なくともそこで行う事業は博物館法の主旨に沿った公益性が保障されたものでなければなりません。
その点で、財団法人「地域創造」が2011年に公立美術館の専門家や自治体の首長などを委員としてまとめた「『公立美術館の公益性に関する指針』に ついての調査研究報告書」が重要な指摘をしています。報告書は最初に、「美術館の基本的な使命は、選び抜かれた作品を集め、長く安全に保存することで、多 くの人びとに作品鑑賞の機会を提供し、多様な文化、歴史、感性があることを知らせることにあります。また、社会に新しい価値観を示し、活力を与え、社会の 創造性を高める拠点となることが求められます。」として、公立美術館が地域社会に期待される4 つの役割を示しています。
そのような視点から見た時に、美術愛住館は収集・保管・展示すべき資料を持たず、施設そのものの所有権もない、当面はすべて借り物で、はたして区立 美術館たりえるのか、はなはだ疑問です。23区内にも小規模な美術館等がいくつか存在しますが、そのすべてが地元にゆかりのある有名な文化人の名前を冠し た記念館であり、その成り立ちも区民や愛好家、画家の家族などが長年運営してきたものが区に移管されたものが大半です。
以下、具体的に質問します。
第1に、土地建物の権利関係ですが、使用貸借契約で無償貸与という形ではなく、土地建物を今から区に寄贈できないのか、という協議を堺屋太一氏側と したのでしょうか。したとすればどのような回答だったのでしょうか。4階建ての建物の1,2階部分のみを美術愛住館にすると言いますが、建物の更新時期を 迎えた時などに、3,4階の所有者とトラブルが発生した場合、どのように対応するのでしょうか。
第2に、遺留分を請求する権利のある相続人は何人いるのか。堺屋氏夫妻が亡くなった後に区に寄贈する場合、遺留分を請求されないという保証があるのでしょうか。
第3に、美術愛住館に展示する池口史子氏の絵画と堺屋太一氏所有の絵画を、今から区に寄贈できないか、という協議を堺屋氏側としたのでしょうか。ま た、堺屋氏所有の絵は誰の作品で、池口史子氏の絵も含めて、どのような美術的価値があり、全部で何点をいつ区に寄贈する予定なのでしょうか。
第4に、区が指定管理者に指定しようとしている堺屋記念財団は、評議員は池口史子氏やみんなの党の国会議員など3名、理事には堺屋太一氏ほか2名と 監事1名が登記されていますが、美術館運営の専門家は見あたりません。雇用されている職員のなかに学芸員は何人いるのか、美術館運営の専門家はいるのか、 区は財団の体制について詳細を把握しているのでしょうか。
第5に、指定管理者の問題です。区は堺屋記念財団を公募によらず指定し、将来にわたって指定替えもしないということですが、これまで「指定管理者は 公募による選定を行い3年から5年で指定替えを行う」という区の基本方針とは相反するやり方であり、区民に対して説明がつきません。区は、美術館の運営に 専門性を持つ財団を指定するのだと言いますが、堺屋記念財団は専門性も実績もありません。新聞報道によると堺屋氏は、運営には「6600万円かかり、区か らの1500万円では大赤字だ。」と言っていますが、区はこの話を聞いていたのでしょうか。毎年多額の赤字が予定されるような事業計画を前提としているよ うな財団では、区立施設の指定管理者として不適切ではないでしょうか。堺屋氏が私的な思いで事業を展開する場として区立施設にしようと言うのなら、それは 区政を私物化するものだと思いますが、区長はどのようにお考えでしょうか。
第6に、新聞報道によると堺屋氏は、「議会の反発には『全く知らなかった。』」と言っています。しかし、あれだけの激論になった議会の意見を、区が 伝えなかったはずがなく、堺屋氏が知っていたのに知らなかったなどと言っているとしたら、その時点で区との信頼関係は崩れているのではないでしょうか。区 は、発言の真意を確かめたのでしょうか。
第7に、区長は定例記者会見で、愛住館に関する質問に対し、「文化芸術振興会議に諮問する」と答えていますが、指定管理者制度の問題なども含めてすべての判断を文化芸術振興会議にゆだねることは困難だと思いますが、どのような諮り方をするのでしょうか。
以上7点について、お答えください。
この間明らかになった状況を区民が知ったときに、堺屋氏の意向に沿って新宿区が利用されているのではないかという声が出ても仕方がないのではないで しょうか。(仮称)新宿区立美術愛住館計画はきっぱりと断念すべきと考えますがいかがでしょうか。区長の明確な答弁を求めます。
【答弁】
(仮称)新宿区立美術愛住館計画についてです。
今回の堺屋氏の申し出は、同氏等が所有する土地・建物を将来新宿区に寄贈することを前提として、4階建ての建物(愛住館)の1階及び2階を美術展示施設に改修の上、区に無償で貸与して、区立の美術展示館として設置してほしいとするものです。区は堺屋氏と協議を重ね、新宿区の財政力を考慮し、指定管理料年間1500万円を上限として、新宿のまちの文化性を高める「文化芸術創造のまち新宿」にふさわしい美術展示館を一般財団法人堺屋記念財団の協力のもと設置・運営することを意義あるものと考え、取り組みを進めてきたものです。
事業内容は、年に数回、全国美術界の話題となるような企画展を開催するとともに、区内公・私立高校の優秀美術作品展を教育展として開催するほか、堺 屋記念財団が所蔵している作品を展示する所蔵展を行うとしています。また美術愛住館の運営を行う体制については、一般財団法人堺屋記念財団に学芸員はおり ませんが、美術愛住館の運営にあたっては、専門家が館長に就任することをはじめ、スタッフ及び人員など具体的な提案を受けています。
指定管理者の指定に当たっては、文化芸術振興会議の答申を受け、設置条例制定後に、外部委員によって構成される選定委員会での選定を行うとともに、指定後も、毎年、外部委員を含む評価委員会で区立美術展示館としての指定管理者の評価を行ってまいります。
新聞報道による堺屋氏の発言についてですが、議会からの意見については、堺屋氏にも伝え、課題の共通認識は図られています。また堺屋氏から今回の提 案は、新宿区民をはじめ多くの人々に良質な美術展示サービスを提供し、新宿の文化に貢献したいという意志に基づくものであることを理解していただきたいと 伺っています。
文化芸術振興会議への諮問については、諮問事項を「新宿区立美術愛住館の設置について」として検討いただきたいと考えています。今回の美術愛住館の 設置について、区としては新宿区の財政力を踏まえた上で、発信力のある良質な文化活動ができると考えたところです。新宿区の公の施設の設置としては、これ までにないスキームであることや美術展示館という専門的な判断も必要な文化活動であることから、文化芸術振興会議という公の開かれた場で、その必要性や今 回のスキームを含め、美術展示館のあり方等、様々な角度からご審議いただけるものと考えています。
今後は、文化芸術振興会議の答申を踏まえ、区として判断してまいります。なお、不動産の即時寄贈の可否については今回の美術愛住館運営のスキーム等 から堺屋夫妻の没後の遺贈としています。絵画等の寄贈については、保管等の課題もあることから、今後、堺屋氏と協議してまいります。一般財団法人堺屋記念 財団は、恩賜賞を受賞し、日本藝術院会員である池口史子氏の作品をはじめ、100点を超える作品を所有しており、その中には国内及び海外の著名画家の価値ある作品も含まれていることを所蔵品のリストにより確認しております。
また、相続人及び遺留分の発生の有無などについても確認は済んでおり、問題はありませんが、個人の情報に関わるため、詳細を述べることは控えさせていただきます。
3、次に、中小業者・商店の支援について質問します。
まちの活性化に欠かせないのは、元気な商店・中小業者の存在です。商業都市・新宿区で中小業者を元気にすることは区政の大きな課題です。
私たち区議団は、商業都市として発展してきた群馬県高崎市を視察してきました。高崎市では富岡賢治市長が就任した直後の2011年度から、中核市と して仕事と雇用を増やすためにあらゆる施策を講じたいと、「住環境改善助成事業」いわゆる住宅リフォーム事業を実施しています。20万円以上の工事費に補 助率30%上限20万円まで助成をする事業です。初年度の2011年度実績は1059件、交付決定額1億7708万3千円、工事費総額9億577万円、 2012年度実績は897件交付決定額1億5912万5千円、今年度は9月末現在1091件と、市民の住環境改善とともに建築業界の仕事興しに大きな成果 を上げています。
そして、住環境改善助成事業の商店版として今年度から始まったのが、「まちなか商店リニューアル助成事業補助金」事業です。この事業は、市内の商店 主のやる気を後押しすることで商業を活性化させ、市内全体を元気に盛り上げていくことが目的です。市内で商売を営んでいる人、これから営業を開始しようと している人を対象に、工事費なら20万円以上、物品購入なら10万円以上で、その費用の50%を100万円を上限に補助し、すべて市内業者に発注されま す。対象業種は、小売、宿泊、飲食サービス、生活関連サービス業と幅広く、100㎡以下のバー・キャバレーなどにも支援し喜ばれています。市外に本店があ るチェーン店やフランチャイズ店、床面積が1000平米を超える店舗は対象外で、約6200事業所が対象となります。
制度を創設するにあたり、富岡市長は、2012年度に商店振興のため何が必要なのか調査を行うよう指示し、その際アンケート用紙に記入してもらうだ けでは正直な声が分からないと、飛び込みで雑談もまじえて要望を聞き取る方法で、7月から9月にかけて280軒の店舗を訪問した結果、「跡取りがいない」 「お店が古くなっている」「資金がない」などの悩みなどが出され、改修の意向は20%だったのが「市がお金を補助するとしたらどうか?」と聞くと50%く らいの方が「それならやりたい」と答えたそうです。これらの結果を踏まえ、市長の決断で行うことになったそうです。
今年5月1日の受付初日から108件の申請があり当初予算の1億円はわずか3週間で突破。予算を2回追加補正し、最終的に4億4千万円を計上しまし たが、対象店舗の約12%にあたる738件の申請で予算額ほぼいっぱいになったため、今年度分は9月5日に締め切られました。この事業はすべて市内業者に 発注されますから、まさに地域が潤う事業です。738件の内訳は、改修工事のみは461件、備品購入のみが81件、備品購入と工事の両方が196件で、業 種別にすると、飲食サービス業が約3分の1、次いで小売業、理美容業、クリーニングと続いています。工事内容は、電気・ガス・水道のライフライン、屋根や 内装、設備となっており、備品購入先も含めてあらゆる業種が制度の恩恵を受けています。
この事業は、お客さんからも喜ばれ、評判が良いのはトイレの改修で、照明のLED化や、机・いすの交換、壁紙の張替えなどで「お店が明るい雰囲気に なった」。空調の交換で「快適になった」などの声が寄せられ、補助金を活用したお店からは「高価な商品が売れるようになった」「客層が広がった」「人が寄 るようになった」など地域の新たなコミュニティの場になっているなどの効果も出ています。
また、仕事を受ける側も、これまで待ちの姿勢で営業が苦手だった建設関連の事業者も、ある畳屋さんは2つの助成制度の紹介も含めた独自のチラシを 作ってポスティングしたり、御用聞きをして仕事を確保するなど変化が出始めています。リニューアルをしたお店も工事等を請け負った事業者もどちらの側にも 攻めの経営姿勢が出てきており「やる気の後押しをしてるようです」と市の担当者もその効果を語っていました。
富岡市長は新聞の取材に答えて、「高崎の『まちなか』を面白く、活気あふれるものにしたい。そのためには小さな店が元気になることです。リニューア ル事業はそれが目的」。「市民から『いい制度だね、助かっている』と声をかけられる。地元の小さな業者を支援する制度をつくることこそ自治体の役割で す。」と語っています。新宿区は、来年度に向けた予算運営で、「区単独の事業補助金については、原則とし新たな創設は行わないこと」としていますが、今ま さに、区長の姿勢が問われています。そこで、伺います。
第1に、高崎市のように率直な声を聞くことは大事な視点だと思います。区内には、約8000軒の商店と約1300軒の建設事業者があります。まずは、新宿区でも聞き取り調査を実施すべきではないでしょうか。
第2に、高崎市は人口約37万人、一般会計は1500億円余で、新宿区の行政規模とそれほど大きな差はありません。高崎市の「商店リニューアル助成事業補助金」のような事業を区長の決断で実施すべきではないでしょうか。
最後に、これまでも何度か要望してきた「住宅リフォーム助成」についても検討していただきたいと思いますが、区長のご所見を伺います。
【答弁】
中小業者・商店の支援についてのお尋ねです。
はじめに区内中小業者・商店の活性化に向けた事業補助に関する聞き取り調査を実施すべきとのお尋ねです。区では、毎年行われる東京商工会議所新宿支部会員との懇談会において、私自身が直接中小企業の抱える実情を聞き、施策に反映しています。また、年4回、 区内の中小企業に対し、業況や売上、資金繰り、経営上の問題点や今後の取り組みについて調査する「新宿区中小企業の景況調査」など、日頃から中小企業、商 店街に対してきめ細かな調査を実施しています。その中で、特に販路拡大や後継者不足などが中小企業の抱える課題であると認識しています。更には、産業振興 会議において、中小企業や商店街に対して産業振興施策の方向性や支援策等について、委員が訪問・ヒアリングを行い、状況把握に努めるとともに、必要な支援 策を検討しています。このことから、さらに聞き取り調査を実施することは考えておりません。
次に、高崎市が実施しているような補助事業を実施すべきとのお尋ねです。ご指摘のように、区内の中小企業や商店が元気になることは、まちが活性化し ていくためには重要なことです。そのため、区としても、厳しい財政状況の中、中小企業や商店に対する低利な融資制度を始め、商談会の実施や、有益な情報の 発信等を行い支援しています。また、商店街についても、イベントや街路灯整備に対する助成、空き店舗支援融資などにより、その活性化を支援しています。ご 提案の事業も支援策の一つであると思いますが、今後も、中小企業や商店街の実情に応じた振興策を重層的にきめ細かく展開し、活性化に努めていきます。
次に、住宅リフォーム助成についてのお尋ねです。これまでも、住宅リフォーム助成については、区民の住環境向上や耐震対策、高齢者支援などの観点か ら、その実施についてご要望をいただいてきました。区では、そうした観点から新宿区住宅リフォーム協議会と連携した「住宅修繕工事等業者あっ旋」や東京都 建築士事務所協会新宿区支部と連携した「安全安心・建築なんでも相談会」により住宅改修を支援しています。したがいまして、新たに住宅リフォーム助成を実 施する考えはありません。
4、次に、生活保護法「改正」案と生活困窮者自立支援法案について質問します。
今臨時国会に、参院選挙前の国会で廃案になった生活保護法「改正」案が、一部修正して提案されました。同法案は参議院でわずか2日、8時間半の審議で委員会採択、本会議を経て衆議院に送られました。
生活保護申請の“水際作戦”の合法化と批判された申請の書面提出の義務化については「申請書を・・・・提出してしなければならない。」から「申請書 を・・・・提出しなければならない。」と法文上は書面提出がより義務と受け止められかねないように修正されました。また、申請書に添付する書類についても 厚生労働省令で定めるものを添付しなければならないとしています。
私たちも生活保護の申請に同行することがよくありますが、障害や高齢化でペンが持てず文字が書けない人もいます。公共料金の領収書など、窓口で言わ れた書類を全て整えることができない人もかなりいます。口頭での申請や添付書類の扱いについて、生活福祉課相談係では現在どのように指導しているか、法改 正によって申請抑制につながる恐れなしとは言えないと考えますが、区長の見解をお聞かせ下さい。
最大の問題は、親子・兄弟の扶養義務を事実上要件化する内容が「改正」案に含まれていることです。法案では、扶養義務者について、官公署、日本年金 機構や共済組合等に対して必要な書類の閲覧や資料提出を求めたり、銀行等の金融機関や勤務先等に報告を求めることができるとされています。生活保護を受給 したいと相談に来る方は、事業の倒産や自己破産、生活苦などで親族に迷惑をかけたとの自責の念を持っている方が多く、これ以上子どもや兄弟の世話になれな いから相談に行くのです。今でも扶養照会が行くことを恐れて申請に踏み切れない人が大勢いるのに、事細かな資産調査までするとなれば、死んだ方がましだと 考えて申請をあきらめる人がこれまで以上に増えるでしょう。
区長は、昨年の第2回定例会で、我が党の質問に対して、扶養義務は保護の前提要件ではない、扶養義務強化の法改正は慎重な対応が求められるもので、 必要に応じて区長会を通じて意見を上げると答弁されました。この区長答弁は、派遣切りで住居を喪失した方や夫の暴力から逃れてきた女性などの相談を数多く 受け、保護につなげてきた新宿区の現場の実態を熟知した意見だと私たちは評価をしてきました。今回の法「改正」は、この区長答弁と相反するものと考えます が、どのように受け止めますか。また、国に対して意見等は上げたのでしょうか、お答え下さい。
ところで、新宿区の親族への扶養照会の文書ですが、国会で問題になり厚生労働省が是正を求めた長野市などのように扶養が要件であるとは記載されてお らず、扶養できない場合はその旨回答して下さいとも書かれています。しかし、読む人によっては扶養義務があると誤解しかねない言い回しです。あなたには民 法上の扶養義務はあるが、それは生活保護の前提要件ではないですよと、誰が読んでもわかるように改善をはかるべきと考えますが、いかがですか。
この「改正」案とともに提案されている生活困窮者自立支援法案は、奈良市長が「安易に生活保護を受給する方を水際で止める」と言っているように、生 活保護が必要な方に就労を強いて生活保護から排除する役割を果たす危険を含んでいます。大阪府岸和田市で生活保護を申請した夫婦が稼働能力活用要件を理由 に申請を却下された問題で争われた裁判で、10月31日に処分の取り消しを命じる判断が下され、市は控訴を断念し判決が確定しました。通称新宿七夕裁判で も同様の判決が出されています。保護が必要な人を排除し、生存を脅かすような法案はきっぱり廃案にすべきです。
すでに生活保護費の削減が開始され、受給者は健康で文化的生活とはおよそかけ離れた最低以下の生活を余儀なくされます。その上今度は、申請そのもの を押さえ込み減らそうとする政府のやり方は、国が国民の生存権を保障することを求めた憲法25条に反するもので、とうてい容認できません。2法案を撤回す るよう、早急に国に要望書を出すべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
【答弁】
生活保護法「改正」案と生活困窮者自立支援法案についてのお尋ねです。生活保護の申請については、原則として申請書や添付書類を提出いただいており ますが、口頭での申請も受け付けています。その際、添付書類については、後日、提出いただくか、提出が難しい場合には、福祉事務所として、必要な調査を 行っています。生活保護法改正後についても、厚生労働省が、「口頭での申請は認める」としていることから、新宿区においても、従前どおり、口頭での申請を 受け付けますので、生活保護の申請抑制につながるとは考えていません。
次に、扶養義務強化の法改正についてのお尋ねです。現行の扶養義務の取扱いについては、例えば、夫の暴力から逃れてきた母子等の扶養義務者である夫 に対し、扶養を求めることで、要保護者の自立を阻害する場合や、長期間家族と音信不通となっている場合は、扶養照会を省略する扱いとしています。一方で、 親族の関係に問題がなく、扶養できる可能性が高い親族がいる場合には、扶養に関する報告を求めています。今回の改正は、こうした現行の取扱いを明文化した ものと考えています。したがって、国に対しての要請は上げていません。
次に、扶養照会の文書についてのお尋ねです。生活保護制度では、その利用し得る資産や能力などを活用することを要件としていますが、扶養義務者の扶 養は、保護の前提となる要件とはなっていません。しかし、扶養できる可能性が高い親族がいる場合に、必要な調査を行い、扶養できる方には可能な範囲で援助 していただくことは、生活保護制度を適正に運用するうえで欠かせないものと考えています。新宿区の扶養照会文書では、「扶養できない場合でもその旨を御回 答ください」と記載していますが、その前段に、生活保護法による保護は、「親族ができる限りの援助をして、なお生活できない場合にその不足を補う」こと と、「可能な範囲の援助をお願いしたい」旨を記載しています。そのうえで、事情を御理解いただき、検討くださるようお願いしている内容の文書となっていま すので、現行の様式でご理解いただけるものと考えています。
次に、2法案を撤回するよう、国に要望書を出すことについてのお尋ねです。生活困窮者自立支援法については、詳細が明らかとなっていませんが、第2 のセーフティネットとして機能することに期待しています。生活困窮者自立支援法の自立相談支援事業では、生活困窮者からの相談に応じ、必要な情報の提供及 び助言を行うこととしています。相談の中で、本人が生活保護制度の利用を希望する場合や、相談員が生活保護を必要と判断した場合に、生活保護につないでい くことは、大切なことと考えています。生活保護法の改正については、就労自立を促進するとともに、不正受給対策を強化することで、信頼される生活保護制度 の維持に必要な改正と認識しています。2法案については、生活保護が必要な人には確実に保護を実施するという基本的な考え方が変更されるものではありませ ん。したがって、2法案の撤回を要望することは考えていません。
5、建築行政について伺います。
第 1に、中高層建築物に係わる紛争の予防と調整に関する条例(以下建築紛争予防条例)に基づく説明会の義務化についてです。南元町で計画されている地上7 階、地下1階のマンションは、4月30日に標識設置届けが出され、5月17日に1回目の住民説明会が行われて以降、住民が再度の説明会を要望しても業者は 説明会も開かない状態が続きました。5月31日住民が業者に質問書を出し、6月26日に業者から要望は受け入れられないという返事がきました。その後、7 月30日に建築確認がおりて工事が着工されました。そして、区のあっせんにより調停が2回行われ、現在も継続されています。また、馬場下町のマンション計 画では、各戸に資料を配付した時に住民が説明会を求めていましたが開催せず、いよいよ工事が始まる段階で数名の住民が再度強く要望し、ようやく説明会が行 われたのは建築確認後でした。そのため説明会は紛糾しましたが、業者は建築計画の変更は行いませんでした。
新宿区の建築紛争予防条例では、説明会について「説明会を開催する等の方法により」となっており、説明会を義務付けていません。そのため、先ほどの 事例のように住民に充分な説明がないまま確認申請を出したり、説明会をせずに工事に着工するなどトラブルになるケースがあります。
23区中3区が条例や要綱で説明会を義務付けています。特に港区では、条例施行規則で「建築計画の内容の周知方法は、説明会によるものとする」とし て、建物の高さと等しい水平距離つまり1Hの範囲内の隣接関係住民に対しては、標識設置から10日以内に説明会を開くことを義務付けています。また、欠席 者には説明会開催日の翌日以降かつ標識を設置した日から20日以内に個別説明を行い、留守の場合は2回訪問をすることも義務付けています。さらに高さの2 倍の水平距離、2Hの範囲内の近隣住民には「申し出があれば話し合う機会をもつことを努める」と定めています。標識設置から10日以内の説明会を義務付け ることは、建築確認申請前に説明会を実施することとなり、近隣との紛争を減らすことにつながります。港区の担当者に伺ったところ、「1対1では聞くことも 限られており、説明会を開くことで地域の景観などの問題が参加者全体のものになる」とのことでした。
そこで伺います。新宿区でも、港区のように説明会の義務付けを行うように条例、規則の改正を行うべきと考えますがいかがでしょうか。また、現行制度 でも住民が申し出れば説明会を開くことができることを建築計画の標識に明記するなど周知を徹底すべきと考えますがいかがでしょうか。
第2に、区役所各課の情報共有についてです。第3回定例会の決算特別委員会で取り上げた仮称ロイヤルパーク柏木の建築計画で、建築主である大和ハウ ス工業が、近隣住民への説明と異なる図面を区に提出していたことは住民と新宿区を欺く背信行為です。この事に対して区長が10月4日の決算特別委員会で 「抗議します」と表明し、同月21日付で大和ハウス社長宛に抗議書を送ったことについて、その迅速かつ適切な対応を高く評価するものです。その後大和ハウ ス工業は、東京本店長が区に謝罪に訪れ、11月15日の住民説明会では東京本店長が、謝罪し「工事着工ありきでなく、一からやり直したい」と表明し、住民 との話し合いが継続されています。
今回の問題は、新宿区の建築行政のあり方にも問題を投げかけました。大和ハウス工業から住宅課及び景観と地区計画課に、それぞれワンルームマンショ ン条例、景観条例に基づく図面が提出されましたが、住民説明会で配布された図面と違っていたことに同じフロアでありながら気がつかなかったことも決算特別 委員会で指摘しました。その後、再発防止の対策として9月から周知期間60日の建物等、10月からは、周知期間30日の建物のうち大規模な建物に供覧の対 象を拡大し、都市計画部内で情報の共有化が図られています。対象建物の2012年度の実績は、85件ですから年間90件弱のチェックが必要となります。
情報共有のための供覧を始めた迅速な対応は高く評価しますが、2度とこのようなことを起こさないためにも供覧だけでなく、建築調整課に情報を集中させチェックする体制を強化すべきではないでしょうか。
第3に、景観まちづくり審議会の審議対象についてです。景観条例では、その基本理念で良好な景観を区民の共通の財産として次代に引き継ぐことを謳っ ています。これまでは、景観まちづくり審議会でどのような建物を審議の対象とするか基準がなく、仮称ロイヤルパーク柏木のように182メートルもの横に長 いマンションについては、審議会での報告、審議の対象とはなりませんでした。
しかし、高さの問題とともに擁壁のような形状のマンションについても景観上影響が大きいのですから、報告、審議の対象とすべきではないでしょうか。この仮称ロイヤルパーク柏木についても直近の審議会で議題とすべきです。そして、少なくとも東京都が所管となるのべ面積10,000㎡以上の建物については、審議の対象とすべきと考えますがいかがでしょうか。
【答弁】
建築行政についてのお尋ねです。
はじめに、説明会の開催を義務付けるように建築紛争予防条例及び規則の改正を行うべき、とのことについてです。建築紛争予防条例では、近隣関係住民 に対する建築計画等の説明は、建築主が説明会又は個別説明等の方法により行うこととしています。また、建築主が個別説明を行う場合でも、近隣関係住民が説 明会の開催を求めた場合には、建築主は応じなければならないと規定しています。これは、繁華街や低層住宅地など多種多様な地域を持つ新宿区の特性を考慮 し、その地域にふさわしい説明方法を近隣関係住民自ら、選択することを可能にしたものです。今後は、今まで以上に適切、かつ充分な説明が行われるよう、そ のあり方について検討していきます。また、近隣関係住民の申し出により説明会が開催されることを周知徹底すべきとのことについては、これまでリーフレット やホームページで周知するとともに、近隣関係住民から問い合わせがあった際には、その旨をお知らせしてきました。今後は、建築計画のお知らせ標識に明記す ることも含め、より一層の周知を徹底する方法について検討していきます。
次に、建築調整課に情報を集中させチェック体制を強化すべきではないかとのお尋ねです。本年9月から、延べ面積が3000平方メートルを超えるなど 近隣への影響が危惧される建築計画については、都市計画部内で各課への届出書類を相互に供覧することとしました。この供覧では、関係各課での建築計画に関 する情報共有を図るとともに、建築調整課に情報を集中させています。また、供覧にあたっては、届出書類の内容を建築調整課を含む関係各課相互でチェックし ています。今後も情報の共有と集中、及び内容のチェックを徹底し、建築行政の適切な執行に務めていきます。
次に、新宿区景観まちづくり審議会に報告する建築物の基準についてのお尋ねです。
景観まちづくり審議会に報告を行う基準については、平成25年9月の審議会にて延べ面積3万㎡または高さ60mを超えるものを報告するべきとの意見 を頂きました。また、この基準を満たさない計画であっても地域性のあるものや景観上特別な配慮が必要なものについては報告するようにとの意見も頂いており ます。こうした意見を踏まえて、報告すべき建築物の基準の策定を進めているところです。また、仮称ロイヤルパークス柏木の建築計画については、景観にかか わる設計変更があると聞いていますので、変更に伴う景観協議の申請が提出された場合には、直近の審議会に報告したいと考えています。
6、次に、子ども・子育て支援新制度と待機児童解消について質問します。
2012年8月、社会保障・税一体改革の一環として、子ども子育て支援法、認定子ども園改正法、児童福祉法等関連法整備法からなる子ども・子育て関連三法が成立しました。新制度は、幼稚園、保育関係団体等の反対で、児童福祉法第24条第1項 の市区町村の保育実施義務が残り、総合子ども園法案も取り下げられ、認定子ども園法が改正されました。一方、同第2項では認定子ども園、幼稚園、小規模保 育、家庭的保育など、多種多様な施策・事業が明記され、利用者は直接利用契約を結ぶ事となり、市区町村の関与を適切に行わなければ、子どもや保護者に否定 的な影響を与えかねません。制度の詳細はこれから示されるとのことですが、現時点で以下質問するものです。
第1に、待機児童の解消についてです。
新制度でも区市町村の保育実施義務は免れません。増え続ける保育ニーズに的確に応え、待機児童を発生させないことは時代の要請であり、新制度への対 応が優先され、目の前の待機児童が放置されることは許されません。10月1日には新定義263人、旧定義で418人だった区内の待機児童は、11月1日現 在新定義286人、旧定義で454人となり、1ヶ月で新定義で23人、旧定義で36人増加しています。この間進めてきた緊急対策は評価しますが、このまま のスピードで増え続ければ、さらなる手だてを講じる必要が出てきます。区も地域によっては待機児童発生の可能性を認めていますが、緊急対策を進めている牛 込地域だけでなくそれ以外の地域で対策が追いつかないことが懸念されます。新栄保育園や旧中央図書館跡地の施設建設も時間がかかります。そこで区長にお伺 いします。来年4月までの申込予測と待機児童をどう見通しているのでしょうか、また落合・北新宿・戸塚地域でも認可保育園を早急に設置すべきと考えます が、御所見をお伺いします。
第2に、切れ目のない保育サービスを保障することについてです。
区は、第5期次世代育成協議会を本年7月から始動させ、新制度対応策と次期次世代育成支援計画起草の2つの部会を設けて議論を開始しました。ニーズ 調査にもいち早く取り組み、他自治体のリーディングケースになっていると伺っています。しかし、肝心要の国の方針提起が遅く、2015年の新制度の移行期 限に条例その他が間に合うかどうかが課題となっています。2013年4月 に内閣府に設置された子ども・子育て会議は、複雑な新制度を反映してか議論が錯綜し、まとまりません。混乱なく新制度に移行できるか、はなはだ疑問です。 そこで区長に伺います。国と地方自治体における今後のスケジュールと見通しをお聞かせ下さい。進行が遅れて次世代育成協議会の構成員に負担がかかったり、 区の職員が倒れないよう必要な人員を配置し、体制を整えるべきと考えますが、いかがでしょうか。特に心配されるのは、次期計画や条例制定が遅れて、サービ スの提供が途切れることです。そのような事態を回避するため、区長が先頭に立って国に必要な意見を述べるべきと考えますが、いかがですか。
第3に、新制度になっても保育水準を下げさせない事です。厚労省が2013年1月18日公表した「保育中の死亡事故当該施設における保育従事者数の うちの保育士数(有資格者率)」によると、昨年の認可外保育施設死亡事故12件のうち4件が無資格者だけの施設で起こっており、資格者配置基準などが子ど も達の安全にとって重要です。新制度では特に地域型保育で面積基準や資格基準の条件が緩和されることを現場で働く保育士のみなさん、保護者が心配していま す。詳細が固まっていない今だからこそ、国に対して基準の現行維持とそのための財政的保障を求めるべきと考えますが、区長の御所見を伺います。
第4に、要保育時間の認定システムの活用と待機児童数の把握についてです。
従来は、保育園入所希望者等を対象に家庭の状況が把握されてきましたが、今回の認定制度は、0~2歳は保育園入所希望者が3歳以上については全児童 が対象となり、新宿の子どもの保育環境についてどのようなニーズがあるかも含め全体像を明らかにできることは、利点といえます。そこで、区長に伺います。 認定については、つぶさに子ども達の状況を把握するとともに、現在待機児童として把握されている児童数については従来と同じく把握・公表するとともに、子 ども園、幼稚園に入所できているかも把握・公表し、認可保育園増設をはじめとした就学前施設の充実と子育て支援施策にいかすべきと考えますが、御所見を伺 います。
第5に、保護者の経済的負担についてです。保育の必要量を超えた保育時間の追加料金や行事の実費負担などオプション料金が発生し、保護者の負担が増 えることが予想されます。保育料の基礎となる公定価格はこれから示されますが、施設が不足する中で保護者には選択の余地がありません。新宿区が施設型給 付・地域型給付を含め全体の保育料など保護者負担に目配りし、関与できる仕組みを作るべきと考えますが、御所見を伺います。
【答弁】
子ども・子育て支援新制度と待機児童解消についてのお尋ねです。はじめに来年4月までの申込予測と待機児童の見通しについてです。平成24年の出生数は、前年と比べ約200人増加しています。また、子どもを持つ夫婦が共に仕事を持つという傾向も強まっています。そのため、来年4月までの申込は昨年度と比べて増加するものと見込んでいます。待機児童の見通しについては、今年度当初から緊急の待機児童解消対策に取り組んだ結果、来年4月までには従前からの計画と合わせて527名の受入れ枠拡大が実現する見込みです。しかしながら、保育ニーズが高まっていることなどから、待機児童数の見込みについては、予断を許さないと考えています。
次に、落合・北新宿・戸塚地域への認可保育園の整備についてです。待機児童の分析を通じて、箪笥町・榎町両特別出張所の地域以外にも、保育ニーズが 高まっている地域はあると考えています。そこで、今年度の緊急対策のひとつとして、東京スマート保育を活用した保育ルームを落合第一・戸塚両特別出張所の 地域で整備しました。
今後、どの地域に認可保育所を整備していくかについては、現在実施中のニーズ調査の集計結果や入園の申込状況なども勘案しながら、的確に判断してまいります。
次に、切れ目のない保育サービスについてのお尋ねです。はじめに、子ども・子育て支援新制度に関する今後のスケジュールについてです。国が定めるスケジュールでは、各自治体は平成26年3月までに事業見込量を算出し、同年9月頃までにその確保方策を定め、平成27年4月に新制度が施行される予定です。区は、就学前児童保護者及び小学生保護者に対するアンケート調査を本年8月 に実施し、集計作業を進めているところです。新制度に向けた事業見込量を算出するための資料が年内に国から提示され次第、速やかに対応してまいります。ま た、子ども・子育て支援法に規定される「子ども・子育て支援事業計画」の策定も含め、国の動向を注視しつつ、新制度の対応に向けた体制づくりに努めてまい ります。国への意見具申につきましては、特別区長会や全国市長会を通じて、関連する政省令等の速やかな公布や、財政負担・自治体の裁量範囲を広げることな ど、様々な要望、働きかけを行ってまいります。
次に新制度における保育水準についてのお尋ねです。子ども達の健やかな成長のためには、安全で安心できる保育環境がきちんと保障されることが基本で あると考えます。新制度における地域型保育給付については、区市町村が認可、確認、運営の各基準を定めることとされています。現在、そのもととなる基準案 について、国の子ども・子育て会議等において詳細が検討されているところです。区は、その議論を見極めながら、区の地域特性と保護者ニーズに沿った、より 安全で安心できる保育基準を検討してまいります。また、基準を維持するための財政的保障につきましては、全国市長会要望や国との意見交換会など、様々な機 会を捉えて国に要望してまいります。
次に、要保育時間の認定システムの活用と待機児童数の把握についてのお尋ねです。
新制度においては、保護者の申請に基づき保育の必要性の認定を行う仕組みになっています。認定に際しては、従来の入園申請と同様に、保護者とお子さ んの状況を十分に把握し、保育の必要性を適切に認定してまいります。また、待機児童数については、新制度においても保育を必要とする子どもの全ての施設・ 事業について区市町村が利用の調整を行うことになっています。したがって、区が利用調整の対象としている施設・事業についてはこれまでどおり、待機の状況 も公表する考えです。一方、子ども園の短時間・中時間利用児童及び幼稚園の児童については、保育を必要としない子として、従来より保護者が自由に施設を選 択し、入所しています。このことは新制度においても変更されることはなく、加えて、新制度に移行しない私立幼稚園に入園する場合などでは、全てのお子さん の入園状況を把握することは困難であると考えます。これまでと同様に、保育を必要とするお子さんの入所状況については、その結果を十分に分析し、認可保育 園増設をはじめとした就学前施設の充実と、子育て支援施策に活かしてまいります。
次に、保護者の経済的負担についてのお尋ねです。新制度における利用者負担については、国の基本制度案の中で、「現行制度の利用者負担の水準、利用 者の負担能力を勘案した応能負担を基本として定める」ことが示されています。現在、国は公定価格について検討を進めていますので、この中で利用者負担額に ついての基本的な考え方が明らかになってくる予定です。区としても保護者の負担が適正なものとなるよう、十分目配りを行う考えです。
7、次に、学校選択制について質問します。
学齢人口の増加や35人学級の進展により、選択できるという前提条件がなくなり選択制を見直し、廃止する自治体が増えています。
昨年の第2回定例会でも取り上げたように、杉並区は今年度から3年の経過期間を設けたうえで2016年度新入生から学校希望制度つまり学校選択制を なくし、通学区域からの入学を原則とすることに舵を切りました。その結果、小学校では、2012年度20.7%あった選択希望者の割合が、今年度は 18.0%ととなり、来年度は16.0%と減少しています。中学校は、それぞれ26.9%、29.8%、25.0%となっています。
板橋区でも、2004年度から採用してきた学校選択制を2016年度新入生から廃止し「通学区域内の学校を前提」とすることを決断しました。その理 由として、大規模マンションの建設で学齢人口が急増したことと35人学級導入で、通学区域内の児童・生徒で教室が埋まり、区域外の希望者を受け入れること ができなくなったことと、選択制の目的であった「特色のある学校」「開かれた学校」の推進がある程度実現したことを上げています。
杉並区や板橋区の選択制廃止の背景は、新宿区でもまったく同じことが言えます。区教育委員会は、35人以下学級の導入や未就学児童の増加に適切に対 応するとして、今年度の新入生から、選択できない小学校を指定し、抽選時の兄弟姉妹優先を廃止する取り扱いを実施しています。この決断は事実上学校選択制 が成り立たなくなっていることを区教委が認めたに等しく、それでも選択制に固執して矛盾を深めています。
10月の文教子ども家庭委員会に、来年の小学校入学対象者の学校別選択結果が発表されました。「選択できない小学校」が、市谷小、四谷小2校に落合 第一小が加わり3校になりました。選択希望者を全員受け入れられないために抽選をして当選者を決める小学校は、新たに淀橋第四小が加わって前年と同じ13 校でした。その内当選枠がゼロで補欠登録だけの学校が前年の5校から8校へと増え、当選枠がある5校中10人以上当選するのは2校だけで、あとの3校は2 名と1名で、前回からさらに硬直化が進んでいます。この程度の数は指定校変更のために必要なゆとりであり、選択制の余地が残されているとは言えません。
そこで質問ですが、教育委員会は、29校中16校で希望どおりの選択が許されない現状をどのように受け止め、この傾向が今後どのように推移していく と捉えているのかうかがいます。杉並区、板橋区は経過期間を設けて廃止の決断をしましたが、新宿区も前提が破綻している選択制にしがみついていないで廃止 の決断をするのは「今でしょう」。再度学校選択制の見直し、廃止を求め、教育委員会の見解をうかがいます。
また、杉並区や板橋区では選択制の目的であった「特色のある学校」「開かれた学校」が一定の成果が得られたことを選択制廃止の理由に上げていますが、新宿 区教育委員会も学校選択制の目的に「特色のある学校」「開かれた学校」を位置づけていますが、その到達と評価についてお聞かせ下さい。
【答弁】
学校選択制についてのお尋ねです。はじめに、小学校29校中16校で希望どおりの選択択ができない現状をどのように受け止めているのかとのお尋ねで す。小学校の学校選択制度については、通学区域制度を原則とした上で、隣接区の学校も選択することができる制度です。特定の学校に選択が集中した場合に は、受入れ人数に制限があることから抽選を前提としており、希望者全員を受け入れることができないこともあります。このような現状で、毎年入学した1年生 の保護者を対象に実施しているアンケートでは、約8割の保護者が制度について「あったほうがよい」「どちらかというとあったほうがよい」と回答しており、評価を得ているものと認識しています。
次に、この傾向が今後どのように推移していくと捉えているのかとのお尋ねです。未就学児童数は、通学区域ごとに増減の変動に差があるものの、今後数年間、全体としては増加傾向にあり、同様の傾向が続くものと認識しています。
次に、学校選択制度の見直し、廃止についてのお尋ねです。35人以下学級の導入などの教育環境の変化に対応するため、学識経験者、地域団体の代表者、保護者、学校長などを委員とする教育環境検討協議会を設置し、23年度に答申を受けました。この答申を踏まえ、教育委員会では、24年3月に学校選択制度を維持することを基本とし、一部見直しを行う基本方針を策定しました。当面は、この方針に基づき、学校選択制度を適切に運用してまいります。
次に、「特色のある学校」「開かれた学校」の到達と評価についてのお尋ねです。特色ある教育活動については、各学校で作成する「特色ある学校づくり 教育活動計画」等に沿って、計画的な学習活動を実施しています。これまでも各学校においては、防災キャンプや伝統文化の体験などが実施されています。この ことにより、学校と地域との連携が一層促進され、地域に「開かれた学校」づくりにつながっています。このような成果は、学校公開や特色ある教育活動を掲載 した学校案内冊子で紹介しており、学校選択制度に関する保護者アンケートでは、8割以上の保護者から学校を選択する上で「参考になった」との回答を得てい ます。今後も、より広く、より多くの方々に各学校における「特色のある教育活動」や「開かれた学校」づくりに向けての取組みについて、理解していただける よう努めてまいります。
2013.12.04 更新