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    2014年第2回定例会代表質問



    日本共産党区議団の近藤なつ子です。私は、2014年第2回定例会にあたり会派を代表して質問します。

     

    1、区長の政治姿勢について

    【質問】

    最初に、区長の政治姿勢について質問します。

     

    去る5月15日、安倍首相の私的諮問機関である「安保法制懇」が、集団的自衛権の行使を禁止して きた従来の政府解釈は「適当ではない」として、その容認を求める「報告書」を発表しました。集団的自衛権行使は、日本に対する武力攻撃がなくても、他国の ために武力を行使するということで、「海外での武力行使をしてはならない」という憲法上の歯止めを外すことになり、絶対に許されることではありません。し かも安倍首相は、一内閣の判断で憲法解釈を勝手に変え強行しようとしており、立憲主義の否定にほかなりません。

     

    区長は、ちょうど1年前の本会議で「憲法の三大原則である基本的人権の尊重、国民主権、平和主義 については、多くの国民に理解され定着していることから、これを今後も維持すべきであると考えています。また、憲法を尊重し、擁護することは公務員として の義務であり、憲法改正についても憲法の規定に基づいて行われることは当然のことと考えています」と答弁されています。この区長の立場で言うならば、集団 的自衛権行使容認や、解釈改憲については1人の政治家として反対の立場を明確にし、行動すべきと考えますがいかがですか。

     

    安倍政権の暴走ぶりは、平和の問題と同時に国民の命と安全に関わる原発の問題にも現れています。 東電福島第1原発の事故現場では、日々大量に出る高濃度汚染水に対し、専門家からも安全性に疑問が出され、原子力規制委員会もまだ認可していない凍土遮水 壁の設置工事が着工されるなど混乱を極めています。原発の再稼働にあたっては、その前提条件である原発事故時の住民の避難計画もつくれないまま突き進んで いることに原発周辺住民のみならず国民の怒りが広がっています。さらに安倍首相は、みずからトップセールスで原発輸出の先頭に立ち、トルコとアラブ首長国 連邦との「原子力協定」が国会で承認されました。しかし、5月21日、福井地方裁判所は「関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止め」の判決を出しまし た。判決は、「原発という経済活動の自由は、憲法上は人格権より劣位である」とし、日弁連も会長声明で「画期的な判決」と評価しています。区長はこの判決 の指摘についてはどのようにお考えかお聞かせください。そして、原発再稼働に反対の立場を明確にお示しいただきたいと思いますが、お聞かせください。

     

     

    【区長答弁】

    近藤議員のご質問にお答えします。

     

    区長の政治姿勢についてのお尋ねです。

     

    はじめに、集団的自衛権行使容認や解釈改憲についてです。

     

    憲法解釈の変更により集団的自衛権行使を可能にすることについては、国民の間で、様々な意見があ ることを承知しています。国の安全保障にかかる重大な方針変更については、政府が国民に対して、十分に説明責任を果たすとともに、広範な議論が喚起される ような状況を作っていくことが大切であると考えています。憲法解釈の変更についても、そうした国民の議論を踏まえたうえで、丁寧かつ慎重な対応を図ってほ しいと考えます。

     

    次に、大飯原発運転差し止め判決と原発再稼働に対する区の見解についてのお尋ねです。

     

    私は従前から原子力依存からの脱却が必要と考えており、区では、できる限りの省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの活用を図っていくことが大切と考えています。また、原発の再稼働については、最大限の安全確保を前提にエネルギー需給体制について充分な国民的議論が必要と考えています。今回の大飯原発の運転差し止めに関する判決については、判決が確定したものではないため、今後の裁判の推移や他の原発の動向、国のエネルギー政策等を見守っていきます。

     

     

     

    2、消費税増税の影響と生活・営業への支援について

    【質問】

    次に、消費税増税の影響と生活・営業への支援について質問します

     

    4月1日から消費税率が8%に引き上げられ、生活と営業に大きな影響が出ています。5月30日総務省統計局発表の消費者物価指数によれば、4月は前年同月 比で3.2%上昇しています。1月から3月までも1%台上昇していますが、やはり消費税増税が4月の物価を大きく押し上げていることが伺えます。また、同 日発表の総務省家計調査報告では、2人以上の勤労世帯の実収入は1世帯当たり46万3946円で、前年同月比でマイナス7.1%、これで7ヶ月連続の減少です。つまり、収入が減って物価が上がるという、踏んだり蹴ったりの状況です。当然、消費は冷え込み実質消費支出は-4.6%で中小業者の営業も大変だということが政府の調査からも明らかです。

     

    消費税増税の増収分は、すべて社会保障費に充てますと言いながら実態はその1割にすぎません。これまでもそうだったように消費税のあらかたが法人税減税分 の穴埋めにまわされることは、昨今の法人税減税の議論をみれば想像に難くありません。安倍内閣は、今年12月には、来年10月からの10%への増税を「最 終決断」するとし、消費税の連続増税への暴走につきすすんでいます。区長は、区民生活を防衛するために消費税の10%への増税にきっぱり反対すべきと考え ます。ご所見をうかがいます。

     

    こういうときこそ、区政が区民生活を防衛・応援する必要があるとの立場で、以下、質問します。

     

    第1に、就学援助についてです。現在、新宿区で就学援助を受けているのは、3月31日現在要保護、準要保護の合計で小学校1836人、22.88%。中学 生1072人、37.14%となっており、この5年間では、小学校で207人、2.59%、中学校で198人、7.44%と増え続けています。

     

    安倍政権は3年かけて生活保護の支給額を減らしている最中です。就学援助の対象は生活保護法を基準に決められ、新宿区は生活保護基準の1.2倍を準要保護 の対象にしています。保護費が削られて基準が下がれば、対象から外される人が出ます。今年度は従前通りの対応ですが、来年度以降も削減前の保護費を基準に すべきです。また、制度の趣旨からいえば、物価は上がっているのですから生活保護基準の1.2倍を1.3倍に引き上げるべきと思いますが、いかがですか。

     

    文部科学省は、消費税増税に伴い今年度の就学援助費の単価を増額しました。例えば中学校の学用品費は21,700円を22,320円に引き上げており、札 幌市はじめ多くの自治体で援助額を増やしました。しかし、新宿区は29,520円のまま据え置かれています。学用品費など定額で支給するものについては全 て4月に遡って増額すべきです。お答えください。

     

    2010年度から国の就学援助の支給費目に加わった中学校クラブ活動費は、23区中11区で支給していますが、残念ながら新宿区では支給していません。低 所得世帯の中学生は、スポーツから遠ざけられ、体力格差が生じても仕方がないと言うのでしょうか。新宿区もクラブ活動費を就学援助の対象費目に加えるべき です。お答えください。

     

    第2に、給食費についてです。新宿区は、消費税8%増税にあわせて4月から給食費を1食あたり7円から10円値上げしました。都内23区中、小学校が14 区、中学校は13区が値上げし、あとは据え置きと、区によって対応が分かれました。子育てをしている勤労世帯の収入が減少し、物価値上げで支出増のうえ に、給食費の値上げがさらに追い打ちをかけるようでは、少子化に歯止めをかけることはできません。私たちは消費税増税に反対していますが仮に今後10%に なっても給食費は値上げせず、区がその分を補填して質量を維持するよう強く求めますが、いかがですか。

     

    第3に、社会福祉施設の支援についてです。第1回定例会で、社会福祉施設に対して原油価格高騰の時と同様の支援を求めたのに対し、区長は国が介護報酬を改 定して消費税増税の影響が生じないようにしているから区独自の支援はしないと冷たい答弁でした。たしかに介護報酬は0.63%引き上げられ利用料も上がり ました。ある事業所では、デイサービスで月500円前後利用者負担が増加したそうですが、それで施設の増税に伴う支出増が補填されて影響がないと言える状 況ではありません。東京電力は平均的家庭の電気料金を5月から430円値上げし、東京ガスも245円値上げしました。水道料金も6月から4人世帯2ヶ月で 357円増、ガソリン代もこの半年で1リットル10円以上も値上がりするなど、水道光熱費は軒並み3%を超す大幅値上げになっています。居住用でない介護 施設は賃借料に消費税が上乗せされており、ある事業者は3900円負担が増えたそうです。「利用者さんからいただく食費は据え置き、質を維持するため持ち 出ししている」「送迎車は今まで以上にアイドリングストップに心がけている」など、介護事業者は涙ぐましい努力を余儀なくされているのです。

     

    私どもが聞いたところでは介護報酬がアップしても施設の負担は増えているとのお答えばかりでしたが、果たして区長が言うように負担が生じていないのかどうか、きちんと影響調査をすべきです。そして、影響が大きい場合は必要な支援をすべきと考えますが、いかがですか。

     

    第4に、商店街及び中小商工業者への支援についてです。昨年の第1回定例会ではインターネット販売での支援について質問し個店に対する支援やネットショッ プモールの開設などを提案したのに対して、区長は他の自治体の進捗状況や課題なども踏まえ検討すると答弁されました。検討はどこまで進んでいますか。ま た、日本共産党区議団が昨年12月に新宿区商店会連合会と懇談した時にもITプロジェクトを立ち上げたと伺いました。商店街支援策としてホームページ更新 援助やネットショップなどのインターネット活用に踏み切るべきと考えます。いかがでしょうか。

     

    今、全国的に広がっている街コン、街バル、夜のオリエンテーリング(夜オリ)は、商店街、個人商店、飲食店を応援する大事な企画です。埼玉県の商業・サー ビス産業支援課では、県のホームページに街バルなどの企画を掲載し支援をしています。北区も夜オリのチラシを区の施設で配布しています。新宿区も、商店街 等が主催する夜オリや街バルなどの企画を区報で紹介したり、チラシ配布に協力したりするとともに、にぎわいと魅力あふれる商店街支援事業として助成金を使 えるようにし応援してはいかがですか。

     

    学校給食の食材を区内業者から購入することも中小業者支援につながります。毎年、農水省が行っている購入先の調査では、青果や豆腐は区内業者が大半です が、肉、魚、乾物はほとんど他区の業者から購入しています。区内で食材の地産地消は無理ですが、地元業者から仕入れることで産業活性化をはかることは大事 な視点ではないでしょうか。区内の生鮮三品特販組合、米穀小売業組合と話し合い、各学校の担当者に地元の商店から食材を仕入れるよう働きかけるなど、区が 調整役を果たすべきと考えます。以上、答弁願います。

     

     

    【区長答弁】

    消費税増税の影響と生活・営業への支援についてのお尋ねです

     

    まず、来年10月に予定されている消費税増税に反対を表明すべきとのご指摘についてです。消費税率の引上げは、持続的な社会保障制度を構築し、その安定財源を確保する観点から、避けられない課題と認識しており、現時点で反対を表明する考えはありません。

     

    私としては、消費税率引上げによる景気への下振れリスクを回避しつつ、景気回復の足取りを確かなものとすること、また、低所得者に与える負担の影響に対する、適切な配慮が必要であると考えています。

     

    【教育長答弁】

    教育委員会へのご質問にお答えします。

     

    まず、就学援助対象者である準要保護者の所得基準額についてのお尋ねです。

     

    26年度の所得基準については、生活保護基準の引き下げが行われる前の基準額を基に実施しました。このことにより、就学援助の対象者については、生活保護基準の切り下げによる影響は解消されたものと考えています。

     

    このため、来年度の準要保護者の所得基準額を、生活保護基準の1.3倍に拡大することは考えていませんが、今後の就学援助の対象については、現行の基準を 基に、景気の動向や社会状況などを踏まえて検討していきます。次に今年度の就学援助事業における学用品費の増額及び遡り支給についてのお尋ねです。就学援 助での学用品費は、就学に際しての学用品等購入経費を援助するため、定額により支給しています。年度当初決定した単価は改定後の文部科学省の単価を上回っ ており、年度途中での単価増及び遡り支給は考えていません。

     

    また、中学校クラブ活動費については、これまでも大会等への参加経費やブラスバンドの楽器の更新 など、運動部や文化部の活動に公費を支出することで、活動の環境整備等を支援しています。今後も、クラブ活動の現状に即し、より効果・効率的な支出により 支援をおこなっていきます。

     

    次に、給食費についてのお尋ねです。

     

    新宿区では、この4月から学校給食費について消費税引き上げ相当分の値上げをいたしました。これ は、学校給食の提供に要する経費のうち、保護者には食材料費だけを負担していただいていますが、食材の購入は消費税の課税対象となるため、これまでと同じ 水準の栄養量を満たした、おいしい給食を提供していくためには、保護者に消費税引き上げ相当額の負担増をお願いする必要があると考えたためです。従いまし て、今後消費税が10%へ引き上げられることが決定した場合にも、引き上げ相当額を保護者に負担いただく方向で検討してまいります。

     

    また、学校給食費の負担増に対する公費による補填につきましては、消費税が消費一般に広く公平に負担を求める制度であることから、実施する考えはありません。なお、経済的に学校給食費を支払うことが困難な保護者には、これまでどおり就学援助で対応してまいります。

     

    【区長答弁】

    次に、社会福祉施設への支援についてのお尋ねです。

     

    介護保険の報酬改定は、国の社会保障審議会介護給付費分科会において、「平成25年 度介護事業経営概況調査」の結果等に基づいた議論を経て実施されたものです。区としては、サービス種別ごとに報酬改定を行うなど、事業所の実情に沿った適 切な対応を行っていると認識しています。したがって、影響調査や特別な支援は考えておりません。今後も、引き続き介護サービス事業者協議会等を通じて、現 場の声の把握に努めてまいります。

     

    商店街及び中小商工業者への支援についてのお尋ねです。

     

    始めに、商店街のインターネット販売の検討状況についてですが、ご指摘のように、新宿区商店会連 合会では、本年5月にITプロジェクトを立ち上げ、IT化の検討を進めているところです。その第一歩として、インターネット販売を視野に入れ、誰もが閲覧 したくなるような魅力あふれるホームページへ本年度中にリニューアルします。なお、他区におけるインターネット販売の支援事例が少ないなか、クレジット決 済や商品の発送業務の事務負担の増加など、克服すべき課題があると認識しています。今後も様々な支援策を講じ、ホームページの充実を始め、商店会のIT化 の推進を支援していきます。

     

    次に、商店街等が主催する、いわゆる街バルや夜のオリエンテーリングなどの企画を区報で紹介する などの協力と、にぎわいと魅力あふれる商店街支援事業として助成金を使えるようにしてはどうかとのお尋ねです。現在、全国で広がりを見せている街バルなど の企画は、区内商店会でも検討が進められており、今年度商店会で補助金を活用して実施する予定です。区としても、実現に向けて商店会サポーターを派遣する など、側面的な支援を行うとともに、補助金を活用した企画事業を広く周知していきます。今後、さらに賑わいと魅力あふれる商店会の実現に向けて、引き続き 支援していきます。

     

    【教育長答弁】

    次に、学校給食に おける食材の区内業者からの購入についてのお尋ねです。ご指摘のように、学校給食の食材を区内業者から仕入れることは産業振興の視点から大事なことと考え ています。納入条件等で対応できる業者からは現在でも納入をしていただいています。しかし、残念ながら廃業等もあり、区内業者からの納入は進んでいない状 況にあります。今後も、教育委員会としましては、産業振興課から条件に合う区内業者の情報を得て、学校現場に提供を行うなど、利用を増やす働きかけを行っ ていきます。

     

    【区長答弁】

    各学校の担当者に対する区内業者からの仕入れの働きかけなど、区の調整役についてのご提案です。

     

    各学校の食材仕入れ先は、現状では、個店が独自に交渉して注文を受けており、生鮮三品のうち青果 においては、8割を超える学校が区内事業者から購入しています。区としては、今後、教育委員会と、より一層連携を強化し、学校給食の仕入れの条件に合う事 業者情報の提供を行うなど、区内業者の利用促進を図ってまいります。

     

     

     

    3、子ども・子育て支援新制度と待機児童解消について

    【質問】

    次に、子ども・子育て支援新制度と待機児童解消について質問します。

     

    2012年に成立した子ども・子育て関連3法を受け、来年度からスタートする子ども・子育て支援 新制度の準備が各自治体で進められています。新宿区は、次期「次世代育成支援計画」と共に、「子ども・子育て支援事業計画」の策定に向け、次世代育成協議 会で検討を行っています。以下質問します。

     

    第1に、新制度に向けた準備状況です。

     

    新制度関連の政省令は3月までに出されることになっていましたが、4月以降にずれ込んだため、地 方自治体の準備の時間があまりにも少なく、そもそも新制度に向けた事務作業も膨大で、新制度の拙速な実施の中止を求める意見も上がっています。新宿区の準 備の状況はいかがですか。体制的に十分でなければ年度途中でも人員を増やすべきですし、十分な準備ができない状況であれば、新制度移行の中止を国に申し入 れるべきです。いかがですか。

     

    第2に、財源についてです。

     

    政府は、新制度を施行するためには、「量の拡大」と「質の改善」合わせて約1兆1千億円必要とし ていますが、確保できている財源は消費税増税分からの7千億円だけであり、当初予定されていた保育士の処遇改善が削られるなど、特に「質の改善」は予定の 半分以下に大きく圧縮されました。5月26日、厚生労働省は、新制度で保育所や幼稚園等の事業者に支払われる「公定価格」の仮単価を国の子ども子育て会議 に示しました。定員などが平均的な幼稚園、保育所、認定子ども園等はすべての加算がついた場合、現在より1割程度増収になる見通しです。しかし、都内の保 育所は、ゼロ歳児保育のための看護師配置や長時間保育のための正規職員の配置など、低すぎる国の基準を補う独自の上乗せ制度があります。市町村には交付 金、23区では都区財調の基準財政需要額に「児童保育委託事業費」や「区立保育所管理運営費」などが入っています。また、民間事業者へのサービス推進費補 助もあります。公定価格の単価が多少引き上げられても、都の単価に及ばない場合、国から都に対し、上乗せ制度の縮小廃止の圧力がかかることが懸念されてい ます。この点について都議会で大山とも子都議が質問したところ、都は「子ども・子育て支援新制度における給付の水準や内容につきましては、現在、国の子ど も・子育て会議で議論されておりまして、都の施策についてはこの結果をふまえて検討する必要があります。なお、都が必要に応じて区市町村に対する独自施策 を行うことは制度的に可能でございます。」と答弁しています。新宿区として、「量の拡大」と「質の改善」を確実に実行するための財源確保が求められます。 国に対し消費税増税に頼らず財源を確保し、公定価格単価のさらなる引き上げを要求すると共に、都に対してはこれまでの保育水準を維持し、さらに拡充するた めの独自の上乗せ制度の継続を求めるべきと考えますがいかがですか。

     

    第3に、保護者負担についてです。

     

    厚労省は公定価格の仮単価と併せて利用者の負担額の上限についても示し、概ね現行水準に据え置く 内容です。しかし、新制度では保育料以外の実費および上乗せ徴収は原則自由です。施設が英語や体育教室などの特別な保育を実施した場合、これらの実費を負 担できる家庭は利用できますが、そうでない家庭は子どもに習わせられないなど、所得格差が保育格差となる仕組みです。すべての子どもに平等な保育を保障す る観点から保育料以外の徴収は行うべきではありません。新宿区の施設は当然ですが、民間施設に対しても保育料以外の徴収を原則行わないよう区として求める べきです。いかがですか。

     

    第4に、認定についてです。

     

    新制度では、保護者は教育・保育施設を利用するときは区市町村に認定の申請を行い、認定証の交付を受けます。国が示す保育の必要性の認定要件をみると、現行の保育に欠ける要件に比べ利用が制限されかねない懸念があります。

     

    1つは障害児です。現在は多くの自治体では保護者が就労していない障害児であっても集団保育が必 要と認められるなどの場合には保育要件になりますが、新制度では「満3歳未満の障害児については就労・求職等の事由により・・認定」となっており、障害児 の保育所入所が保証されるのか不透明です。

     

    2つめは保護者が育児休業中の場合です。現在休業開始前に既に保育所に入所している子どもについ ては利用継続できますが、新制度では子どもが年長児であることや保護者の健康状態や発達上環境の変化が望ましくない等の理由がなければ基本はいったん退所 です。 保育の必要性の認定については今後決定される省令で細部か明らかになりますが、区として国に対し現在の保育保障が後退しないよう求めるべきです。 いかがでしょうか。

     

    第5に、待機児童解消についてです。

     

    「新宿区次世代育成支援に関する調査報告書」、いわゆるニーズ調査がようやくまとまり、5月の子ども家庭文教委員会に報告されました。育児休業の取得状況 で「希望より早く職場復帰した理由」として1位が「希望する保育所に入るため」58.6%、2位「ゼロ歳児で入園しないと入園が難しいと思った」 53.1%であり、「希望より遅く復帰した理由」の1位は「希望する保育所に入れなかったため」75.0%とダントツであり、ここにも「保活」の厳しい現 状が現れています。また「定期的な保育・教育事業を利用していない」方のうち「利用したいが利用できない」方が「利用したい事業」の1位は認可保育園 58.5%であり、2位以下の子ども園の長時間保育38.2%、認証保育所と子ども園の短中時間保育の同率22.0%を大きく上回っています。待機児童が 一向に減らない事態の中で認可保育園が求められていることは明らかです。子ども・子育て支援事業計画では、待機児童解消のためには認可保育園の増設こそ位 置づけるべきです、いかがですか。

     

    今年4月1日の待機児童数は新定義で152人、昨年度比-24人、旧定義で348人、昨年度 比+15人です。4つの認可保育園、3つの保育ルームを新設させるなどして今年4月には定数を528人分増やしましたが、待機児童数を大幅に減らすことは できませんでした。このことに対する区長の認識をお答えください。

     

    今年度の当初予算で認可保育園を2園、さらに緊急対策として、新宿せいが保育園の定数拡大と2つ の認可保育園を整備することは評価します。しかし、この5園と従来の計画分をあわせても568人分ですから、昨年度と同程度の規模では待機児童は解消しま せん。今年度中に認可保育園をさらに増設することが必要です、いかがですか。特に現在待機児童の多いと思われる、高田馬場、落合、北新宿の地域で重点的に 増設すべきと考えますが区長の認識はいかがでしょうか。

     

    現在、新宿区次世代育成支援協議会の子ども・子育て支援事業計画専門部会において、 2015~2017年度の保育サービスの見込み量を検討されていますが、早急に見込み量を決定し、それに見合う認可保育園増設計画を策定すべきです。国は 2017年度末の待機児童ゼロを目指していますが、新宿区は来年2015年4月の待機児童ゼロを目指して頂きたいと思います。区長の決意をお聞かせくださ い。

     

    待機児童対策の最後に、今現在保育園に入れない子どもたちに対する緊急対策についてです。4月ス タートした4つの認可保育園では、3~5歳児の入所はほとんどなく保育室が空いています。その保育室を活用して定期保育事業を拡大するなど、緊急的な対応 を行ってはいかがでしょうか。また、休園中の戸山幼稚園をはじめ区有施設等を活用して、既存保育園の分園や保育ルーム設置の検討も行うべきです。いかがで しょうか。

     

    第6に、子ども園についてです。

     

    国は新制度のもとで保育所・幼稚園の認定子ども園への移行を進めようとしていました。しかし、当 初移行促進のために公定価格を他施設より高く設定することが検討されていましたが、格差がでないよう求める意見が相次ぎ、質改善後の公定価格の増加率は他 施設と同程度となりました。区はこれまで区立保育園と区立幼稚園の全園子ども園化を進めてきましたが、新制度移行後も財政的なメリットはそれほどなく、待 機児童解消には直接結びつかない子ども園化はこれ以上行うべきではないと考えますが、区長のご見解をお聞かせください。以上、答弁を求めます。

     

     

    【区長答弁】

    子ども・子育て支援新制度と待機児童解消についてのお尋ねです。

     

    初めに、新制度に向けた準備状況についてです。

     

    区では、予定どおり27年4月に施行されるという想定のもと、準備を進めてきており、この4月には組織改正を行い、担当の副参事も置きました。現在、公布された府省令等に基づく具体的な準備段階に入っており、引き続き新制度への対応を着実に進めていきます。

     

    次に、財源についてのお尋ねです。

     

    これまでも区は、国に対して、認可外保育施設への財政支援のほか、公定価格については、都市部の 地価・人件費等を考慮した地域係数の設定などを要望してきました。都に対しても、同様の働きかけを行っています。今後も機会をとらえて、国や都へ財政措置 等を要望していく考えです。

     

    次に、保護者負担についてです。

     

    新制度では、教育・保育施設が、いわゆる実費徴収や上乗せ徴収を一定の要件のもとで行うことが可能となっており、区が施設に対して、一律にこれらの徴収を しないよう求めることはできません。ただし、区としては、特色ある教育・保育の展開が保育格差につながらないよう、運営指導を適切に行っていきます。

     

    次に、認定についてのお尋ねです。

     

    障害児の入所については、現在も、保護者の就労等により保育が必要であることを要件としています。また、育児休業開始前に、既に入所している子どもの継続 入所についても、一定の要件のもとで認められているもので、区は、個々の家庭の状況を踏まえ、子どもの発達環境に配慮した対応を行っています。これらの取 扱いは、現在、国における議論で示されている対応方針と同じであり、区としても、引き続き適切に対応していきます。

     

    次に、待機児童解消についてのお尋ねです。

     

    初めに、子ども・子育て支援事業計画に認可保育園の増設を位置付けることについてです。子ども・子育て支援事業計画では、昨年実施した次世代育成支援に関 する調査の集計結果や、直近の待機児童の状況、自治創造研究所による人口推計等を分析し、事業の見込量と確保方策を定めます。計画作成にあたっては、地域 ごと、年齢ごとの利用状況や待機の状況を十分に踏まえながら、認可保育園も含めた多様な保育サービスを的確に位置付けていきます。

     

    次に、待機児童数を大幅に減らすことができなかったことに対する認識と、今年度中に認可保育園をさらに増設することについてです。今年4月の待機児童数152名 は依然として厳しい数字であると認識しています。そこで、昨年に引き続き緊急対策に着手したところです。このたびの緊急対策における重点整備地域は、待機 児童の状況が特に深刻な落合地域と、昨年同様、箪笥町・榎町の地域としているところですが、近隣地区であっても待機児童解消に効果があると判断される場合 は柔軟に対応すべきものと考えています。

     

    次に、待機児童解消の目標年次についてです。

     

    区は一貫して待機児童の解消を重点施策に掲げ、毎年度の予算編成を行ってきました。昨年度と今年度の緊急対策も翌年4月 の待機児童ゼロを目指して実施するものです。しかしながら、新宿区では子どもの数が増え続けていることや子育て世帯の共働き率の増加などにより、今後ます ます、保育需要は高まるものと考えています。待機児童ゼロという目標達成のためには、真に必要な場所に必要なサービスを的確かつ効率的に提供することが重 要です。今年度子ども・子育て支援事業計画を作成するにあたっては、次世代育成協議会の専門部会や次世代育成支援推進本部会議等でこうしたことを十分に議 論・検討し、1日でも早い待機児童の解消が図れるよう取り組んでまいります。

     

    4月に開所した4つの保育園の空き定員については一時保育事業に活用しているところです。また、幼稚園や区有施設の活用については、新制度の設備・運営基準を踏まえ、保育ルーム等の設置も視野に入れながら検討していきます。

     

    次に、子ども園についてのお尋ねです。

     

    区はこれまでに、区立・私立の子ども園の整備に取り組み、今年の4月1日時点で、区立子ども園10所、私立子ども園2所 を開設しています。子ども園は、保護者の就労の有無に関わらず、その成長と発達に応じた保育・教育を一体的に行うことで多様な保育ニーズに対応していると 考えています。今後は、地域の待機児童数や保護者のニーズを踏まえながら、子ども・子育て支援事業計画における確保方策の一つとして、子ども園の整備につ いて検討してまいります。

     

    民間事業者が運営する保育園、学童クラブの質の向上についてのお尋ねです。

     

    はじめに、私立認可保育園などへの検査・指導を行う範囲の拡大と現場を指導する巡回指導員の充実についてです。保育内容についての指導権限は都にありますが、区は保育所運営費の支弁者として、適正な保育の実施について指導監督する責任があります。

     

    今年度は、そのための指導をさらに強化するため、保育園子ども園課に指導係を設置しました。園長経験のある保育士ОBや栄養士を含む複数の職員が、私立認可保育園や認証保育所、保育ルームなどに対して巡回指導を年2回行っています。また、現行の都の権限は、児童福祉法に基づく児童相談所設置市の事務と位置付けられており、児童相談所移管とともに都から権限移譲されるものです。

     

    次に、保育士などの処遇に対する指導についてのお尋ねです。

     

    私立保育園の職員給与等については、各事業者の給与規定に基づき適切に支給されるべきものであり、区が給与額について直接指導することはできません。しか し、保育の質を高めるためにも、適正な賃金水準を確保することは重要と認識しています。このため、区が指導を行う際に、東京都社会福祉協議会の参考給料表 を活用して、給与の改善による保育士などの確保を事業者に求めていきます。また、昨年度国や都に対して、保育士等処遇改善臨時特例事業を継続するよう要望 しました。今後も新制度における保育士などの人件費補助の増額については、機会を捉えて国や都へ要望してまいります。

     

    次に、区直営の保育園・学童クラブを維持することについてのお尋ねです。

     

    区がこれまで進めてきた、老朽化した区立保育園建替えの際の私立保育園・私立子ども園化は、待機児童の解消や多様な保育ニーズへの対応に対して、大きな効 果を発揮しています。学童クラブについては、延長利用希望の声に応えるため、全学童クラブで児童指導業務委託を導入することとしたものです。しかし、保育 や児童の健全育成においては、区職員が幅広い経験を重ねることができる現場を持っていることが重要と考えています。ご指摘の中井児童館の指定管理者制度導 入や、高田馬場第二及び戸塚第二小学校内学童クラブの業務委託化は、第二次実行計画に沿って着実に進めてまいります。

     

     

     

    4、民間事業者が運営する保育園、学童クラブの質の向上について

    【質問】

    次に、民間事業者が運営する保育園、学童クラブの質の向上について質問します。

     

    新宿区第2次実行計画では、区立児童館への指定管理者制度導入や学童クラブの児童指導業務の民間 委託により、すべての学童クラブを民間にゆだねようとしています。また、認可保育園についても区立保育園建て替えの際に富久町保育園で指定管理者制度を導 入した他はすべて民設民営に切り替え、都営住宅の一部に設置されていた区立幼稚園も民間の子ども園となりました。そして、新たに増設する認可保育園は、物 件も含め民間事業者からの提案を受ける公募方式です。現在、保育施設74所のうち52所が民間事業者の運営となり、学童クラブは26所のうち23所が民間 です。

     

    私ども区議団は、保育・学童保育事業への株式会社参入には当初から反対をしてきましたが、民間が運営している施設については補助金が支払われている以上、区として質の向上のための指導をすることが必要と考えます。

     

    社会福祉法人については、いわゆる「地域主権改革」に伴う基礎自治体への権限委譲により、これま で東京都が所管してきた社会福祉法人のうち、主たる事業所が区にあってその行う業務が当該区を越えない法人の設立認可等及び指導検査の事務について、昨年 度より区が社会福祉法に基づく法人本部の指導検査を行うこととなりました。社会福祉法に基づいて新宿区は、昨年度16法人の実地指導検査を行い、うち文書 指摘事項があったのが12法人でした。ある法人は2007年度から繰り返し都から不適正な運用を指摘され、保育所運営費の本部経理への付け替えや、施設 長・事務長の給与が「きわめて多額」であると、異例の是正を求められていました。「きわめて多額な給与」は、是正前で施設長・事務長の2人で約5000万 円だったとのことで、新卒の保育士なら10人以上が雇える金額です。限られた人件費が一部の人に偏って使われれば当然、保育士など他の職員の処遇にしわ寄 せが行くと想像できますが、そこは最低賃金を割らない限り指導されることはありません。

     

    一方、児童福祉法に基づく保育施設への指導検査は今も都の所管です。区としては補助金の支給対象 として実地指導を行っていますが、区には都のような強力な権限はありません。保育施設の指導検査を行う東京都福祉保健局指導監査部の担当係は、都全域の保 育施設をたった18人で担当し、3人一組6班で、一班あたり約200もの施設を抱えています。そのため実際には4年に1回程度しか検査できず、充分な指導 検査が行われているとは言い難い実態です。また、学童クラブについて区は、指定管理者や委託事業者に対し5年の契約期間の間はなるべく人が変わらないよう 正規職員の退職や異動については報告・相談を課しているにもかかわらず、昨年度から指定管理者制度が導入された東五軒町の地域交流館と児童館では、全体館 長が1年弱の間に2度も変わり現在3人目、その他の職員もメンタルその他の理由で年度途中での退職が続出するという異常な事態となっています。こうした事 については実態を早期に把握し、直ちに改善をはかるための指導が必要であると同時に、根本的な改善が求められています。

     

    質問の第1は、区が指導検査を行う範囲の拡大です。社会福祉法人の指導検査が区に移管されたのは 経理などの運営部分のみで、保育園の保育内容については今も都の所管です。しかし、前述のように都ではきめ細かな指導検査が期待できないことから、区内の 保育園については認可保育園も認証保育所など認可外の施設も、区が強い権限を持って直接実施できるよう都の権限を区に移譲することと、指導検査のための人 員や経費の財政措置を、国や都に求めるべきです。いかがでしょうか。

     

    質問の第2は、保育内容について現場を指導する巡回指導員の充実です。世田谷区では、10数年前 から保育の質の向上への取り組みとして専門職員の巡回指導相談員がチームを組んで、私立認可保育園・認証保育所・保育ママその他保育施設の現場に出向いて 巡回指導を行っています。指導員の体制は現在、保育士7人、看護師4人、栄養士1人の計12人で、2人1チームで認可園は年1回程度、認可外は年3~4回 を抜き打ちで実施しており、来年度に向けて認可園の増設や株式会社の参入などに対応するため、巡回指導相談員を増員する予定と聞いています。新宿区も認証 保育所の年2回に加え、今年度から私立認可園も年2回の巡回指導を始めていますが、世田谷区のように保育士以外に看護師などの専門職員もチームに加えた り、抜き打ちの巡回指導を行うなど、更に強化すべきですがいかがでしょうか。

     

    質問の第3は、保育士などの処遇については基準を持って指導することです。民間委託の学童クラブ で働く指導員等の給与については区として把握することが可能で、現在は平均年収450万円弱と聞いています。しかし、ある指定管理者の施設長は50代の人 でも基本給がわずか7万円余で、手当を含めても月の手取りが20数万円にしかならないという実態があり、最低賃金には抵触しないとしても適正な給与水準と 言えるのか疑問です。また、都が昨年保育士に行ったアンケートでも、約2割が退職を考え、辞めたい理由のトップは「給料が安い」65.1%で あることを見ても、保育士の定着率を高め、保育の質を高めて行くには適正な賃金水準の確保は避けて通れない課題です。保育士も指導員も、賃金台帳の提出な ど、賃金の実態を正確に把握する仕組みとあわせて、給与も一定水準が確保されるよう指導すべきです。2000年までは都の公私格差是正事業によって社会福 祉法人などの人件費についても都職員の給与に準じた水準を維持するための助成制度がありました。東京都社会福祉協議会が毎年改定している参考給料表は、公 私格差是正事業が無くなり社会福祉法人が独自の給料表を作成することとなった時に、都職員の約96%という実態を参考として示され、今も都内の法人が活用 しているものです。賃金については最低賃金だけではなく、例えばこの東社協参考給料表を参考に指導すべきと考えますがいかがですか。同時に、国や都に対し て新たな制度の中で民間事業者に対する人件費補助を増額するよう要望すべきと考えますが、お答えください。

     

    質問の第4は、区直営の保育園・学童クラブを維持することです。保育内容について指導を確実に 行っていくためには、指導する側の区職員に高いスキルが求められます。現在も、子ども総合センターの指導員経験者が学童クラブを巡回指導し、私立認可保育 園や認証保育所には区立保育園の園長経験者などが巡回指導を行っていますが、巡回の頻度など充分とは言えません。また、現場経験の長い熟達した専門家の育 成は一朝一夕では不可能であり、巡回指導員の人材確保のためにも今ある区直営の保育園や学童クラブは残していくべきです。従って、今定例会に提案されてい る中井児童館の指定管理者制度導入と高田馬場第2児童館と戸塚第2小学校内学童クラブの児童指導業務の民間委託化はやめるべきです。区の保育士や指導員経 験者は子ども家庭支援センターの相談員になるケースも多く、児童相談センターの区移管も考えればなおのこと重要です。区長のご所見をお聞かせ下さい。

     

    【区長答弁】

    民間事業者が運営する保育園、学童クラブの質の向上についてのお尋ねです。

     

    はじめに、私立認可保育園などへの検査・指導を行う範囲の拡大と現場を指導する巡回指導員の充実についてです。保育内容についての指導権限は都にありますが、区は保育所運営費の支弁者として、適正な保育の実施について指導監督する責任があります。

     

    今年度は、そのための指導をさらに強化するため、保育園子ども園課に指導係を設置しました。園長経験のある保育士ОBや栄養士を含む複数の職員が、私立認可保育園や認証保育所、保育ルームなどに対して巡回指導を年2回行っています。また、現行の都の権限は、児童福祉法に基づく児童相談所設置市の事務と位置付けられており、児童相談所移管とともに都から権限移譲されるものです。

     

    次に、保育士などの処遇に対する指導についてのお尋ねです。

     

    私立保育園の職員給与等については、各事業者の給与規定に基づき適切に支給されるべきものであり、区が給与額について直接指導することはできません。しか し、保育の質を高めるためにも、適正な賃金水準を確保することは重要と認識しています。このため、区が指導を行う際に、東京都社会福祉協議会の参考給料表 を活用して、給与の改善による保育士などの確保を事業者に求めていきます。また、昨年度国や都に対して、保育士等処遇改善臨時特例事業を継続するよう要望 しました。今後も新制度における保育士などの人件費補助の増額については、機会を捉えて国や都へ要望してまいります。

     

    次に、区直営の保育園・学童クラブを維持することについてのお尋ねです。

     

    区がこれまで進めてきた、老朽化した区立保育園建替えの際の私立保育園・私立子ども園化は、待機児童の解消や多様な保育ニーズへの対応に対して、大きな効 果を発揮しています。学童クラブについては、延長利用希望の声に応えるため、全学童クラブで児童指導業務委託を導入することとしたものです。しかし、保育 や児童の健全育成においては、区職員が幅広い経験を重ねることができる現場を持っていることが重要と考えています。ご指摘の中井児童館の指定管理者制度導 入や、高田馬場第二及び戸塚第二小学校内学童クラブの業務委託化は、第二次実行計画に沿って着実に進めてまいります。

     

     

     

    5、マンション支援策について

    【質問】

    次に、マンションへの支援策について質問します。

     

    1962年の「建物の区分所有等に関する法律」制定によりマンションの法的位置づけが明確になってマンション開発が始まってから半世紀が経過しました。オ リンピック、バブル期などに飛躍的に増加しましたが、都心回帰を促進する政策の下、今もマンションは増え続けています。区が分譲マンション実態調査を行っ た2008年度当時、区内の分譲マンションは1331棟、戸数が約7万戸、その他賃貸などのマンションも2822棟あり、マンション居住者への区の支援が 求められています。新宿区住宅マスタープランでは、分譲マンション等の維持管理および再生への支援として、1、管理組合等への支援、2、分譲マンションの 管理状況等の把握、3、ワンルームマンション等への的確な対応に取り組むとしています。国も都もこの間実態調査を実施していますが、2008年度とりまと めた区の分譲マンション実態調査報告書では、30戸以下のマンションが全体の39.5%と規模の小さいマンションが多いことや賃貸率が44.9%と高いこ とが新宿区の特徴とされ、居住者の高齢化、管理組合の運営や長期修繕計画、大規模修繕、そして東日本大震災以降は老朽化した建物の耐震化や建て替えなど 様々な課題が浮かび上がっています。

     

    質問の第1は、AED、エレベーター用防災用品キャビネットなど、安全・安心の設備を分譲マンションに整えるための支援についてです。

     

    区民の多くが住むマンションにAEDがあれば、居住者の高齢化への対応策として有効です。千代田 区では、地域の安全・安心のため、「管理規約が整備されている」「町会に加入している」「居住者の3人以上が普通救命講習を受けている」「居住者以外も使 用できる場所に設置する」などの6条件を満たした管理組合に、無料でAEDを貸し出しています。また、エレベーター内非常用備蓄キャビネットもほぼ同様の 条件で配布しています。東日本大震災では、中高層建物のエレベーターが止まり、中に閉じこめられる事故が起きました。こんな時、エレベーター内に水や懐中 電灯、簡易トイレなどがあれば、パニックを起こさず救助を待つことができます。私どもの提案で区役所のエレベーターにも置かれています。

     

    新宿区もこうした支援によりAEDの設置箇所の増設やエレベーター用防災用品キャビネットの設置を促すべきと考えますが、いかがですか。

     

    質問の第2は、マンション管理相談員派遣制度を改善し、必要な大規模修繕や耐震補強工事を促進することです。

     

    区の実態調査では、賃貸が多いことや、戸数が少ないマンションほど管理組合がなかったり機能して いないことで、良好な管理が困難になっていることが明らかになりました。こうしたマンションに区が支援し、住宅マスタープランがめざす維持管理や再生を促 進することが求められます。新宿区には、管理組合の運営や建物の維持管理などの課題解決のために管理組合の総会や理事会等に1回2時間、年3回まで、マン ション管理士や一級建築士等の資格を有するマンション管理相談員を派遣する制度があります。活用を呼びかけるチラシも配布していますが、昨年度の実績は 16件です。マンションを再生させる大事な制度ですから、きれいで分かりやすいパンフレットを作成し、実態調査をしたマンションの管理組合に訪問して渡す とか全棟に郵送して周知を徹底すべきです。

     

    大規模修繕や耐震補強工事を実施しようとすれば、居住者の意思のとりまとめ、費用の算出、行政の 支援制度の調査、業者の選定等々、管理組合役員の苦労は計り知れません。私の知り合いにはマンションの大規模修繕を実施するのに数年にわたり膨大な時間と 労力を費やしたうえ、人間関係もギクシャクして「金輪際役員はやりたくない」と言っている人もいます。区が派遣する相談員は、第三者としてアドバイスした り、居住者の意見調整をするうえで力を発揮すると思いますが、3回だけでは工事まで漕ぎつけるのは難しいでしょう。相談員派遣の回数制限をなくして必要な だけ派遣するように制度を改善すべきと考えます。

     

    また、区には住宅課が行っているマンション管理相談員派遣事業と地域整備課の耐震アドバイザー派 遣事業があり、都市計画部内に2つの事業が併存しているのに連携ができていません。区長が日頃言っているように「横串を刺し」て、情報交換を強め相互の実 効性を高める必要もあると考えます。以上3点について、区長の見解をうかがいます。

     

    質問の第3は、マンションの計画修繕調査費、建て替え検討調査費を区が助成することについてです。

     

    古いマンションは修繕や建て替えに直面しています。千代田区では、計画修繕調査費の2分の1、 50万円までと、建替え等検討調査費の3分の1、100万円までを区が助成しています。新宿区でもこのような誘導制度をつくるべきです。また、千代田区で は防犯機器設置についても2分の1、30万円まで助成しており、これについても検討すべきと考えます。併せてお答えくさい。

     

    【区長答弁】

    マンションへの支援策についてのお尋ねです。

     

    まず、AEDやエレベータ用防災用品キャビネットの設置の支援についてです。

     

    ご指摘の千代田区の取り組みは承知していますが、マンションへのAEDやエレベータ用防災用品キャビネットの設置については、原則としてマンション住民が協力して防災対策にあたる共助の取り組みの中で整備されるものと考えます。

     

    このため、区では、マンションごとに自主防災組織を立ち上げて、住民が相互に力を出し合い、助け合う体制を作っていくことを強く推奨し、活動を後押ししています。

     

    具体的には、マンション防災対策マニュアルを配布して組織化を促しているほか、区が認定した自主防災組織に対しては、防災に関する指導・助言及び訓練時の資機材の提供等を行っています。また、活動助成金の交付も行っており、これを活用してAEDやエレベータ用防災用品キャビネットなど、そのマンションが抱える課題に応じた安全・安心の設備を整備していくことが可能です。

     

    次に、マンション管理相談員派遣制度を改善し、必要な大規模修繕や耐震補強工事を促進することについてです。

     

    区では、マンションを適正に維持管理することは、住宅環境の維持だけでなく、周辺の生活環境を良好に保つうえでも必要なことであると認識しています。マン ション管理相談員派遣制度は、相談員を管理組合に派遣して助言を行う制度で、その周知については、広報新宿やホームページに掲載するとともに、マンション 管理相談事業など他の住宅関連事業の中でも紹介しています。実態調査を行ったマンションへの周知については、調査で回答のあった約500棟のマンション管 理組合に対して、毎年派遣制度の案内チラシを送付しているところです。今後は、わかりやすい案内チラシを作成するとともに、管理組合が機能していないなど 実態調査で回答のなかったマンションに対する具体的な周知方法についても、検討していきます。

     

    マンション管理相談員の派遣回数については、多くの管理組合等に利用していただくこと、主に総会や理事会への派遣であること、及び次年度以降も利用できることから年間3回までが適正であると考えています。

     

    耐震アドバイザー派遣事業との連携については、それぞれの事業で相互に事業を紹介するなど利用者への情報提供を行っているところです。今後は、それぞれの相談員が相互に事業内容や利用者ニーズへの理解を深める機会を設けるなど、更なる連携の強化を図っていきます。

     

    次に、マンションの計画修繕調査費及び建替え検討調査費の助成についてのお尋ねです。

     

    区では、分譲マンションの適正な維持管理等への誘導施策として、管理組合などを対象に、計画修繕に対する技術的助言や建替えようとする場合にアドバイスを 行う「マンション管理相談事業」及び「マンション管理相談員派遣事業」を無料で実施しているところです。したがいまして、現時点で、新たにマンションの計 画修繕調査費及び建替え検討調査費について助成することは考えていません。

     

    次に、マンションへの防犯機器設置に対する助成についてのお尋ねです。

     

    マンション内は、居住者等の限られた方の私有の場所であり、一般の方が自由に出入りできる公共空間とは言えないため、マンション管理組合や自治会として整 備することが原則であると考えます。なお、マンションの外周については、地域における見守り活動支援事業で、公共空間における防犯のために防犯設備を設置 し、助成を受けることが可能な場合があります。

     

     

     

    6、国家戦略特区について

    【質問】

    最後に国家戦略特区について質問します。

     

    小泉政権下の2002年12月 に構造改革特別区域法が成立し、地方自治体からの「申請」を内閣総理大臣が「認定」する形で「特区」を設け、特区内では特例的に規制を緩和する制度がつく られました。これによって、国民の生活や安全を守るための社会的規制が民業を圧迫するとして緩和され、大企業が高収益を確保する仕組みがつくられました。 その後、菅政権下の2011年6月には総合特別区域法が成立し、7つの国際戦略総合特区と41の 地域活性化総合特区が指定されました。東京都が申請したアジアヘッドクォーター特区が国際戦略総合特区に指定され、新宿駅周辺地域が総合特区エリアの指定 を受けました。アジアヘットクウォーター特区は、アジア地域の業務統括・研究開発拠点を5年間で50社以上誘致し、その他の外国企業を5年間で500社以 上誘致することを目標に掲げ、野口副区長が地域協議会メンバーになっています。新宿区が総合特区の指定を受けたことは区民にも議会にも報告されておらず、 区の公式文書では「平成25年度内部評価と外部評価結果を踏まえた区の取り組みについて」で外部評価委員の意見に答えた区の対応で記載されているだけで、 あとは全く見あたりません。秘密裏に事が進められているようにも思えますし、区がさして重く受け止めていないようにも思われます。総合特区指定の経過とそ の意味、区長の評価をまずお聞きします。そして、アジアヘッドクウォーター特区になって新宿区内ではどのような変化・影響がもたらされているのかお答えく ださい。

     

    昨年12月7日には国家戦略特別区域法が成立し、内閣総理大臣が長となり、諮問会議に民間有識者も参画させて民間・大企業の意向をダイレクトに反映させ、トップダウンで規制緩和をすすめようとしています。今年5月1日に東京圏を含む全国6区 域が指定され、新宿区など9区が東京圏の対象区域となりましたが事前協議はなく、新宿区には内閣総理大臣名で「国家戦略特別区域及び区域方針(案)につい て」意見聴取が来て4月15日に回答し、4月25日には国家戦略ワーキンググループからヒアリングを受けています。ヒアリングの議事録を見ましたが、有識 者委員の傲慢で非常識な発言に驚くと同時に、区の担当者も戸惑ったことがうかがえます。

     

    問題は、このことが区政と区民にとってどのような影響を及ぼすのか、区民の意見がどのように反映されるかです。今度の特区指定にあったても区民や区議会に 説明も報告もありません。この決定過程において区はどのように関わって来たのか、なぜ新宿区が指定されたのか、指定によって新宿区ではどのような規制がど のように緩和されることが想定されるのか、それによって区民は何が得られ何を失うことが予想されるのでしょうか。私は、国民の安全や権利を保障する仕組み を、大企業の儲けの邪魔だと決めつけて撤廃する、この特区制度はやめるべきだと考えますが、区長は国家戦略特区に指定されたことをどのように受け止めたの かお答えください。

     

    5月27日には、東京圏の国家戦略特別区域会議の構成員公募のお知らせが区のホームぺージに掲載されました。この先、新宿区は区域会議などにどのように関 与するのでしょうか。総合特区では副区長が協議会メンバーですが、区域会議には区から誰か入るのでしょうか。そもそも民間事業者が提案し自ら実行するもの に対し、区がどこまで関与できるのか疑問ですが、区民の立場に立って区として明確に意見を述べるべきです。そのためにも、国や東京都から情報を収集し、区 議会や区民にその情報を公開し、区民の意見を聞きながら対応することが大事だと考えますが、区長のご所見をお聞かせください。

     

     

    【区長答弁】

    国家戦略特区についてのお尋ねです。

     

    はじめに、アジアヘッドクォーター特区の指定の経過と意味、及び評価と変化・影響についてです。 東京都が、平成23年9月、都内5区域を対象に、新宿区を含む関係8区及び民間企業とアジアヘッドクォーター特区地域協議会を組織し、そこでの協議を経 て、総合特別区域いわゆる総合特区の区域指定の申請を行い、平成23年12月に国から区域指定を受けています。アジアヘッドクォーター特区は、規制緩和や 税制支援、まちづくりなどを総合的に組み合わせて、東京に外国企業の業務統括拠点や研究開発拠点を誘致し、その集積によりアジアの指令塔を目指すもので す。新 宿駅周辺地域については、東京都が、災害時にも利用できる超高層ビル足元の公開空地や道路空間を活用した店舗の設置、及び既存の地域冷暖房プラントを活用 した省エネルギー事業などを提案していることから、区が進める施策の実現に寄与するものと評価しています。新宿駅周辺地域のうち、西新宿で、提案の一つと して進められている地域冷暖房の高効率化などは、新宿区地球温暖化対策指針に定めるCO削減にも貢献しています。こうした事業が実現することにより、防災や賑わい、省エネといった区が進める施策が、より一層推進されていくものと期待しています。

     

    次に、国家戦略特別区域の決定過程における区の関与についてです。

     

    区では、国家戦略特別区域に関する情報収集に努めるとともに、国からの意見聴取に対しては、事前 の情報提供や、地元自治体の意見に留意し、関係機関との調整を十分に図るよう、4月15日に回答しています。また、4月25日には有識者から成る国家戦略 特区ワーキンググループのヒアリングが行われ、新宿駅周辺のまちづくりなどを説明し、今後どのように特区制度を活用できるか東京都と連携して検討する旨を 伝えました。新宿区が区域に指定された理由としては、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックも視野に入れ、西新宿を中心とする国際的ビジネス拠点の形成や、まちの賑わいを創出するために指定されたものと認識しています。また、新宿区がアジアヘッドクォーター特区に指定されていることも、指定の理由であると考えています。

     

    次に、新宿区でどのような規制が緩和されるかについてです。

     

    国家戦略特別区域の区域方針では、東京圏において実施が見込まれる項目として、国際的ビジネス拠 点の形成に資する建築物の容積率や用途等の特例、イベントやオープンカフェを実施するための道路占用許可基準の緩和、グローバル企業等への雇用条件の整 備、世界トップクラスの国際医療拠点としての外国人医師の招聘などが掲げられていますが、区でどの項目を実施するかは、今後設置される国家戦略特別区域会 議で検討することとなります。

     

    次に、新宿区が国家戦略特別区域に指定されたことをどう受け止め、区民にどのような影響を与える かについてです。区が国家戦略特別区域に指定されたことは、区が持つ高度な業務・商業集積機能や、ポテンシャルを活かしたまちづくり、多文化共生のまちづ くりを一層進めるものであると受け止めており、区民生活に賑わいと活力をもたらすものと期待しています。

     

    次に、国家戦略特別区域会議に区として誰が出席し、どのように関与していくかについてです。

     

    区域会議の構成員は、国家戦略特別区域法で定められており、関係する地方公共団体の長は、区域会議の構成員になると規定されています。国では、国家戦略特別区域会議が円滑に行われるよう、現在、会議の運営方法等について検討しているところです。

     

     

    国家戦略特別区域では、主に民間事業者が認定を受けて事業を実施することとなりますが、区として は、国家戦略特別区域での施策の推進が国際競争力を高め、新宿のまちづくりの原動力となると考え、積極的に関与していく意向です。このため、国や東京都に 対しては、区民の意見を聞きながら、区の姿勢を明確に示すとともに、地元自治体の意見に留意し、関係機関との調整を十分図るよう引き続き求めていきます。 併せて、事前の情報提供を求め、適切な方法により機会を捉えて皆様に説明してまいります。

    区議会活動 | 近藤なつ子

    2014.06.26 更新

日本共産党新宿区議団
〒160-8484 新宿区歌舞伎町1-4-1 新宿区役所5階 TEL.03-5273-3551 FAX.03-3200-1474