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区議会活動
2019年第3回定例会 雨宮たけひこ議員が代表質問を行いました
9月19日の本会議で雨宮たけひこ議員が
1. 区長の政治姿勢について
2. ヘイトスピーチの根絶とあらゆる差別解消について
3. 2018年度の決算を踏まえた財政運営と施策について
4. 高齢者・障害者の介護と福祉について
5. 生活実習所を含む複合施設の建替えについて
6.羽田新飛行ルートについて以上6項目について、代表質問を行いました。
* 正式な会議録ではありませんが、概要をご紹介します。
◆(雨宮たけひこ議員) 日本共産党区議団の雨宮武彦です。2019年第3回定例会にあたり、会派を代表して区長並びに教育委員会に質問いたします。
質問に入る前に、九州北部豪雨と台風15号により甚大な被害が発生しました。亡くなられた方々と被害に遭われたみなさんに、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。最初に区長の政治姿勢について伺います。
第1は、参議院選挙の結果と憲法改定についてです。7月21日に行われた参議院議員選挙の結果、自民党は改選比で9議席減らし、改憲勢力が3分2を割りました。市民と野党は全国32の1人区すべてで統一候補を擁立し10の選挙区で勝利しましたが、このことが自民党の議席減につながりました。安倍首相は、今回の参議院選挙で最も熱心に語ったのは憲法改定でした。しかし国民は改憲ノーという審判を下したのです。安倍首相は、国民の審判を真摯に受け止め、9条改憲を断念すべきです。区長は、参議院選挙の結果をどのように受け止めておられますか。安倍政権は憲法9条改定は断念すべきと思いますが、区長のご所見を伺います。
第2は、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展をめぐる表現の自由についてです。
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が開幕から3日で展示中止となり、表現の自由をめぐる社会問題となっています。「あいちトリエンナーレ」の開幕にあたり、企画展の展示内容に日本軍「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」などが含まれることが明らかになると、事務局に抗議や悪質な脅迫が相次ぎ、2日には名古屋市の河村たかし市長が「平和の少女像」の展示中止を求める発言を行い、菅官房長官も補助金交付差し止めを示唆する発言を行い、大阪府知事や大阪市長、神奈川県知事なども同様の発言をしました。「あいちトリエンナーレ」実行委員会会長である愛知県の大村知事は、これらの発言に対し「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか」と批判しましたが、日本ペンクラブは8月3日声明を出し、「行政の要人によるこうした発言は政治的圧力そのものであり、憲法21条2項が禁じている『検閲』にもつながるものであることは言うまでもない。』と断じました。
「平和の少女像」が攻撃の標的にされるのは、最近の日韓関係悪化のきっかけとなった「徴用工問題」について、個人の請求権が消滅していないことは日本政府も認めてきたのに、「徴用工判決」は「日韓請求権協定に反する」と政府自身が主張し、日本軍「慰安婦」についても「強制性はなかった」などと言って韓国・朝鮮という隣国への蔑視感・嫌悪感が安倍政権と政治家によって煽られてきたからに他なりません。マスコミの報道も問題です。小学館の「週刊ポスト」が差別的な記事でヘイトを煽り、抗議のため連載拒否を表明する作家も現れました。このような現状を「戦争前夜のようだ」と言う識者もいます。
新宿区内には韓国・朝鮮にルーツを持つ人が大勢暮らしています。そうした人たちが、いつ自分たちが標的にされるかわからないと恐怖さえ感じるような事態が生じていることに心が痛みます。新宿区長がどのような歴史認識を持ち、表現の自由とヘイトについてどのような認識で対応するのかが問われています。区長は、あいちトリエンナーレのように政治家が展示内容に対して圧力をかけることについてどのようにお考えでしょうか。また、嫌悪感を煽るような政治家の発言はその国にルーツを持つ新宿区民に対する差別を助長していることにもなりますが、一連の政治家の発言についてどのような認識をお持ちでしょうか。また、区長自身は政治家として、「徴用工」問題や日本軍「慰安婦」問題についてどのような認識をお持ちでしょうか。政府の言うように「日韓請求権協定に反する」「強制性はなかった」という認識なのかそうでないのかお答えください。◎(吉住健一区長) 雨宮議員のご質問にお答えします。
区長の政治姿勢についてのお尋ねです。
はじめに、参議院選挙の結果と憲法9条の改正についてです。
参議院選挙の結果については、各政党や立候補者が掲げた公約を有権者が判断して投票がなされたものと認識しています。憲法9条の改正については、さまざまな意見や考え方があることは認識しています。憲法の改正については、憲法の規定に基づき、国民全体で議論を十分に尽くした上で、進められるべきものと考えています。
次に、あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の展示をめぐる表現の自由についてのお尋ねです。
初めに、「表現の不自由展・その後」の展示への政治家の発言についてです。
「表現の不自由展・その後」の展示については、テロ予告、脅迫を受けて、主催者が来場者の安全性の確保ができないと判断し中止されたものと認識しています。また、政治家の発言については、差別を助長したり、圧力につながることがないよう、より慎重な対応が求められるものと考えます。
次に、徴用工問題や慰安婦問題への認識についてです。
徴用工問題や慰安婦問題については、望まない多くの人の尊厳を傷つけたことと認識しています。どの国であろうと、二度と起こしてはならないことだと考えています。「日韓請求権協定に反する」についての認識は、日本政府と韓国政府において、法令解釈や協定の取り扱い方、歴史認識に違いが発生していると認識しています。現在、両国政府が、真摯に外交努力を重ねていますので、交渉当事者ではない私が、私見を述べることは差し控えさせていただきます。
◆(雨宮たけひこ議員) 次に、ヘイトスピーチの根絶とあらゆる差別解消について伺います。
国が「ヘイトスピーチ解消法」を施行し、東京都でも「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」が施行され、新宿区でもようやく「新宿区の公の施設におけるヘイトスピーチ防止のための利用制限に関する基準」がこの10月から実施されることとなりました。
「基準」策定の際に行われたパブリックコメントは、108人から219件の意見が寄せられ、「素案に反対」はわずか4件、ほとんどの意見がヘイトスピーチ対策に賛成するものでした。私たち区議団は、ヘイトスピーチ根絶のための実効性ある対策を求めてきましたが、今回の基準の策定は一歩前進です。しかしながら、パブリックコメントでも「実効性が担保できないのではないか」と指摘されたように問題点が残されました。新宿区からヘイトスピーチを根絶し、あらゆる差別を解消するため、以下、質問します。
第1に、施設利用制限の要件についてです。「基準」では、施設利用制限の要件として、ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高いとする「言動要件」と、ヘイトスピーチが行われることに起因して発生する紛争等により施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測される「迷惑要件」のいずれも満たした場合に利用制限を行うことができるとしています。しかし、先行してガイドラインを策定・実施した川崎市では、「迷惑要件」を必須としたため悪質なヘイトスピーチが行われているにもかかわらず、施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測できないとして不許可処分に至ったのは1件に留まり、苦慮していました。パブリックコメントでも「言動要件」のみでも足りるのではないかという主旨の意見が26件も寄せられているように、ここが実効性を担保するための鍵となります。
京都市や京都府では、川崎市などの例を踏まえて、「迷惑要件」「言動要件」のいずれかを満たせば施設の利用制限を行うことができるとした「ガイドライン」を策定し、「ガイドライン」策定後は市や府の施設でヘイトスピーチが行われたという事実は確認されていないとのことです。新宿区でも、実効性を担保するため、京都市や京都府のように「言動要件」のみであっても利用制限ができるようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
第2は、第三者機関の設置についてです。利用制限を行うにあたっては、ヘイトスピーチかどうかを適切に判断し、行政の恣意的な運用を防ぐことが重要です。基準には「学識経験者意見聴取会」の意見を聴くとあり、パブリックコメントで回答した区の見解では「行政から独立した第三者の学識経験者で構成することが適当」とありますが、「第三者機関」とはなっていません。「学識経験者意見聴取会」は要綱で設置するとしていますが、どのような方を委員に任命し、どのような形で会を開催し、運営していくのかお答えください。単に、区が学識経験者から個々に意見を聴取するのではなく、パブリックコメントでも複数意見が出ているように、「第三者委員会の開催」を機動的に行う体制と、「ヘイトスピーチの被害当事者」「人権問題に詳しい弁護士」「差別撤廃問題に関する学識経験者」などを委員に選定することが必要と考えますが、いかがでしょうか。京都市や京都府では、第三者委員会の開催を機動的に行えるよう、委員の任命も工夫しているとのことです。これらを参考にすべきではないでしょうか。区長のご所見を伺います。
第3は、条例の制定についてです。ガイドラインでは実効性に課題があった川崎市は、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」の制定に向けてパブリックコメントが行われ、第4回定例会での成立をめざしているとのことです。その内容は、「市の区域内の道路、公園、広場、駅、その他の公共の場所において」不当な差別的言動を行い、行わせてはならないとし、罰則規定を設けようとするものです。市の管理する施設だけでなく、区域内のあらゆる公共の場所を対象とすることは、川崎市はヘイトスピーチを根絶するんだという強い意志を示すことになり、罰則規定とあわせて抑止効果が期待できると注目されています。
またヘイトスピーチが行われた場合、区民からの申し出による審査を行い、ヘイトスピーチが行われたことを公表するとともに、ヘイトスピーチを許さないという区の認識と対応について公表し、併せて拡散を防ぐ「撤去・削除の要請」の措置も重要です。既に条例が制定されている大阪市でも行われており、川崎市も同様の措置を行おうとしています。
東京都や大阪市の条例も、川崎市が作ろうとしている条例も、ヘイトスピーチのみならず様々な差別を解消する条例となっています。パブリックコメントでも、これらの自治体や世田谷区、国立市の事例も示して条例制定を求める意見が何件もありました。新宿区内からヘイトスピーチを根絶し、あらゆる差別を解消することが強く求められています。その実現のためには単なる公の施設に関する「基準」に留まるのではなく、大阪市や川崎市を参考に条例化すべきです。区長のご所見を伺います。
第4は、区としての啓発活動についてです。区として「基準」を策定したことを契機に、ヘイトスピーチ根絶と、あらゆる差別解消に向けた区としての決意を示し、区民や事業者に対しての啓発をより一層強めていかなければなりません。「ヘイトスピーチ根絶」などのスローガンを本庁舎や地域センターなどに懸垂幕を掲げるなどしてはいかがでしょうか。区として今後、どのような啓発活動を予定しているのかお答えください。
第5に、区内公園の使用基準見直しについて伺います。今回の「基準」が実行されれば、当然、公園を出発地として行おうとするヘイトスピーチに対しても、その利用を制限することができるようになります。新宿区は、昨年8月1日、デモ出発地として使用できる公園を新宿中央公園のみとする公園の使用基準の見直しを行いましたが、そもそも表現の自由を侵すものであり許されませんが、「住環境」の平穏を乱してきたヘイトスピーチを今回の「基準」で規制できるというのであればなおさら、公園使用基準の見直しも不要であり撤回すべきです。区長のご所見を伺います。◎(吉住健一区長) ヘイトスピーチの根絶とあらゆる差別解消についてのお尋ねです。
初めに、「新宿区の公の施設におけるヘイトスピーチ防止のための利用制限に関する基準」において、実効性担保のため、「言動要件」のみで利用制限ができるようにすべきとのお尋ねについてです。
公の施設の利用制限を行う場合には、憲法が保障する表現の自由や集会の自由の制約とならないようにする必要があります。また、地方自治法第244条第2項では、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」とし、同条第3項では「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的な扱いをしてはならない」と規定されているところです。ヘイトスピーチは、それに近接する表現活動との区別が不明確であり、機械的に判断できるものではないと考えています。これらのことから、区が基準を運用する際には、表現の自由や集会の自由に十分留意し、正当な表現活動が委縮されないよう、言動要件と迷惑要件をいずれも満たす場合に、区が設置した公の施設の利用を制限できるものとしました。利用制限の適用に際しては、個別具体の事案ごとに、状況及び内容・態様等の諸事情を総合的に勘案し、判断してまいります。
次に、第三者機関としての学識経験者意見聴取会についてです。
学識経験者意見聴取会は、本基準を運用していくに当たり、公平性・中立性を担保するために、専門的知見を有し、行政から独立した第三者の学識経験者で構成することが適当と考えています。委員については、憲法や法律、人権などに係る知見を持つ大学教授や弁護士等を想定しており、要綱を定めて設置します。この会は、意見聴取の必要がある毎に委員を招集して開催しますが、時間的制約等により開催が困難な場合は、複数の委員に個別に意見聴取することで、機動的な運営を図ってまいります。
次に、条例の制定についてです。
区では、自治基本条例を定め、前文に「互いの持つ多様性を認め合う多文化共生の社会の実現をめざす」ことを掲げるとともに、基本理念の一つとして「人権を尊重し、一人ひとりを大切にする」ことを規定しています。このように、多文化共生や人権尊重の理念については、既に自治基本条例に取り入れているため、現時点では条例化の考えはありません。
次に、今後の啓発活動についてです。
現在、区施設に法務省作成の啓発ポスターを掲示することや、人権啓発パネル展において外国人の人権に関する展示コーナーを設置するなどの取組みを行っているところです。
今後は、こうした取組みに加え、デジタルサイネージ及び広報での啓発や、「はたちのつどい」において外国人の人権に係る資料を配布するなど、ヘイトスピーチ解消の必要性や人権尊重の理念について、継続して区民や来街者に普及啓発していきます。
次に、公園の使用基準の見直しについてのお尋ねです。
昨年8月1日に見直しを行った「デモの出発地として使用できる公園の基準」については、ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく、公園利用者や周辺住民の生活環境保護を目的としたものであり、撤回は考えていません。また、新宿中央公園では引き続きデモの出発地としての利用を認めており、表現の自由を侵すものではないと考えています。
◆(雨宮たけひこ議員) 次に、2018年度の決算を踏まえた財政運営と施策について質問します。
第1に、区財政の現状と今後の区政運営についてです。2018年度の決算は、実質単年度収支が15億6,000万円の黒字で、6年連続の黒字となりました。年度末の基金残高はさらに63億円増え、532億円。特別区債は前年度比10億円減少し、199億円です。歳入面では、特別区税が納税人口の増加で、特別区税は当初予算より30億多い494億円で対前年度比16億円の増。このように、新宿区の財政は極めて堅調ですが、今後の財政見通しについてお答えください。一方で、ふるさと納税や法人税の一部国税化による減収の影響を見過ごすことはできません。2018年度までの累計影響額は、それぞれ38億円と65億円とのことですが、本来区民のために活かされるべき財源が不当にも国による税制改悪で奪い取られているのです。国の税制改悪に反対の声を示すため、23区の「区民決起大会」を開くよう提案してきましたが、区長は「特別区長会として国に強く申し入れしています」との答弁でした。しかし、国は聞く耳を持とうとしないのですから、やはり抗議集会を開き、国の税制改悪の実態を区民にも知らせ、区民のみなさんとともに国に改めさせるような取り組みをすべきではないでしょうか、また、東京都選出の国会議員にも働きかけるなど、あらゆる取り組みをすべきではないでしょうか。お答えください。
第2は、消費税増税についてです。1つ目は、消費税10%増税中止についてです。10月から増税することに対しては、今でも区内の中小零細業者から戸惑いと反対の声が広がっています。新宿区が7月に行った景況調査では、特別調査として「消費税率引き上げの影響について」聞いています。「消費税率引き上げによる影響の見込み」は、「かなりの影響を受ける」が21%、「多少の影響を受ける」が39%で、合わせて60%と多くの事業者が影響を受けると答え、その内容は「税率引き上げによる、売上減」が66%、「税率引き上げによる、材料価格・仕入価格の上昇」が54%となっています。これを見ると、増税に対するみなさんの不安が見て取れます。
増税を理由に増税前から廃業するお店が、私たちが聞いているだけでも何軒もあります。「7年間喫茶店を営業してきた若手経営者」、「8年間営業してきた西新宿の焼き鳥屋さん」「何代も続いてきた自転車屋さん」「若い世代に引き継いで間もない豆腐屋さん」。どんなにくやしい思いで廃業されたことでしょう。
国は、増税と複数税率に対応するレジの導入やキャッシュレス化を推進していますが、新宿区商店街連合会にお聞きしたところ、新しくレジを購入にあたり補助金制度があることを「新宿あきんど」でお知らせしたが、20件程度の問い合わせで購入したのは3件だけ。キャッシュレス化もなかなか進んでいないとのことです。プレミアム付商品券も、対象となる世帯のうち住民税非課税世帯の申請状況は、8月31日現在9311人、13.0%に留まっており、国は増税に伴う景気対策と言いますが的はずれなのではないでしょうか。
区長は、このような中小零細業者の声や実態をどのように受け止められているのでしょうか。現場が混乱させられ、今でも大変な状況のもとで、このまま消費税を10%に増税すれば、区民生活も業者の営業も立ちゆかなくなるのではないでしょうか。やはり、消費税の増税は中止すべきと思いますが、区長のご所見を伺います。
2つ目は、商店への支援策についてです。区は、少なくとも景況調査などで区内業者の厳しい実態を把握しているのですから、その声に応える責任があります。区として出来うる最大限の支援策を実行していくことが求められています。私たちは、これまでも繰り返し提案してきましたが、「商店リニューアル資金助成制度」や、区内商店会への支援策として「商店街灯の維持」助成割合を8割から10割にすることを今こそ実施すべきではないでしょうか。
第3は、区の財政力を活かして区民のくらしを支えることです。
1つ目は、暑さ対策についてです。今年も猛暑が続き、新宿区で熱中症による搬送された人は、5月~8月で179名(昨年260名)、死亡者4名(昨年7名)とのことでした。高齢者、障害者世帯への暑さ対策、命を守る施策である、冷房機等購入費助成を実施することです。昨年度から実施している荒川区では、今年も102件の申請があり「おかげさまで熱中症にならずに暑い夏を乗り越えられた」と喜ぶ声が寄せられているそうです。また、生活保護世帯や低所得世帯の生活はぎりぎりで、電気代を節約してクーラーをつけない方々がいます。命を守るための電気代の助成が必要です。せめて生活保護世帯に夏の見舞金を法定外援助として支給すべきではないでしょうか。
2つ目は、子育て支援です。私たちはこれまで、幼児教育・保育の無償化は食材費も含めての無償化を、消費税増税に頼らず実施すべきと主張し、国が食材費を無償化の対象から外した場合も区の負担で行うよう求めてきました。今定例会には食材費も含めた無償化と、更に区立幼稚園の入園料の無償化もあわせて議案が提出されています。区長と教育委員会の対応を評価するものです。私立幼稚園についても一定の条件のもと給食費の無償化が実施されることとなり、給食が教育・保育の一環であるということがより明確になったと思います。さらに一歩進んで、小中学校の給食費無償化に踏み切るべきではないでしょうか。今回の無償化に関連して多子世帯の負担軽減策がさらに充実しました。その観点から少なくとも多子世帯への給食費は無償にすることを求めるものですが、いかがでしょうか。
また、新宿区の子育て支援策の大きな柱である子どもの医療費無料化も、18歳まで拡大してはいかがでしょうか。
3つ目は高すぎる国民健康保険料を引き下げることです。9月に新しい保険証が区民に発送されました。滞納している世帯に発行される短期保険証は約6000世帯、資格証明書は約3500世帯で、国保加入世帯の13%にもなります。6年前の2013年度が7%だったことと比べても、いかに国保料が高くなりすぎたかということです。1人当たりの国保料は2013年度と比べて1万円以上も増えています。国保加入者が約9万人ですから、9億円余りを一般会計から国保会計に投入すれば全加入者の均等割を1万円引き下げることができます。区の財政力で対応可能と思いますが、せめて多子世帯への減免、18歳未満の第3子以下均等割を無料にすることは1350万円でできることですから、直ちに踏み出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
以上の施策を補正予算を組んででも実施すべきではないでしょうか。答弁願います。◎(吉住健一区長) 2018年度の決算を踏まえた財政運営と施策についてのお尋ねです。
はじめに、区財政の現状と今後の区政運営についてです。
平成30年度の決算状況は、実質単年度収支が6年連続の黒字となったものの、前年度に比べ24億円減となりました。財政調整基金も4年連続で取り崩すことなく、区債残高も減少傾向にあります。また、経常収支比率は、0.1ポイント減の80.8%となりましたが、適正水準を超えており、区の財政構造は決して弾力性のあるものとは、言えない状況です。一方、特別区民税等の一般財源に影響を与える景気動向について、直近の月例経済報告の基調判断では、「景気は、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」と据え置かれましたが、引き続き、海外経済の動向と政策に関する不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるとしています。区財政は一定の財政対応力を確保しつつありますが、高齢化の更なる進展や働き方改革への対応、環境負荷に対する配慮など、社会変革の流れは先々の財政需要に大きな影響をもたらしつつあります。
こうした中、国による不合理な税制改正やふるさと納税による特別区民税の減収など、歳入の動向が先行き不透明となっています。住民税を地方自治体間の財源調整に用いることは、地方税の原則を歪めるとともに、地方分権の流れに大きく逆行するものです。特別区長会も、「不合理な税制改正等に対する特別区の主張」の中で、特別区は財源に余裕があるかのような誤解があるとして、実態を示しながら反論をまとめています。
私は、地方税の本旨を無視した不合理な税制改正で都市部から税源を奪うのではなく、国の責任において地方自治体の税財源の拡充を図るべきとし、今後も真の分権社会の実現に向け、地方税財源の拡充を強く主張してまいります。
次に、消費税増税に伴う景気対策に対しての中小零細業者の声や実態をどのように受け止めているかについてです。
9月5日現在、国の「キャッシュレス・消費者還元事業」の加盟店登録申請数は、全国で約58万件あり、事務局の審査を通過し登録された店舗が約28万件、うち新宿区は2,013件となっており、一定程度登録が進んでいます。レジの導入補助については、新宿区商店会連合会が行っている支援には、ご指摘のとおり20件程度の問い合わせがあったと聞いています。問い合わせの内容は、「制度が分かりづらい。」「自分の店で具体的にどのような対応が必要か分からない。」などです。このようなことから、この補助制度については、まだ十分に浸透し切れていないものと認識しています。今後は、新たに国が中小・小規模店に個別訪問を行い、それぞれの個別事情に応じたアドバイスを行う事業を開始するとのことですので、支援を必要とされる方が円滑に軽減税率制度に対応することができるよう引き続き連携し周知を強化してまいります。また、プレミアム付商品券事業については、10月1日から使用が開始されます。区内事業者のご協力をいただき利用可能店舗は当初の予定を上回る約3,400店舗となりました。できるだけ多くの方々にご利用いただけるよう、引き続き申請率向上に向けて様々な機会を捉えご案内してまいります。
次に、消費税の増税を中止すべきとのお尋ねです。
少子高齢化の急速な進展や国・地方ともに厳しい財政状況の下で、国民が安心し、希望が持てる社会保障の実現が求められています。こうした中、持続的な社会保障制度の構築や幼児教育・保育無償化などへの安定財源を確保する観点から、消費税を引き上げることは必要であると考えています。
次に、商店リニューアル資金助成制度と区内商店会への支援策として商店街灯の助成割合を8割から10割にすることについてのお尋ねです。
区では、低利の制度融資に加え、今年度から中小零細業者が無担保・無保証で利用できる小規模事業者経営改善資金の利子補給を新たに開始したところです。また、国や東京都が行う店舗改装を助成対象とする制度を経営相談などによりご案内するなど、商店の実情に応じた振興策をきめ細かく展開しているところです。このことから、商店リニューアル資金助成制度を実施する考えはありませんが、今後も区内業者の実態把握に努め、関係機関とも連携しながら、効果的な支援を行ってまいります。また、商店街灯は、商店会などが独自に地域の賑わい創出を目的に設置した装飾灯であり、区街路灯より1基あたりの電球の数を多くするなど、デザインも独自性が高いものとなっています。安全で安心なまちの実現に資するものであることから、その維持管理費の一部を区としても助成していますが、営業活動の一環という側面もあることから、一定の受益者負担は必要であると考えます。
次に、区の財政力を活かして区民のくらしを支えることについてのお尋ねです。
はじめに、高齢者、障害者世帯への暑さ対策として冷房機等購入費助成を実施することについてです。
厳しい暑さが見込まれる近年の状況から、今年度は、広報紙を通じた注意喚起の回数を増やしたほか、「まちなか避暑地」の開設時期を例年より1か月早め、6月から実施しました。
また、高齢者や障害者世帯、生活保護世帯への訪問活動を行う職員が、熱中症に対する正しい知識を身につけるための研修を実施するとともに、各高齢者総合相談センターには、熱中症計を配布し、訪問の際に、暑さを目に見える形で示して危険性を理解してもらう取組みを行いました。このような訪問活動の中、エアコンがあっても頑なに使わない高齢者が依然多い実態があります。今後も、個別にエアコン等の適切な使用方法を、粘り強くお伝えするなど、世帯の状況に応じた細やかな支援に取組んでまいります。そのため、冷房機等購入費助成を実施することは考えていません。
次に、生活保護世帯に対する夏の見舞金の支給についてです。
区では、電気代を含む夏季の特別な需要に対応するため、生活保護費に夏季加算を新設するよう、平成20年度から、東京都を通じて国に要望しており、今後も継続してまいります。
したがって、生活保護世帯に対し、電気代相当の夏の見舞金を区独自で支給することについては、考えておりません。教育委員会へのご質問にお答えします。
小中学校の給食費無償化についてのお尋ねです。
学校給食の実施に要する経費については、学校給食法の規定に基づき、食材料費だけを給食費として保護者に負担をしていただいており、多子世帯を含め学校給食を無償化する考えはありません。なお、経済的な理由により給食費を負担することが困難な保護者に対しては、今後も就学援助で適切に対応してまいります。次に、18歳までの子ども医療費無料化についてのお尋ねです。
現在、区では、15歳に達する日以降の最初の3月31日までの子どもを対象に、所得制限を設けずに医療費助成を実施しています。このほか、所得制限などはありますが、ひとり親家庭等への医療費助成については、18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子どもを対象に実施しています。
子育てに対する経済的負担軽減のための施策については、国や都との役割分担や、子育て支援に関する基盤整備とのバランス等を考慮しつつ、財源の確保に努めながら推進していきます。そのため、ひとり親家庭等を除き、医療費助成の対象年齢を18歳まで拡大することは考えておりません。
次に、一般会計からの投入による均等割の引き下げについてのお尋ねです。
国民健康保険は、負担能力に応じた応能割とともに受益に応じた応益割との適切なバランスにより、被保険者全体で制度を支えることとなっています。したがって、一般会計からの投入により、均等割額を引き下げることは、他の社会保険加入者との公平性の観点からも考えていません。また、多子世帯への支援など、子育て世帯の経済的負担を軽減する措置については、国民が等しく受けるべき支援であると考えています。区は、これまでも全国市長会を通じ、国に対して財政支援を拡充するよう強く要望しています。
◆(雨宮たけひこ) 次に、高齢者・障害者の介護と福祉について伺います。
第一に、介護保険法改定についてです。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は来年の介護保険制度改定に向けた議論を開始しました。見直しの検討項目として、要介護1、2の生活援助を保険の対象から外す、利用者の自己負担を2割、3割へ引き上げる、ケアプラン作成を有料化するなど利用者の負担増や給付の抑制に関する8項目が挙げられています。これまでも改定の度に負担増と給付抑制でサービスは削られ、今でさえ「費用を負担しきれず利用を控えている」「必要な時に使えない」と問題を抱えているのに、今回の改定が実施されれば、より深刻な影響を及ぼすことは確実です。委員の「認知症の人と家族の会」の花俣ふみ代氏は、「これ以上の負担増では、私たちの生活と介護は立ちゆかなくなる。」と言っています。介護が必要な人を切り捨てる、こうした改定の動きにきっぱりと反対し、中止を国に求めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
第二に、介護予防・日常生活支援総合事業についてです。新宿区は2016年度から、要支援1、2の方を対象とする介護保険法上の訪問・通所サービスを、この総合事業に移行しましたが、低い報酬単価が事業者の経営難や人材不足の加速を引き起こし、良質なサービスにつながらないといった問題が起こっていることを私たちは度々指摘してきました。区は、数度にわたり改善を図りましたが、その際、改正後の現場の実態を検証しているか、伺います。事業所に話を聞くと、煩雑な事務処理が仕事をやりにくくしていることも明らかになりました。利用回数に応じた単価設定のため、月ぎめで報酬の包括払いをしている他の区よりも請求事務が煩雑です。1回ごとの単価設定のために、月の収入が利用者のキャンセルに左右され運営が不安定になり、撤退を余儀なくされるデイサービスなどもあるとのことですが、区では、こうした支払い方式が事業所等に与える影響についてどの程度実態を把握しているのか、伺います。事業所の中には新宿区のみならず周辺の中野区など広範囲にまたがって運営する所も多く、「もう新宿では仕事をしたくない」「せめて報酬単価の支払い方式を周辺区と合わせてほしい」と悲鳴が上がっています。現場の負担をこれ以上重くしないためにも、現場の実態をきちんと検証し基本報酬の支払いを月額包括払いに改めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
第三に、介護用品の助成についてです。一つ目は現行の紙おむつ支給事業についてです。現在は対象者を要介護1以上に拡大しましたが、一方で助成限度額は月額7000円に下げられました。2018年度の実績では平均支給金額は7000円を下回っていますが、要介護1の方の利用量が少ない一方で、一日に何度も紙おむつを交換する重度の要介護者の中には、月に7000円では足りない方もいます。区として、利用が限度額の7000円を超過した分を自費で負担している方の実態を把握し、支給額を8000円に戻すべきと思いますが、いかがでしょうか。
2つ目は、紙おむつ以外の介護用品への助成について伺います。区民から、飲み物の嚥下を助けるとろみ剤などの介護用品の費用助成を求める声が上がっています。とろみ剤の費用助成については、以前から私たち区議団が提案してきましたが、ある例では1ヶ月に1箱使って4000円前後と大変高額であり、大きな負担となっています。紙おむつ以外の支給品目を拡大してきた大阪市、山形県村山市などの自治体では、現場のニーズに応じてとろみ剤の助成を行っています。こうした事例も参考にし、新宿区として独自にとろみ剤等の助成制度を新たに作ることを検討してはいかがでしょうか。
第四に、障害者グループホームについてです。区は第5期新宿区障害福祉計画において、障害福祉サービスの必要量見込を算出しています。障害者グループホーム全体の必要量見込としては、2018年は190名、2019年195名、2020年200名となっていますが、身体、知的、精神といった障害種別ごとの必要量見込みは記されていません。グループホームの増設を待ち望む様々な種別の障害者の声を計画に反映させるためには、障害の種別ごとのニーズを把握した上で、種別ごとの必要量見込を算出するべきと思いますが、いかがでしょうか。
次に、障害者グループホーム増設の計画のあり方についてです。現在進められている払方町の国有地を活用する障害者グループホームの計画では、小規模多機能型および認知症高齢者グループホームとの複合施設にすることは予定しています。しかし、区は2ユニット予定しているグループホームの種別をまだ決めておらず、その種別を事業者にゆだねようとしています。本来ならば区が障害当事者・保護者等の意見を聞いて、どの種別の障害者グループホームを作るのかを今のうちから区が主導して決めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
障害者グループホームは、自立をめざす方や、親なき後も安心の暮らしを求める方のための生活の場であり、障害当事者・保護者の意思が最大限尊重される場でなくてはなりません。事業者が選定された際には、障害当事者・保護者等が参加して様々な障害の特性に合わせた設計や施設運営を提案できるような協議の場を設けるとともに、区が主導して計画化しグループホーム建設を進めるべきと思いますが、区長の見解を伺います。◎(吉住健一区長) 高齢者・障害者の介護と福祉についてのお尋ねです。
はじめに、介護保険法改定についてです。
現在、社会保障審議会介護保険部会において、次期介護保険制度改正に向けた議論がなされていることは承知しています。今後、持続可能な介護保険制度の再構築の検討の中で、様々な立場からの意見が交わされ、審議が進んでいくものと考えておりますので、現時点で改定の中止を求める考えはありません。
次に介護予防・日常生活支援総合事業についてのお尋ねです。
区は平成28年度の事業開始以降、サービス事業者のよりよいサービス提供につなげることができるよう、ケアマネジャーやサービス事業者の意見を踏まえながら、制度の見直しを行ってきました。平成30年4月には、介護報酬改定と時期を合わせ、一部改定を実施しました。この改定については、ケアマネジャーから訪問型サービスにおいて、専門的見地からの訪問介護相当サービスと、自立生活維持のための生活援助サービスの差別化が図られ、適切なサービス提供につなげることができるようになったとの意見をいただきました。また、事業者からは通所介護相当サービスにおける事業所評価加算の導入を評価する意見もいただきました。一方、制度をよりわかりやすく見直すことや、事業者の取組みを一層評価することなどを求める意見も寄せられました。そこで、改めて事業者に実態をお聞きしたところ、近隣区との制度の相違による請求事務の負担軽減、サービス向上や職員の処遇改善の取組みがこれまで以上に評価される加算の仕組みを求められました。
これらのご意見を踏まえ、平成31年4月には請求事務の負担軽減策として、基本単価について利用1回ごとの考え方を維持しながら、同様に利用1回ごとの単価設定をしている他区の制度も参照し、サービス内容に応じた設定から月の利用回数に応じた設定に変更しました。また、事業者の取組みが一層評価されるよう、加算の算定要件等についても見直しを行いました。基本単価を月額包括払いとすることは、事業者の請求事務の軽減にはなりますが、利用者の負担増につながることから、現時点では考えていません。
次に、介護用品の助成についてのお尋ねです。
はじめに、紙おむつ支給事業についてです。
高齢者おむつ費用助成事業については、平成28年度に制度改正を行い、在宅の場合の対象者を、要介護4以上から要介護1以上の方へと拡大する一方で、助成限度額を月額7,000円としました。その際には、利用実績を勘案するとともに、助成を必要とする高齢者に広く支援が行き届くよう留意して、制度設計を行いました。平成30年度における利用実績をみても、一人あたりの平均月額は、現物助成が5,374円、代金助成が6,332円で、現在の助成限度額の範囲内に収まっていることから、限度額を変更することは考えておりません。
次に、紙おむつ以外の介護用品への助成についてです。
介護を要する高齢者の状況は、それぞれ異なり、一人ひとりに合った介護用品を選択することが大切です。介護用品の一つに、嚥下機能を助けるとろみ剤がありますが、このとろみ剤は、個人の判断で使用せず、ご本人の身体の状態や服薬状況に応じて、専門的な指導のもとに適切に使用する必要があります。また、とろみ剤を安全に使用するためには、嚥下機能の経過観察も必要です。そのため、とろみ剤は、助成制度には馴染まないものと認識しております。
次に、障害者グループホームについてのお尋ねです。
障害者グループホームの利用意向については、障害者生活実態調査において、「住まいに関してどのような支援を必要としているか」等の設問を設けており、障害種別ごとに結果を集計し、ニーズを把握しているところです。第5期新宿区障害福祉計画における障害者グループホームの必要見込量については、身体と知的、知的と精神等、重複障害の方もいるため、障害種別を分けずに表しているものです。
次に、障害者グループホーム増設の計画のあり方についてのお尋ねです。
区は、様々な障害者団体から懇談会を通じて、払方町のグループホーム整備計画についてご意見をいただいています。それらの意見を踏まえ、高齢者や障害者それぞれの特性を熟知し、安心して過ごしていただくための確実な提案ができる事業者を選定することが重要だと考えています。事業者が独自の発想を活かした提案をできるよう、制約はできるだけ設けず、プロポーザル方式により選定を行います。事業者が決定した際は、当事者団体などから意見を聴く場を設けることができるよう、調整を図っていきます。
◆(雨宮たけひこ) 次に、生活実習所を含む複合施設の建替えについて伺います。
生活実習所含む牛込保健センター等複合施設の建替えの設計等について委託業者が6月に決まりました。今回の建替えの直接的なきっかけは接道の形状変更に伴うものですが、同時に懸案事項であった生活実習所の2階と4階に分かれている構造的な問題が解決できる好機として歓迎されました。ところが8月初旬に出された2つの基本設計案は、生活実習所が2階と4階に分かれた案と2階と5階に分かれた案だったことから、生活実習所の保護者及び関係者から「なぜ」「約束が違う」と驚きの声が寄せられました。
生活実習所は重度中度の知的障害者が利用する通所施設です。利用者の増加から、1998年度に区立障害者福祉センターから牛込保健センター等複合施設内の旧新宿養護学校があった2階部分に暫定施設として移転しました。その後更に利用者が増えるなか4階の一部を追加し、2003年度から本格施設として事業を実施してきました。その当時から問題はありましたが、さらにここ数年の定員オーバー状況と利用者の高齢化・重度化から、2階と4階に分かれている構造的な問題が利用者、現場の職員の負担をより重くしていることから要望が寄せられ、この間議会でも各会派から問題解決のための提起が繰り返し行われていたのはご存知のはずです。ですから、この問題を解決できない設計案がなぜ出されたのかが信じられません。第1回定例会のわが区議団の建替え方針案の質問に対し、区長は「各施設が構造的に区切られていないことや専用のエレベーターがないなどの施設面の課題への対応も行っていきます」と答弁されていますが、区長は設計にあたってどのような指示をしたのでしょうか。また、このような案が出てきたことをどのように受け止めているのかまず最初に伺います。
2つ目に設計委託のあり方について伺います。
その1つは、「設計業務委託仕様書」の問題についてです。
私は、区が委託業者にどんな設計の指示をしたのか確認するため「設計業務委託仕様書(以下、仕様書)」を見ましたが、更に驚きました。仕様書を作成した施設課は事前に各所管課から設計のために聞き取りを行い、併せて「牛込保健センター等新築与条件整理(以下、与条件整理)」という文書を提出させていました。同文書には施設に必要な部屋名ごとに用途、機能等、面積、及び国基準等の備考が記載され、加えて「必須要件・注意事項等」として設計上配慮することなども記載されています。例えば、設計上配慮することなどの「必須要件・注意事項等」として、保育課からは『階層について現状と同じを希望。3階のワンフロアを全て確保。4階は遊戯室を確保』などが記載され、障害者福祉課からは『利用者のパニック時などに各活動室等において連携した支援が必要である。よって、多数の階にまたがることは支援上支障があり、2フロアが望ましい』とわざわざ記載されていますが、これらの記載は仕様書に全く反映されていませんでした。
なぜ各所管課が作成した「与条件整理」を仕様書に反映しなったか、このことについてどうお考えなのか、区長の見解をお聞かせください。
その2は、今後の「設計業務委託仕様書」の作成のあり方についてです。
区として今後も複合施設をつくることはあると思います。区が求めているコンセプトを達成できるように現場からの聞き取り内容がしっかり反映された詳細かつ丁寧な「設計業務委託仕様書」を作ることが必要です。
今後同じようなことが起こらないよう、事前に各施設から聞き取りを行うことはもちろん大前提ですが、各施設の担当課長や施設責任者などが一堂に会する場をつくり、仕様書案の確認や意見調整などを行い、少なくとも各担当課長が納得した仕様書を作成すべきではないでしょうか。複合施設であればこそ、このような事前の作業はなおさら大事なはずです。今回のことを教訓にしルール化すべきです。区長の見解をお聞きかせください。
3つ目は、この複合施設の建替えについての今後の進め方についてです。
この複合施設は区民にとって大事な施設であり、今後50年~60年は使う建物です。議会や近隣住民には公表されていませんが、最初の2つの設計案に対してすでに各所管課からは意見が出され、それを踏まえた3つ目の設計案が9月初旬に示されていると聞いています。生活実習所については1階・2階と2フロアがつながっているものになったようですが、実際どのような設計になったのかお示しください。議会としては多くの会派がこの複合施設については建替えを応援してきました。設計案については随時、議会に報告し、区民の代表である議会の意見も設計に反映させるべきではないでしょうか。一体議会にはどの段階で報告するつもりなのでしょうか。また当該施設の利用者・保護者、職員などの意見を活かすことが更に求められます。少なくともこの3つ目の設計案については早急に議会と関係者に示し、最大限現場の要望・実態を反映するよう対応すべきと思いますが、区長の見解をお聞かせください。
◎(吉住健一区長) 生活実習所を含む複合施設の建替えについてのお尋ねです。
はじめに、設計にあたっての指示等についてです。
生活実習所を含む複合施設の建替えの設計にあたっては、現状の課題を解決するため、各施設を構造的に区分することや、複数のエレベーターを配置することなど、利用しやすい施設とするように各所管課と施設課が連携して設計を行うよう指示しました。
施設課では、設計を進めるにあたり、各所管課に必要な機能を持つための面積要件や様々な希望についてヒアリングを行い7月下旬にゾーニング計画としてA案、B案の2案を提示しました。A案は、現状の牛込保健センターの配置を基本に、これまで使い慣れたアプローチ導線を継承した案。B案は、各施設の主要な利用者室である保育室や活動室等をワンフロアにまとめた案です。8月初旬にA案、B案を基に再度ヒアリングを行い、その要望等を反映したC案として、各施設を上下隣接階でまとめた案を作成しています。A案B案は、条件検討を行うに当たっての案であり、いずれも基本設計案ではありません。
この度、条件検討を行う段階で、検討途上の未確定の情報が関係者等へ伝わってしまい、ご心配を招いてしまいました。関係者の皆様には、お詫びを申し上げます。今後は、どの段階でどのような情報を提供しご意見を伺うか、適切に管理を行い、混乱を招くようなことが無いようにしてまいります。
次に、設計委託のあり方についてです。
設計業務の委託にあたっては、各所管課に様々な与条件を整理させ、各部屋の用途や面積要件、利用者の特性やアクセスを考慮するなど、設計事務所のノウハウを最大限発揮することを目的とし、主な事項を基に仕様書を作成しました。各所管課の与条件については、設計を進める中でさらに検討を重ね、ヒアリングにおける追加や変更の要望を反映していくことで、より良い基本設計につながるものと考えています。これまでも、複合施設を含め、様々な施設を建設してきました。今後も、主な事項を基に仕様書を作成し、さらに詳細な点を各所管課と施設課が連携して検討を重ねることで、より良い設計へと繋げてまいります。
次に、今後の建替えの進め方についてです。
現在、各所管課と施設課で検討を進め基本設計の基となるC案をまとめている段階であることから設計案としてお示しできる状況に至っていません。今後も、各所管課においては利用者や多くの関係者の方々のご意見を把握し、検討を重ね現場の要望をできる限り反映した基本設計となるよう進めてまいります。なお、議会への基本設計の報告については、これまでと同様に一定程度の調整や検討がまとまった段階を予定しています。この度、複合施設という関係当事者が複数いらっしゃる施設を計画するにあたって、内部の検討段階の情報が外部に漏れてしまったことは、情報管理が拙かったと言わざるを得ません。新施設建設には、当初期待感を持っていただいていましたが、関係者に、「なぜ」、「約束が違う」と不安感や不信感を抱かせてしまったことに、改めてお詫びを申し上げます。今後は、当該施設に限らず、計画段階における不確定な情報の取り扱いには、十分留意しつつ、ご利用いただく皆様に喜んでいただける計画づくりに努めてまいります。
◆(雨宮たけひこ) 次に、羽田新飛行ルートについて質問します。
8月8日、石井啓一国土交通大臣が、都心上空を低空飛行する羽田新飛行ルートを2020年3月29日から運用開始すると決定しました。新飛行ルートは、騒音、落下物、大気汚染、資産価値の低下、墜落事故の危険性など命とくらし、生活環境を著しく脅かす計画であり、新聞、テレビで大きく報じられると撤回を求める声が広がっています。
新宿区議会でも、この間、多くの会派が騒音や落下物から、区民の安全を守る立場で質疑をしてきました。2017年6月21日付「羽田空港飛行経路についての意見書」と10月16日付「羽田空港新ルート計画の環境・安全性の検証と討論型説明会の開催を求める意見書」と2度にわたって意見書を採択しました。ようやく、区や議会の求めに応じ、今年の1月に柏木、角筈、5月に落合第一、第二の各地域センターの4か所で教室型説明会が開かれるに至り計166名が参加しました。説明会では、発言希望者が多数のため、1人3分しか持ち時間を与えないなど、参加者には大変不満の残るものでしたが、「小学校上空を飛行機が通過することに反対」「新飛行ルートは騒音や落下物の問題から反対」「落合地区は閑静な住宅街。騒音が発生すれば、不動産価格に影響がある」等、圧倒的に反対の意見が出されたことは、他区の説明会と同様でした。
これまで、国も都も、地元自治体や住民の理解を得ることが、新飛行ルートの前提条件だと明言してきました。その約束を投げ捨てて、方針決定したことは断じて許されません。国交省の説明は地元自治体と住民の理解を得たと考えているのか、まず区長の認識を伺い以下質問します。
第1は、区の対応についてです。
東京都は、7月26日、東京都副知事、23区の副区長、隣接5市の副市長で構成する「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」(以下「連絡会」)を7月30日に開催すると突如発表しました。「連絡会」が新飛行ルートについて何らかの理解や容認の立場を示し新飛行ルートにお墨付きを与えるものになるのではないかと危惧したため、私ども区議団は急遽7月29日に区に住民説明会などで区民から出された中止や見直し、騒音・落下物対策を求める意見を発言するよう申し入れを行いました。「連絡会」出席予定の副区長は「しっかり伝えます。」と応じましたが、実際には一言も発言しませんでした。私どもの8月7日の2度目の申し入れの際、副区長は「他の発言者と同趣旨であったため重ねて発言はしなかった」と言いましたが、品川区は「区民からは、依然として不安の声が多く聞かれる」、豊島区は「教室型を含め説明会を複数開催するよう要望する」など5区から発言がありました。区民の意見や要望を「しっかり伝える」約束を反故にする背信行為ではないですか。区長のご所見を伺います。
さらに驚くべきは、8月7日に開催された首都圏の都県・23区の代表、国土交通省で構成される「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」(以下「協議会」)に向けての対応です。8月24日、日本共産党都議団が情報公開請求で開示された資料によると、都は実質的に羽田新ルートの推進を求める「具体化協議会で国に伝える東京都の意見骨子(案)」(以下「都の意見骨子(案)」)について23区5市に対して意見を求めており、新宿区は8月1日に「(東京都の取りまとめに対して追加の意見)なし」と回答していたということが分かりました。これは、安心と安全を求める区民の要望とは正反対の立場です。8月7日、副区長に2度目の申し入れを行った際、「都の意見骨子(案)」については触れられませんでしたが、新宿区は一体、羽田新ルート推進の立場なのか否かを明確にお答えください。
第2は、飛行高度を引き上げた修正案についてです。
国土交通省が7月30日に示した騒音対策は、降下角度を3度から3.5度に引き上げ、新宿区上空を当初案の約915メートルから約1040メートルに引き上げて騒音を軽減するというものでした。環境衛生学が専門の北海道大学教授の松井利仁氏は「騒音効果は1デシベル程度で住民には違いが判らない」と指摘しています。8月30日から実際のルートを大型旅客機の全長4分の1程の小型ジェット機が午前6時~8時の間飛ぶ飛行検査が行なわれています。環境対策課が貸し出す騒音測定器で計測したところ北新宿で最大64.2デシベルありました。住民からは「音は思ったより大きい」「これが2分間に1回となると耐えられない」と小型ジェット機でさえそう感じるのですから、大型機が飛ぶなんてとんでもありません。さらに、元日本航空機長、航空評論家の杉江弘氏は「0.5度角度を上げることは世界のパイロットは、経験しておらず、羽田は世界でもっとも着陸がむずかしい空港になり、尻もち事故などが多発しかねない」とその危険性を指摘しています。
また、落下物対策として情報提供を行うとの追加案も示されましたが、航空機からの落下物は国内のおもな7空港だけで年間447件、一日に一件以上起きています。人口が密集する都心で落下物による事故が起きてからでは遅いのです。この修正案では騒音対策にもならないばかりか、事故の危険性が増すことになります。区民の安全を守る立場の区長として、きっぱり中止するよう国に要求すべきです。区長のご所見をお聞かせください。◎(吉住健一区長) 次に、羽田新飛行ルートについてのお尋ねです。
はじめに、国土交通省の説明は、地元自治体と住民の理解を得たと考えているのかについてです。
国土交通省は、騒音・落下物対策等を着実に実施し、丁寧な説明を今後も行っていくことを前提に、羽田空港の機能強化について地元の理解を得られたと判断した、と説明をしています。区では、羽田空港の機能強化について、不安や疑問の声など、さまざまな意見があることは承知しており、国は丁寧な説明と正確な情報提供を着実に続けていくべきものと考えております。
次に、区民の意見や要望をしっかりと伝えたかとのお尋ねです。
ご指摘のとおり、7月30日に第1回「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」が開催されました。区では、連絡会までに19回に渡って開催された幹事会を通して、落下物対策などの安全対策、騒音対策の徹底、区民への丁寧な説明、騒音測定局の設置について粘り強く要望を続けてまいりました。また、区からの意見や要望に対しては、国の責任において真摯かつ適切に対応するよう要望をいたしました。連絡会は、こうした都及び関係区市からの要望に対し、国から文書による回答を得ることを目的として開催されました。区のこれまでの要望に対し、安全対策・騒音対策に関する追加対策の検討、区内への騒音測定局の設置など、一定の評価ができる回答を国から受け取ることができたと考えています。このことから、区民の意見や要望をしっかりと国に伝えたものと認識しています。
次に、羽田新ルートに対する区の立場についてのお尋ねです。
ご指摘の「都の意見骨子(案)」は、羽田空港の機能強化は重要とする一方で、丁寧な情報提供や安全対策・騒音対策の徹底を要望する内容となっています。従来からの区の要望とも沿うものであったことから意見が無いものとして回答いたしました。他区市においても骨子案への意見は1件も無かったと都から聞いております。区としては、羽田空港の機能強化の必要性については理解していますが、国の事業として国の責任において住民の理解を得ながら進めるべきものと認識しています。
次に、飛行高度を引き上げた修正案についてです。
ご指摘のとおり、区内では、引き上げ高度が約400フィートのため、これだけでは大きな効果は見込めないと考えています。しかしながら、騒音の要素を組み合わせた着陸料の料金体系の再見直しや、区内への騒音測定局の設置などを含め、全体として騒音対策の効果はあるものと認識しています。また、着陸時の降下角を0.5度引き上げ、3.5度にすることについては、国際民間航空機関が定める国際的な安全基準に則したものであり、安全性は確保されると国から説明を受けています。なお、3.5度はあくまでも限度であり、気象条件等によっては、降下角を下げるなど安全を最優先にした対応を今後も続けていくとのことです。そのため、今回の修正案について国に中止を求める考えはありませんが、国の実施する安全対策・騒音対策が着実に履行されるよう注視してまいります。区では、今後も区民の安全・安心を守るため落下物対策などの安全対策・騒音対策の徹底、丁寧な説明と正確な情報提供について国に強く要望してまいります。2019.10.03 更新