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区議会活動
2015年第3回定例会 代表質問
9月15日の本会議で、雨宮武彦議員が以下の項目について代表質問を行いました。
1.区長の政治姿勢について
2.2014年度決算と区民生活を支える来年度予算について
3.介護保険について
4.福祉・医療・介護の人材確保について
5.防災計画の充実について
6.新国立競技場建設計画の見直しと都営霞ヶ丘アパートについて正式な会議録ではありませんが、概要をご紹介します。
(雨宮議員) 日本共産党の雨宮武彦です。2015年第3回定例会にあたり、区議団を代表して質問いたします。
9月9日から長時間続いた、50年に一度という記録的な大雨により、茨城、栃木、宮城県を中心に甚大な被害が発生しました。被災された方々に、心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早い救助と復興を祈念し、以下質問に入ります。
最初に、区長の政治姿勢についてです。
本日、安倍政権と自民党・公明党は、安全保障関連法案いわゆる「戦争法案」の強行採決をするため中央公聴会を強行しました。地方公聴会を行った後、明後日にも委員会採決強行と言っていることに、深い憤りと抗議の意を表明するとともに、私たちは、平和を願うすべての人々と力を合わせ、戦争法案を廃案にするため全力で闘う決意を、まず最初に表明するものです。
今、「戦争法案」廃案を求める国民の声と、安倍政権への怒りが、日本列島を覆っています。世代を超えた多くの人々が、自覚的・自発的に集まり、8月30日には国会周辺に12万人が押し寄せ、9月6日にはこのすぐそば伊勢丹前の新宿歩行者天国に1万2千人が集まり学者と学生がスピーチを行いました。同日、区内の早稲田大学でも全学集会が500人規模で行われ、新宿歩行者天国に合流しました。学者と学生の共同の運動が、全国の大学に広がっています。そして、昨日の夜も私は参加してきましたが、国会前に4万5千人が集まりました。また、新聞報道によると、広島県では自民党の県議が呼びかけ人となり庄原市、三次市で反対の会ができたり、創価学会員による署名活動やデモへの参加も多く見かけるようになりました。どの世論調査でも法案「反対」は過半数にのぼり、「今国会で成立させるべきではない」は7割以上です。
国会審議で、法案の危険性と提案理由の崩壊が浮き彫りになっています。安倍首相が具体例としてあげてきた「日本人を輸送する米艦の防護」も、「日本人が乗っていなくても集団的自衛権の行使はありうる」という答弁に変わり、「ホルムズ海峡の機雷掃海」もイラン政府があり得ないと、提案理由が崩壊しています。歯止めなき法案の中身も、米軍のために自衛隊がクラスター爆弾・核兵器さえも輸送できるとし、明らかに憲法違反であることが明確になりました。極めつけは、自衛隊による「軍の暴走」というべき事態が自衛隊の内部文書によって発覚したことです。文民統制さえきかない異常事態です。
「憲法違反」の指摘は、ほとんどの憲法学者や法律家から相次いだのに続き、ついに最高裁の元長官・山口繁さんが「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反」と明言されました。8日の参院安保法制特別委員会の参考人質疑で、大森政輔元内閣法制局長官は、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」について、「憲法の基本原則からの重大な逸脱」で違憲との見方を示し、「無効と解すべきだ」と断じました。そこで、区長に伺います。
第1に、安倍政権は今週中にも委員会での強行採決をしようとしていますが、少なくとも民意を反映すべき国会が民意を無視した強行採決はすべきでないと思いますが、政治家としての区長の見解を伺います。
第2に、区長はこの法案を憲法違反とお考えかどうか伺います。この法案を通すことは民意に反するだけでなく、立憲主義に反するものです。区長にその認識がおありか伺います。憲法99条に基づき、憲法遵守義務が課せられている区長として、憲法に反する安全保障関連法案には反対をすべきと思いますが、区長の見解を求めます。
第3に、自衛隊による「軍の暴走」についてです。国会で日本共産党が暴露した内部文書の一つは、衆議院で審議が始まった5月26日に自衛隊の幹部を対象に、戦争法案の成立を前提にした説明が行われ、自衛隊と米軍の「軍軍間調整所」や共同軍事司令部を平時からつくること等が記載されていました。もう一つは、自衛隊トップの河野統合幕僚長が昨年総選挙直後に訪米した際、米軍幹部の問いに答え「夏までの法案成立」を言及していたという文書です。国会も国民も無視した「軍の暴走」に他なりません。私は、新宿区の市ヶ谷にある防衛省でこのようなことが行われていると考えたら背筋が寒くなる思いがしました。区長は、この自衛隊の行為について「軍の暴走」だと思われませんか。文民統制という点からもあってはならないことと思いますが、区長の見解をお示しください。
以上、答弁願います。(吉住健一区長) 雨宮議員のご質問にお答えします。
区長の政治姿勢についてのお尋ねです。
国会での採決についてですが、どのような法案であれ、審議を尽くしたうえで、採決を行うべきと考えます。
次に、安全保障関連法案は憲法違反であり、立憲主義に反するため、反対すべきとのお尋ねです。
これまでの国会審議の中で、法案が憲法違反であるか否かについて、議論されていることは承知していますが、法案が憲法違反であるかについては、自治体の長として発言する立場にないと考えています。
次に、安全保障関連法案にかかる自衛隊の文書についてのお尋ねです。
文民統制は民主政治を守るための原則として大事なことと認識しています。この点については、国において適切に対応が図られるべきものと考えます。(雨宮議員) 次に、2014年度決算と区民生活を支える来年度予算について質問します。
内閣府が9月8日発表した2015年4~6月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%減と3四半期ぶりにマイナスに転落し、雇用者報酬は実質0.2%減、個人的消費も0.8%減で、庶民のくらしの大変さを示しています。しかし、国が示した「新・骨太の方針」では、今後5年間で社会保障給付の徹底した抑制を行い、地方自治体にも「トップランナー方式」などと言って経費削減を競わせようとしています。
新宿区の2014年度決算は、実質単年度収支が15億6千万円余の黒字となり、前年度に比べ12億7千万円余の増となり2年連続黒字となりました。経常収支比率は、86.5%から83.9%と前年度から2.6ポイント下がり、これまでも健全だった区財政はさらに財政力を増していると言えます。歳入は前年に比べ、特別区税は前年度比18億円余の増で424億円余。新宿区の概況によると、人口は前年比2,910人の増、納税義務者は4,283人の増、納税者1人当たり税負担額は6,079円増です。税収増の最大の要因は、特別区交付金29億円余の増で、アベノミクスの恩恵を受けた大企業が空前の利益を上げているからです。区民には重い負担となった消費税増税で、地方消費税交付金も9億円余の増となりました。
一方、区民生活の実態はどうでしょうか。新宿区でも、生活保護世帯は6月現在9,214世帯、前年度比143世帯の増で、今月更新された国民健康保険証は資格証明書の発行が更に増え4,062世帯となりました。衝撃なのは国保料未納世帯の実態です。昨年度滞納した世帯のうち20代が38.63%で最も多く、20代から40代で78.65%を占めており、その世代が滞納金額の71.45%を占めていると聞いています。若い世代の非正規雇用化が深刻な事態となっていることを示しています。今年も取り組んでいる私ども区議団の区政アンケートでも、くらしの大変さを訴える声が届いています。新宿区には担税力のある層が流入してくる一方で、格差と貧困はますます拡大し、貧困の深刻さが増しているのではないでしょうか。区民に一番身近な区政が、区民生活を支える施策をこれまで以上に打ち出すことが求められています。
区の来年度予算編成に向けた「依命通達」では、「不透明な財政環境の中、将来にわたり安定した財政基盤を確立し、新たな総合計画への橋渡しとなる第三次実行計画を着実に進め、持続的に発展し続ける新しい新宿のまちの創造に向け、確かな一歩を踏み出す予算」とし、第1に、「社会経済情勢の動向を的確に見極めながら、区民生活に影響を与える課題に対して重点的に財源を配分し、解決に向け確実に取り組むこと」としています。以下、質問です。
第1に、区長は2014年度決算についてどのように評価され、今後の財政見通しをどのように見込んでいるのかお答えください。
第2に、区長は、区民生活の実態をどのように把握しておられるのでしょうか。区民のなかの格差と貧困の拡大についてはどのような認識でしょうか。とりわけ若い世代の雇用問題については東京都も取り組みを始めていますが、区としても雇用の創出など独自に取り組むべきと考えますがいかがでしょうか。区民に最も身近な区政として、国の社会保障改悪などから区民生活を守る防波堤となって区民を応援すべきと考えますが、いかがでしょうか。
第3に、「依命通達」で述べている「社会経済情勢の動向」や「区民生活に影響を与える課題」とはどのようなことを指しているのでしょうか。私は、とりわけ国が社会保障の大改悪で、既に生活保護費の切り下げや介護保険の改悪が行われている下で大きく「区民生活に影響を与えている」事に対する区としての支援策・負担軽減策こそ必要と考えますがいかがでしょうか。介護の負担軽減については後の質問で伺いますが、来年度は後期高齢者医療保険料の改定年度です。東京都後期高齢者医療広域連合は、保険料の均等割額は3,000円の値上げで45,200円に、所得割率は1.12ポイント引き上げ10.10%に、1人当たり平均保険料を97,098円から102,833円とする案を示しました。年金が引き下げられ、消費税増税、介護保険の負担増と、高齢者の生活は厳しくなるばかりです。少なくともこれ以上の保険料値上げはすべきではありません。そのために、区長として東京都に助成を要望することも含めて、値上げをしないための提案を特別区長会でもすべきと考えますが、いかがでしょうか。以上、答弁願います。(吉住健一区長) 平成26年度決算と来年度予算についてのお尋ねです。
はじめに、決算の評価と今後の財政収支見通しについてです。
平成26年度予算は「将来を見据えた堅実な財政運営に立脚し、時代の変化に機動的かつ的確に対応して区民生活を支えるとともに、新宿区の魅力を高めるため、第二次実行計画を確実に推進する予算」と位置づけ、「実行計画の達成や直面する区政課題への取組み」、「徹底した経費の削減」、「中長期的に健全な財政運営の確保」をテーマとして編成したところです。
また、労務単価等の上昇など、変動する経済環境への対応や、保育所建設事業助成などの待機児童解消緊急対策、臨時福祉給付金や子育て世帯臨時特例給付金など、緊急性が高く重要な課題に対して、適宜予算の補正を行ったところです。
予算の執行にあたっては、待機児童解消対策をはじめとする子育て支援、高齢者や障害者が安心して暮らせるまちづくり、災害に強い逃げないですむまちづくり、新宿駅周辺などの都市基盤整備、歌舞伎町のまちづくりや新宿クリエイターズ・フェスタによる新宿の魅力発信と賑わい創出など、第二次実行計画事業をはじめ、予定された諸事業の着実な推進を図ることができたものと考えています。
26年度決算では、臨時福祉給付金や生活保護費などの扶助費が、前年度と比較して24億円の増、また、区債の満期一括償還等により公債費が6億円の増となり、義務的経費全体では30億円、4.3%の増となりましたが、企業収益や雇用情勢の改善により、特別区民税や特別区交付金などの一般財源が増となったことから、実質単年度収支は、前年度に引き続き黒字となりました。
しかしながら、経常収支比率は、依然として適正水準を超える83.9%であり、財政構造が硬直化していることを示しています。また、基金残高は、リーマンショック以降の減少に歯止めがかかったものの、20年度末の608億円から43%減の349億円となっています。
こうした中、職員一人ひとりが、これまで以上にコスト意識を高め、徹底した経費削減と施策の重点化を図るなど、さらなる行財政改革に取り組むことで、将来にわたり安定した財政基盤を確立してまいります。
今後の財政見通しについては、消費税率10%への再引上げなど、社会保障・税一体改革の状況や、直近の景気動向等の情報をもとに、28年度の予算編成、第三次実行計画を策定する中で、計画期間中の財政収支見通しを明らかにしてまいります。
次に、区民生活の実態をどのように把握しているかについてです。
8月の政府月例経済報告では、「景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とする一方で、「海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクや金融資本市場の変動に留意する必要がある。」と指摘しており、我が国の経済の先行きは、依然として不透明な状況です。
また、生鮮食品を除く食料の消費者物価指数は、上昇傾向が続いており、区民生活への影響も懸念されることから、今後の動向を注視していく必要があります。
次に、区民のなかの格差と貧困についてです。
新宿区の生活保護の状況をみると、受給世帯数は依然として増加傾向が続いています。区では、生活保護受給者の自立に向けた支援をはじめ、今年度からは生活困窮者自立支援法施行に伴い、福祉部に生活支援担当課を置き、経済的に困っている方からの相談に対応する「生活支援相談窓口」を開設して、自立相談支援事業、住居確保給付金の支給及び就労準備支援事業等の各種支援事業を実施しています。今後も、生活保護受給者や生活困窮者の自立に向けた支援を総合的に実施することにより、格差と貧困の解消に取り組んでまいります。
次に、若い世代の雇用についてです。
区は、公益財団法人新宿区勤労者・仕事支援センター内に若年者就労支援室「あんだんて」を設置し、若者の就労相談、就労支援を実施しています。平成27年7月からは「若者ワンステップ応援事業」を同センターに委託して若者の就労支援に取り組むとともに、同センター内に「ここ・からジョブ新宿」を開設し若者を含む全ての区民を対象とした無料職業紹介事業を開始しました。今後も、若者が自立し、安定した生活を送ることができるよう就労支援に取り組んでまいります。区といたしましては、今後の社会保障・税一体改革や景気動向を注視しながら、区民に最も身近な基礎自治体として「暮らしやすさ1番の新宿」に向けた様々な施策に取り組み、区民生活の向上に繋げてまいります。
次に、平成28年度予算編成にかかる依命通達と、区民生活の支援についてです。
依命通達における「社会経済情勢の変動」と「区民生活に影響を与える課題」とは、急速に進む少子高齢化や人口減少社会の到来に伴う、医療・介護や子育て等の課題、また、急激な景気の変動等による雇用・所得環境や地域経済への影響などについて述べたものです。こうした社会経済情勢の変動等による、区民生活への様々な影響に対し、区は最も身近な基礎自治体として的確に対応することが必要です。
このため、待機児童解消対策など安心できる子育て支援環境の整備、高齢者総合相談センターを中心とした地域包括ケアシステムの構築、生活保護受給者の自立支援や生活困窮者自立支援法施行に伴う支援事業などによるセーフティネットの整備充実、障害者、高齢者、若年非就業者等に対する総合的な就労支援など、区民生活を支える施策に総合的に取組んでいきます。
次に、後期高齢者医療保険料についてのお尋ねです。
東京都後期高齢者医療広域連合では、次期保険料率に関する検討案を作成、公表していますが、今後も後期高齢者負担率や調整交付金算定に用いる所得係数等が国から示されていく中で、順次見直しを行う予定となっています。
この検討案では、従来から実施している保険料軽減のための東京都広域連合独自の特別対策については継続する前提となっておりますが、財政安定化基金の活用については考慮されていません。財政安定化基金の活用は、保険料軽減に直接的な効果があることから、東京都広域連合に対し、国や都と積極的に協議をするよう要望してまいります。(雨宮議員) 次に、介護保険についてです。
第一に、利用者負担増への対応についてです。
この8月から、「一定所得以上の利用者2割負担」「資産要件導入により一定預貯金超過者の補足給付打ち切り」「多床室型特別養護老人ホームの室料徴収」が開始されました。私ども区議団は、8月26日、区長に「介護保険制度の利用者負担増加についての申し入れ書」を提出しました。実際に請求書が届くのは今日あたりからですから負担増を実感するのはこれからです。
まず、「2割負担」についてです。個人で「合計所得160万円以上」の方は利用者負担が2割になりますが、2人以上の世帯で346万円未満の場合は負担が1割になることの説明や「高額介護サービス費」の申請手続きを促すべきと第2回定例会で提案しましたが、どのように対応されているかお答えください。また、高額サービス費の上限も上がりましたが、重度の方が限度いっぱい利用すれば限度額以下で済みます。今は一旦全額を払い、後日超過分を還付する方式ですが、国民健康保険のように毎月の支払いが高額サービス費の限度内にできる制度にすれば利用者も助かります。国に改正を求めるべきと考えますがご所見を伺います。
次に、施設の居住費と食事代の補足給付についてです。補足給付の基準は利用者本人の所得で決められていましたが、資産要件と、別居している配偶者の所得要件も加わりました。区は5月に「介護保険負担限度額認定の更新申請のお知らせ」を1,636人に送付しました。8月末現在、申請した方が1,382人、うち引き続き補足給付を承認された方が1,264人、非承認つまり対象から外れる方が97人とのことです。9月に入りましたが、辞退を表明している方を除く未申請者162人には、個別に連絡を取り漏れなく手続きをするよう促すことは区の責任だと思いますが、いかがですか。
対象から外されるとどの程度負担が増えるか、特養や老健にお聞きしたところ、多床室は月額で4~5万円程度、ユニット型は6万3千円といいます。明日あたり一気に増えた請求書を受け取った方は驚き怒ることでしょう。私どもは8月の緊急申し入れで、区独自に増加分の補填や激変緩和措置を講じることも要望しましたが、お隣の千代田区は、利用料2割負担になる所得160万円から192万円までの方をボーダーライン層とし、今年度1割、来年度0.5割相当を助成し、補足給付の対象外となった高齢者にも今年度全額、来年度半額の助成をする経過措置事業を実施するそうです。担当者は「国が一律で負担増を進めたが、160万円以上の所得というけれども160万円の価値は地域によって異なるという考えで、独自にボーダーラインを設定し激変緩和を行った。補足給付に新たな要件が加わったが、世帯によっては大きな負担になる。サービスを受けるべき人の利用を抑制してはいけないという考え方です。今後利用抑制などが起こっていないか調査しなければならない」と語っています。地域の実情に即し、区民に寄り添った機敏な対応と感心しました。
国の方針に唯々諾々と従うだけでなく、千代田区のように独自助成を行うべきと考えますがいかがでしょうか。また、負担が増えたためサービス量を減らした人がいないか、施設利用を断念する人がいないか等、実態を把握し議会にも報告すべきと考えます。辞退者を除く未申請者には個別の申請勧奨を丁寧に、続けることも必要です。これらについて区長のご所見を伺います。
第二に、「介護予防・日常生活支援総合事業」、いわゆる新総合事業についてです。
1つ目はサービスの質・量の維持です。私どもは、先行実施している荒川区・品川区・練馬区に聞き取り調査しました。3区とも、訪問介護サービスは、現行どおりの訪問介護と、身体介護抜き・家事援助だけの緩和基準による訪問型サービスAを採用していることが共通しています。品川区は従来型のサービスの報酬を区独自に引き下げて訪問型サービスAに分類し、荒川区は訪問型サービスAにリハビリを追加しています。品川区は、地域包括が作成した現行プランにそって、今まで家事援助だけだった方は自動的に身体抜きの訪問型サービスAに移行させています。新宿区では現在提供しているサービスの質と量を、本人・家族の理解と同意なしに切り下げることがあってはなりませんし、特に身体介護が必要な方からそのサービスを取り上げることは許されないと思いますが、いかがですか。
2つ目はボランティア活用です。区は、新たにサービスの担い手としてボランティアを予定していますが、先行する3区ともボランティアはまだ活用していません。練馬区の担当は、現状では集められない、3年間かけて育成していくと言っています。区は来年4月にどの程度のボランティアを確保し、どのようなサービスを担っていただこうとしているのでしょうか。少なくとも、介護保険内のサービスは専門事業者が提供し、保険外の区独自サービスに限定すべきと考えますが、ご所見をうかがいます。
3つ目は報酬です。介護事業者の犠牲のうえに新総合事業を実施するようなことになれば、今年も報酬が下がり経営が厳しくなっている事業者に追い打ちをかけることになり、ひいては働くヘルパーの処遇が悪化し、人材不足がさらに深刻化します。区は、訪問型サービスAの報酬は国基準未満といっていますが、未満といってもピンキリです。練馬区は国基準にかなり近い報酬ですが、品川区は国基準よりも下げたうえに、訪問型サービスAは身体介護がない分としてさらに20%ダウンです。新宿区は、国基準を維持し、最低でも国基準の9割以上の報酬を設定すべきと考えますが、いかがですか。
介護報酬に関わって、訪問介護事業者から、区が独自事業で実施している回復支援家事援助サービスは報酬があまりに低くて、赤字で事業者泣かせだと訴えられました。回復支援家事援助サービスも認知症高齢者の介護者リフレッシュ等支援事業も、利用者に歓迎されており事業を継続して実施するためにも、報酬を引き上げることが必要だと考えますが、いかがですか。
最後に移行時期です。新総合事業を区は来年4月から開始する予定です。厚生労働省が示している新総合事業の構成図を見ても多岐にわたる分類で、とても複雑な制度になっており、どこの自治体でも頭を悩ませていると聞いています。職員の負担、事業者との合意形成、何よりも利用者と家族の理解を得ることを考えると、区が予定している11月に具体案を示して来年4月実施はかなり厳しい日程ではないでしょうか。品川区の担当者は約1年かけて何度も事業者説明をしたと言っていました。再来年4月まで猶予があるのですから、拙速にスタートして混乱が生じることは避けるべきだと考えますが、区長の認識をうかがいます。(吉住健一区長) 介護保険についてのお尋ねです。
はじめに、利用者負担増への対応についてです。
利用料の負担割合については、一定所得以上の方でも利用料が1割になる場合があることの説明を、区広報、ホームページ、介護保険べんり帳等で周知しております。また、高額介護サービス費支給に該当する方に対しては、全ての方に申請のお知らせを個別発送しております。
次に、高額介護サービス費の仕組みの改正を国に求めることについてです。
医療費の場合、長期療養や大きな病気をして医療を受けると、突発的に多額の出費となる可能性があります。しかし、介護保険サービスの場合は、サービス提供の前月にケアプランにより利用料が示され、サービス提供の翌月に支払うため、計画的に支払いをすることができることから、改正を国に求めることは考えていません。
次に、施設の居住費と食事代の補足給付についてです。
今年度は、5月に対象者全員へ「更新申請のお知らせ」を発送しました。特別養護老人ホーム入所者については各施設長に更新手続きの支援を文書で依頼しました。また、居宅介護支援事業者や高齢者総合相談センターへも、同様の協力を依頼しました。その後、未申請の方には、再勧奨のお知らせを発送し、申請漏れがないよう重ねて周知しております。さらに8月には、特別養護老人ホームに対して、申請の必要性の再確認と手続きの支援を依頼するなど、丁寧な対応を心がけてきました。
次に、負担増に対する区独自の助成についてです。
今回の改正における負担増は、介護保険制度の持続性や応能負担の理念に基づくものと考えており、区として独自の助成を行うことは考えておりません。
次に負担増の影響についての実態把握と議会への報告についてです。
サービス利用の実態を把握するため、日々、窓口業務等で区民の声を伺うとともに、ケアプラン点検等の際のケアマネジャー、高齢者総合相談センター職員などとの情報交換、情報共有を図ることに努めています。また、平成28年度に実施する「新宿区高齢者の保健と福祉に関する調査」において、介護保険のサービスに関する調査を行う予定です。この調査結果については、議会へ報告いたします。
次に、未申請者への個別の申請勧奨の継続についてです。
区では、これまで複数回にわたり勧奨を行ってまいりました。特に更新の必要性の高い特別養護老人ホーム入所者については、本人や家族及び施設に各2回お知らせしており、必要な方には十分に周知されたものと考えております。現在、まだ申請のない方の中には、要件に該当しない方、サービス利用の無い方や補足給付の対象とならないサービス利用者も多く含まれているため、個別通知ではなく、ホームページやあらゆる機会をとらえパンフレットを配布するなど、今後も制度の周知に努めてまいります。
次に、「介護予防・日常生活支援総合事業」、いわゆる新総合事業についてのお尋ねです。
はじめに、新総合事業のサービスの質と量の維持についてです。新総合事業におけるサービスの提供については、これまで通り、ケアマネジャーが、本人・家族の理解や同意を得た上で、本人に必要な身体介護や生活援助などのサービスを適切にマネジメントすることを基本としています。したがって、身体介護が必要な方からサービスを取り上げることはありません。
次に、ボランティアの活用についてのお尋ねです。
新総合事業は、既存の介護サービス事業者だけでなく、民間企業や住民ボランティア等の多様な担い手による多様なサービスを提供することで、要支援者等への効果的かつ効率的な支援を目指すものです。住民ボランティアが担うサービスとしては、掃除や買い物などの簡易な生活支援、介護予防を目的とした通いの場など、専門資格がなくても対応可能なものを想定しています。
なお、住民ボランティアがサービスを安定的かつ継続的に提供するためには、一定の準備期間が必要です。今後、新宿区社会福祉協議会と連携しながら、ボランティアの育成や活動支援等を行い、生活支援の体制整備を進めてまいります。
次に、報酬についてのお尋ねです。
新総合事業におけるサービス単価については、現行の介護報酬の国基準を参考にしながら、既存の介護サービス事業者からの意見も踏まえ、提供するサービス内容に応じた適切な単価を設定して参ります。
区独自の介護保険外サービスである回復支援家事援助サービスと、認知症高齢者の介護者リフレッシュ等支援事業については、訪問介護事業者との委託契約により実施しています。委託単価は、介護報酬に準拠して適正に設定しており、引き上げの必要はないと考えています。
次に、移行時期についてのお尋ねです。
新総合事業の開始時期については、平成27年3月策定の高齢者保健福祉計画・第6期介護保険事業計画でお示ししているとおり、来年4月を予定しています。区では、今後、区広報やホームページ、事業者向け説明会、区民への通知やパンフレット等により、区民の方や事業者にご理解とご協力をいただけるよう、丁寧な周知、説明に努めるとともに、来年4月からの新総合事業の開始に向けて、着実に準備を進めてまいります。(雨宮議員) 次に、福祉・医療・介護の人材確保について質問します
介護の現場では、介護人材の不足が大きな問題となっています。厚生労働省が2025年の介護人材にかかる需給推計で、37万7千人不足すると発表し、介護現場での人材確保は喫緊の課題となっています。障害の一つが高すぎる学費です。都内の私立介護福祉系専門学校の初年度納入金は、2010年度の統計で平均102万3千円。理学、作業療法士の専門学校は、平均175万4千円です。新宿区内のある福祉系専門学校の介護福祉学科は、初年度納入金が117万1500円。在学2年間で219万3千円です。また、都内のある作業療法士の専門学校では在学3年間で515万円もかかります。これに対応する制度として介護福祉士等修学金があります。各都道府県の社会福祉協議会が窓口となって実施されている厚生労働省の施策で、大学・短期大学・専門学校などの介護福祉士・社会福祉士の養成施設に入学する人が対象で、卒業後には返還する事となっていますが、都道府県の区域内で介護の仕事に一定期間連続して従事すれば返還が全額免除される制度です。
東京都社会福祉協議会は、国の修学資金の他に、保育士の養成と確保を目的とした「保育士修学資金貸与事業」を実施し、東京都は独自の事業として看護師の養成と確保を目的とした「看護師等修学資金貸与事業」を実施しています。保育士修学資金は、月額5万円以内、総額120万円を限度とし、その他に入学準備金・就職準備金各20万円以内をそれぞれ貸し付け、都内の保育所等で引き続き5年間保育士業務に従事すれば返還が免除される事業です。看護師等修学資金は、月額2万1千円~8万3千円を貸し付け、卒業・免許取得後直ちに指定施設で引き続き5年間看護業務に従事した場合は、書類提出により返還金が免除になる事業です。
地方自治体が、経済的理由で修学困難な方に対して、学費を貸し付けることで資格の取得を援助し、その資格を活かして地域内の福祉施設・病院等で一定期間従事する条件で返済を免除することは、家計の負担軽減と福祉・医療現場の人材確保との両面から有効な施策です。以下、具体的に質問します。
第1に、現在東京都が行っている修学資金貸付制度の周知についてです。
新宿区では、東京都社会福祉協議会がおこなっている修学資金を紹介していますが、周知が充分であるとは言えません。問い合わせがあれば案内している程度です。国と都の修学資金の実績は2014年度、介護福祉士133件2億2107万円、社会福祉士141件1億6917万円、保育士28件5103万円、看護師2038件7億1329万円となっています。この制度について、新宿区や新宿区社会福祉協議会のホームページでは紹介されておらず、リンクも張られていません。こうした制度について生活福祉資金同様、区や区社協のホームページで紹介し、福祉部などの各課の窓口にポスターの掲示、チラシの配布などで周知すべきと考えますがいかがでしょうか。
第2に、修学資金制度の拡充についてです。
板橋区では1991年から、東京都の修学資金制度とは別に、社会福祉士、介護福祉士、作業療法士、理学療法士、視能訓練士、歯科衛生士をめざす方に、免許取得のための養成施設等に修学するための資金や、就業に必要な資金を無利子で貸し付けを行っています。入学金などの入学支度金20万円、授業料などの修学金月額6万円、就業に必要な転宅費用などの就業支度金30万円を貸し付け、区内の医療施設等で5年以上介護業務等に従事すると返済が免除されます。実績は、2012年度19人1248万円、2013年度29人1672万円、2014年度22人1428万円です。国、都の制度より職種や金額を拡大しているのが特徴です。
新宿区でも、板橋区のように、作業療法士、理学療法士、視能訓練士、歯科衛生士など国や都制度の他にも対象を広げ、修学資金貸付制度の創設をすべきと考えますがいかがでしょうか。
第3に、介護人材の確保についてです。
過去最大2270億円の介護報酬引き下げが強行され様々な影響がでています。人材不足のため20床あるショートステイの半数を閉鎖している施設などもあり、介護報酬の引き下げが区民サービスを後退させています。私どもは今定例会に、介護施設の人材確保や定着を目的とする「新宿区介護サービス事業者に対する人材確保・定着・育成支援補助金の交付に関する条例(案)」を提案しました。そこで区長に伺います。現在の介護人材の処遇と介護職員の不足についての認識と区としての対応策をお聞かせください。
新宿区には、かつて介護ヘルパーを養成する講座がありましたが現在はありません。民間の講座は20万円もかかり、共産党都議団が行った都内全特別養護老人ホーム対象のアンケートでは、「介護職員初任者研修制度」を自治体が支援してほしいとの要望が寄せられています。そこで伺います。「介護職員初任者研修制度」または受講料の助成制度を立ち上げ、介護人材の育成を区が積極的に行うべきと考えますがご所見を伺います。(吉住健一区長) 福祉・医療・介護の人材確保についてのお尋ねです。
はじめに、都の修学資金貸付制度の周知についてです。
この貸付制度は、貸付けを希望する方が養成施設を通して申込手続を行うことになっているため、都社会福祉協議会では、各養成施設等に対しポスターの掲示やチラシの配布を依頼し、周知していますが、区としても、区及び新宿区社会福祉協議会のホームページに都社会福祉協議会のホームページのリンクを貼るなど、制度の周知に努めていきます。
次に、区独自の修学資金貸付制度創設についてです。
区としては、福祉・介護等の人材育成や人材確保にあたり、東京都が実施する修学資金貸付制度の対象職種以外の資格取得にまで拡大して、新たな修学資金貸付制度を創設することは考えておりませんが、今後は、各職種における雇用状況や都及び他区の動向を注視してまいります。
次に、介護人材の確保についてのお尋ねです。
現在の区内介護サービス事業所における介護人材の処遇については、今年度より介護報酬処遇改善加算が拡充され、区内の地域密着型サービス事業所の86%が届出を行っており、おおむね改善されるものと認識しています。
区では、今後も事業者が作成した介護職員処遇改善計画が、実際の給与支払いに適切に反映されているかを実地指導の際に確認し、介護人材の処遇改善に努めていきます。
また、介護職員の不足については、介護サービス事業者協議会等を通じて現場の声を伺っており、各事業所の努力により改善されているものの、厳しい状況にあると認識しています。
そのため、区とハローワーク新宿との連携により、就職希望者が実際に職場を見学した後に面接に臨む「ツアー面接会」を実施し、事業者の求人需要に応えていきます。また、今後は区内大学等と事業者の交流を支援することにより、介護分野へ魅力を感じる学生を増やし、就職へと結びつけていきます。このような取組みを通じ、介護人材の確保に努めてまいります。
次に、「介護職員初任者研修制度」または受講料の助成制度を立ち上げ、介護人材の育成を区が積極的に行うべきとのお尋ねです。
介護職員初任者研修については、東京都が東京都社会福祉協議会への委託事業として、学生や主婦、離職者等を対象に無料の研修を開講しています。区としては、介護職員初任者研修制度または受講料の助成制度を立ち上げる考えはありませんが、東京都に対し、介護職員を対象とした資格取得に係る費用助成を実施するよう引き続き働きかけていきます。
また、介護人材の育成については、現在区が行っている介護福祉士の資格取得助成事業の支給条件である新宿区内での就労期間の要件を緩和する等、事業の拡充を検討してまいります。(雨宮議員) 次に、防災計画の充実について質問いたします。
第1に、区内小中学校に生活用水の確保のための防災井戸を設置することについてです。
防災計画では、区は避難場所において雨水貯留槽、学校のプール、非常災害用井戸等によって生活用水を確保するとしています。また、区民・事業者は家庭・事業所等において上水機能に支障が発生している場合には、汲み置き、河川水、非常災害用井戸等によって水を確保するとしています。
この方針に基づいて、現在区では深井戸を持つ区内5事業者と「災害時における生活用水確保の協定」や「災害時における応急給水等の確保の協定」を結び、6カ所の深井戸を確保しています。また、災害時用協定浅井戸は昨年8月現在で101カ所あり、その大半が個人宅にあります。しかしこれには地域差があり、特別出張所管内別では落二21カ所、四谷18カ所の一方で、角筈は2カ所、若松町は3カ所となっています。
協定を結ぶ6カ所の深井戸については年1回、区が点検し必要があれば改修することになっていますが、浅井戸は所有者から申し出がなければ区は改修しません。そして区は今後浅井戸を増やす計画はありません。浅井戸が地域差もあり大半が個人宅にある現状で、防災計画にある避難所などでの生活用水の確保についての役割を果たせるのでしょうか。現状と課題についてお答えください。
私は先日、今年度から国庫補助を活用し小中学校全校へ防災井戸の設置事業をはじめた江戸川区へ視察に行ってきました。区立船堀小学校を見せていただきましたが、校庭の隅に防災井戸があり、普段は花などの水やりにも使われているそうです。震災時の避難所になる小中学校では、飲料水はもちろん生活用水の確保も欠かせないものになっています。生活用水のさらなる充実をはかるために全小中学校に防災井戸を設置すべきと思いますが、区長の見解を求めます。
第2に、避難所について伺います。
1点目は、一次・二次避難所のバリアフリー化を進めることについてです。
わが党のバリアフリー化を求める要望に対し、区は各施設の中長期修繕計画よる改修にあわせて進めているとしています。避難所の現状ですが、学校にエレベーターが設置されているところ、体育館も1階にあるところ2階にあるところなどさまざまです。そもそも区の中長期修繕計画には防災的な観点が入っているのでしょうか。防災計画には残念ながらバリアフリーの計画についてはふれられていません。避難所のバリアフリー化は震災によるけが人や高齢者・障害者のみなさんのことを考えると喫緊の課題だと思いますが、区長はどのようにお考えですか。お答えください。
2点目は、障害者のみなさんの視点をどのように活かすかについてです。
これまでも女性の視点を生かした取り組みなど改善が図られてきました。しかし、障害者のみなさんは当事者、ご家族も含め発災時どうすればいいのか、一次避難所で大丈夫だろうか、など大きな不安を持っています。
すでに新宿区障害者団体連絡協議会からは「区長へのお願い」のなかで二次避難所・福祉避難所のあり方について要望が出されています。「災害時における応急活動に関する協定書」が新宿区と障害者施設との間で締結されましたが、障害者団体からは実際の災害時に十分機能するのか、検討すべき課題が残されていると指摘されています。例えば、具体的な搬送や誘導方法、地域の自主防災組織との協力関係の確認、震災の発生時間や一次避難所の立地によっては区職員の到着を待たず二次避難所を開設することなど不明瞭なままだと指摘されています。そして、二次避難所に指定された障害者施設も地域防災ネットワークに含め、区民防災組織と連携を強化し、障害者の避難のあり方を研究し、備蓄品の確保、二次避難所への移行判断を含めた避難訓練の実施などの対策の強化を要望されています。そこで5点伺います。
第1に、防災会議に障害者団体の代表も加え、意見が反映されるようにしてはいかがでしょうか。またヘルプカードなど区民への啓発も強化すべきです。
第2に、二次避難所・福祉避難所のあり方については早急に検討し、マニュアルを作成してはいかがでしょうか。
第3に、そのためにも避難所訓練を具体化する必要があります。先月8日~9日、障害者福祉センターの指定管理者と利用者が宿泊体験も取り入れた避難所としての訓練を行いました。指定管理者に伺ったところ、「今回の取り組みから、自宅にとどまっている要援護者への支援や支援者の確保など、多くの課題が見つかった」そうです。区は今回の取り組みの教訓を事業者や参加者から伺い、今後の防災計画に生かすとともに、今後区として福祉避難所訓練をすべきと思いますがいかがでしょうか。
第4に、昨年9月末現在、二次避難所は62カ所、特別出張所管内別では榎町10カ所、戸塚9カ所の一方、角筈3カ所、大久保4カ所とアンバランスになっていますが、この状況について区はどのように認識し対応されているのでしょうか。二次避難所・福祉避難所に指定する福祉施設を、公設、民設にかかわらず増やし、施設を運営する事業者と協定を結んではいかがでしょうか。
第5に、「要配慮者防災行動マニュアル」や避難場所地図に二次避難所・福祉避難所が明記されていません。記載をしてはいかがでしょうか。
以上、答弁願います。(吉住健一区長) 防災計画の充実についてのお尋ねです。
初めに、避難所である区立小中学校に生活用水確保のため、防災井戸を設置することについてです。
区では地域における生活用水や消防水利の確保を目的として、防火水槽の整備に加え、民間の浅井戸を災害時に使用できるよう協定を結んでおります。設備の老朽化もあるため、適切な維持管理を行い、災害時に確実に活用できるように努めているところです。
避難所における洗濯やトイレ用などの生活用水については、学校のプールや雨水貯留槽等で確保しております。また、区立小中学校に飲料水用の受水槽を整備するとともに、平成25年度から応急給水用スタンドパイプの配置を行い、飲料水確保の充実を図っています。万が一生活用水が不足した場合は、こうした飲料水や地域の浅井戸を使用し柔軟に対応するなど、区内の災害用水利を最大限有効活用してまいります。このため、避難所へ防災井戸を新たに設置する考えは、現在のところございません。
次に、避難所についてのお尋ねです。
区有施設の耐震性を確保し、継続的な区民サービスを提供することは、発災時の事業継続の点からも大変重要です。中長期修繕計画では「予防保全」の考え方にたち、経費の削減・平準化と施設の長寿命化を図っています。
この計画の中では、防災的な観点として、一次避難所である小中学校の体育館照明や、防災の拠点となる特別出張所に備えた自家用発電機設備についても計画的に更新していくこととしています。避難所のバリアフリー化については、中長期修繕計画による大規模な改修の機会をとらえ、検討してまいります。
一方で、高齢の方や障がいのある方などの要配慮者が、安全に避難生活をするためには、避難所運営上の工夫により対応していくことが重要であると考えています。
例えば、1階の段差が少ない部屋を要配慮者の生活スペースにする、災害用トイレは、要配慮者が屋外に行かなくても済むように別に用意するなど、各避難所運営管理協議会において検討を重ね、避難所管理運営マニュアルや毎年の避難所開設訓練に反映させています。
今後も、各施設の状況を踏まえた適切な避難所運営ができるよう、地域の皆さんと協力しながら取り組んでまいります。
次に、障害者のみなさんの視点をどのように活かすかについてです。
まず、防災会議に障害者団体の代表者を加え、意見を反映することについてです。
防災会議委員は、新宿区防災会議条例に基づき指定されており、障害者団体の代表者は委員にはなっていませんが、これまでも障害者団体との懇談会など様々な機会を捉え、災害時の対応等を含めて区政の様々な課題について意見交換を行ってきました。
今後も障害者団体との懇談会などの様々な機会を通してご意見を伺い、障害者のみなさんの視点を災害対策に反映できるよう努めてまいります。
次に、ヘルプカードなど区民への啓発も強化することについてです。
障害者が災害時等の困った際に、周囲から支援や配慮を受けやすくする、ヘルプカードを有効に活用するためにも区民への啓発は重要なことであると認識しています。
区ではヘルプカードに関するチラシやポスター、広報による周知の他、障害者週間に合わせて実施している「障害者福祉施設共同バザール」など、区のイベント等も通じて、区民への周知、啓発活動を今後も一層進めていきます。
次に、福祉避難所のあり方を早急に検討し、マニュアルを作成することについてです。
区では、これまで福祉避難所のあり方については新宿区防災会議で検討いただき、新宿区地域防災計画に明記しているところです。
福祉避難所の開設までのマニュアルについては、新宿区災対福祉部で策定した「災害時応急活動マニュアル」に盛り込み、避難所開設訓練の実施結果を踏まえて検証をしています。
また、福祉施設などを管理する指定管理者の協力を得て、各施設において円滑な避難所運営ができるよう「災害対応マニュアル」を策定しています。
今後、さらに福祉避難所の運営等に必要な事項を精査し、各マニュアルなどの改訂を進めてまいります。
次に、障害者福祉センターで行われた指定管理者と利用者の訓練の教訓を今後の防災計画に生かすとともに、区として福祉避難所訓練を実施することについてです。
今回の訓練をとおして明らかになった、避難者への情報提供やボランティア、介助者等の確保・受入体制整備などの課題については、今後実施する福祉避難所開設訓練にも活用し、福祉施設の指定管理者などの協力も得ながら、各施設の災害対応マニュアルや地域防災計画等に反映できるよう努めていきます。
次に、福祉避難所の配置が地域でアンバランスになっている状況の認識と対応についてです。
ご指摘のとおり、福祉避難所については、高齢者施設、障害者施設、児童館、幼稚園などを指定しているため、地域ごとの配置数は異なっています。
今後は、福祉避難所の地域バランスも考慮し、区内民間福祉施設を福祉避難所として指定できるよう、「災害時における二次避難所の開設及び運営に関する協定」の締結を進め、スペースの確保や受入れ体制づくり、備蓄など計画的に進めていきます。
次に、「要配慮者防災行動マニュアル」や避難場所地図に福祉避難所を記載するべきとのお尋ねです。
福祉避難所は、支援や配慮が必要な高齢者などのために、受入れ態勢が整った施設から順次、開設するものであり、開設されるまでは原則一次避難所で待機していただきます。そのため、福祉避難所の位置等を積極的に周知することについては、一般の方が福祉避難所に多数避難するとの心配の声も多く、本来の福祉避難所の役割を果たせなくなる恐れがあることから、現段階では、避難場所地図に福祉避難所を掲載することは考えていません。
なお、「要配慮者防災行動マニュアル」については、障害者や高齢者などの要配慮者の方向けのものであることから、次回改訂の際に、福祉避難所をわかりやすく掲載していきます。(雨宮議員) 次に、新国立競技場建設計画の見直しと都営霞ヶ丘アパートについて質問します。
質問の第1は、新国立競技場建設計画の見直しについてです。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の総工費2520億円は「高過ぎる」との世論の高まりを受け、安倍政権は白紙撤回に追い込まれました。その後政府は、総工費上限1550億円、観客席6万8000席の新たな整備計画を決定し、20年4月末までの完成を目指すとしています。もともと白紙撤回された建設計画は国の計画ありきで進められ、新宿区が直接関与できたのは「みどりの条例」に基づく緑化計画書の提出・承認だけ。その緑化計画も白紙になりました。
計画は白紙見直しになったのですから、今の段階で区長として新たな計画の策定に当たっては新宿区の要望を国とJSCに提出すべきと考えます。まず、この点についての区長の見解をうかがいます。要望の内容としては、昨年IOCが打ち出した五輪改革提言「アジェンダ2020」に沿って運営経費を削減するなど簡素な大会にすること、周辺の神宮外苑の環境や景観と調和した施設にすること、伐採・除去された周辺の樹木・植栽を元々あった程度まで回復することを盛り込むべきと考えますが、いかがですか。
質問の第2は、都営霞ヶ丘アパートの取り壊し計画も白紙撤回することです。
都営霞ヶ丘アパートの住民は、新国立競技場建設を理由に取り壊しの通告を受け、すでに転居した人もいますが、現在も136世帯、218人が居住しています。残っている方は高齢者が多く、転居による精神的・肉体的負担で状態が悪化するような要介護者も多数含まれています。こうした住民方々の有志が、内閣官房、遠藤五輪担当大臣、下村文部科学省大臣等に宛てて要望書を提出するなど、都営アパート取壊し計画見直しを求めています。オリンピック憲章3は「その目的は、人間の尊厳に重きを置く平和な社会の確立を奨励すること」と定めていますが、建替え・転居は高齢者の生命や尊厳を奪う危険があります。霞ヶ丘アパート存続を東京都に申し入れるよう求めますが、いかがでしょうか。
質問の第3は、転居する人達への支援についてです。
1つ目は、家財等の整理・廃棄の支援です。1人暮らしの方は単身者用の都営住宅に転居しますが、転居先は狭くて収納スペースもあまりありません。持って行く物を分別したり、梱包したり、廃棄することは高齢者には大変な負担で、命にもかかわります。こうした作業を手伝う人材を都が派遣して本人の負担を軽減するよう要望し、都がやらないなら新宿区が支援すべきと考えますが、いかがですか。
2つ目は、介護サービスの切れ目のない提供と移転先への情報提供です。残っている方の多くは渋谷区の都営住宅に転居予定で、要介護・要支援の方が41名います。特に要支援者のケアプランは自治体の地域包括支援センターが担当しますが、現行サービスが途切れることなく提供されることが必要です。また地域包括ケアの観点からも、区が持っている情報を正しく引き継ぎすることも大事だと考えます。この対応策についてお答え下さい。
3つ目は、転居の時期についてです。来年1月1ヶ月間で全世帯が転居せよと言われています。1月は、脳血管障害を起こしやすいですし、インフルエンザや肺炎が流行する季節でもあります。春先の暖かい時期まで期間延長できるよう東京都に求めていただきたいと思います。また1月末までに転居しないと電気も水も止まってしまうといわれています。諸事情で1月中に移転ができない場合も、全員の転居が終わるまでは都が責任をもってライフラインを維持することも要望すべきと思いますが、いかがですか。
以上、答弁願います。(吉住健一区長)
新国立競技場建設計画の見直しと都営霞ヶ丘アパートについてのお尋ねです。
はじめに、新国立競技場建設計画の見直しについて、新宿区の要望を国と日本スポーツ振興センターに提出すべきではないかについてです。
新宿区は、メイン会場となる新国立競技場が建設される自治体として、東京オリンピック・パラリンピック開催後も、美しい景観や豊かなみどりで包まれた街並みが持続する、国際観光都市としてのまちづくりを推進しています。
これまでも、日本スポーツ振興センターに対しては、みどりの確保など周辺環境との調和について強く要望してきたところです。この度の新国立競技場建設計画見直しにあたっては、「アジェンダ2020」の提言も踏まえ、神宮外苑の風格ある都市景観と周辺環境に調和した、レガシーとしてふさわしい競技場を実現するために、今後も様々な機会を捉え、国と日本スポーツ振興センターに対して積極的に要望してまいります。
次に、霞ヶ丘アパート存続を東京都に申し入れるよう求めるべきとのお尋ねです。
都営霞ヶ丘アパートの敷地については、都市計画及び地区計画の土地利用の方針で、公園として整備することが決定しています。
このため、区として霞ヶ丘アパート存続を東京都に申し入れることは考えていませんが、霞ヶ丘アパートの居住者全員が安心して転居できるよう、引き続き東京都に要請してまいります。
次に、家財等の整理・廃棄の支援についてのお尋ねです。
都営霞ヶ丘アパート廃止に伴う、居住者の移転については、東京都が責任を持って進めるべきものと考えています。このため、区が直接支援する考えはありませんが、居住者が安心して円滑に移転できるよう、引き続き東京都に要請してまいります。
次に、介護サービスの切れ目のない提供と移転先への情報提供についてのお尋ねです。
都営霞ヶ丘アパートに居住している要支援の方については、地域を管轄する四谷高齢者総合相談センターが対応しています。
すでに転居された方に対しては、介護サービスの切れ目のない提供のために、転居先の地域包括支援センターと担当者をご案内するとともに、新たな地域包括支援センターとの間で情報共有を図っています。また、要介護の方については、希望に応じてケアマネジャーの紹介等も行っています。今後転居する予定の方についても、サービス利用が円滑に進むよう、同様に対応してまいります。
次に、都営霞ヶ丘アパートの転居の時期についてです。
区はこれまでも、都営霞ヶ丘アパートの居住者の転居について、丁寧な説明や居住者の意見を十分聞いて進めてほしいと、東京都に要請してきました。転居時期を延長することは、共用部分の光熱費など共益費の負担のあり方に課題があると東京都から聞いております。このため、区としては、転居時期の延長やライフラインの維持について要望することは考えていませんが、居住者の方にご心配やご不安な点があれば、東京都へ伝えてまいります。2015.10.13 更新